東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
<『グローバル・マーケティングの基本』の紹介>
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東:森辺さん、前回に引き続き、『グローバル・マーケティングの基本』のケースを紹介するというのをずっとやっているんですけども、ケース8で「ディストリビューターとの上手な付き合い方はどういうことですか?」と。消費財メーカーです。売上を拡大するために、ディストリビューターにいろいろと施策を提案していますが、なかなかそれをやろうという流れにはなりません。基本、任せて口を出すなというスタンスのようです。しかし、それでは現状から大きく売上を拡大させることができないと考えています。どうすれば、ディストリビューターは動いてくれるんでしょうかと。
森辺:そうですよね…。これもね、難しい問題ですよね。こういう課題って結構ありますよね。われわれのところに相談してくる課題の中でも、なぜこんなにディストリビューターにこの企業は優しいんだろう。どうなっちゃっているんだろうって、よくあるじゃないですか。
東:うんうん。
森辺:なんか夫婦関係にも似ていて、最初にこういうキャラで接しているのに、いきなり「亭主関白!」とかって言われてもね。
東:(笑)
森辺:「は?あんた何言っちゃっているの?」という話になるじゃない?
東:はいはい。
森辺:それと一緒で、最初がすごい重要で。今、何でしたっけ?黙って、分かってないんだから黙って俺らに任せろと。
東:うん。基本、任せて口を出すなという、それは日本側の企業さんがそう感じていると。
森辺:うんうん。だから、もう契約時から付き合っていて、お互いのパワーバランスがそうなっちゃっているわけですよね。ひどいとこだと、納品先というか、小売とコンタクト、B2Cだとね、させないとかね、メーカーは来なくていいとか、あと、顧客と会わせてもらえないとか。自分たちが商品を売っているのに、顧客と会えないってね、B2Bでもね。こんなのあり得ないじゃないですか。
東:はいはい。
森辺:こんなのディストリビューターじゃないですよ。だから、そういう関係性になっちゃっているというケースが多々ありますと。
東:うんうん。
森辺:それって、僕はね、ディストリビューターが悪いんじゃなくて、やっぱり日本のメーカー側の今までの何十年の接し方、ここがもうそもそも間違えちゃっていてね、だって、よくよく振り返って考えてみると、3年4年でね、駐在員の現地の担当者とか、日本側の担当者がころころ変わって、一緒にやっていたことがまたふりだしに戻ってくるわけじゃないですか。
東:はいはい。
森辺:重要なオーナー社長とのリレーションシップみたいなものも、日本側の担当役員がしっかり半年に1回、年に1回ね、会ってコミュニケーションを取ってみたいなこともなかなかやっていないというケースが多いじゃないですか。そんな中、現地のこともよく分かっていないし、うまくいっているときは、「いやー、いいですね」と。何も言わなくて、「よっしゃ、よっしゃ」と。うまくいかなくなってくると、「あの資料を出せ。この資料を出せ」みたいな感じで、Excel地獄みたいなものを送ってきてね、やっとの思いでExcel埋めて、「納品先、ここです」みたいな、「何個売れました」みたいな、そういうやつね、細かな。
東:うんうん。
森辺:なんだけど、そのExcelを送っても、ただそれを見て「ふむふむ」って言っているだけでね、何のその、いわゆる起死回生する戦略を提示してこないわけじゃないですか。それがもう何十年って積み重なっちゃっていて。そうすると、今さらいきなり「こうしますとか」って言っても、変わらせるというのは本当に大変な作業だと思うので。やっぱり最初の付き合い方が本当に重要。もう会社としてディストリビューターとは契約上はこうです、彼らとの付き合い方、いわゆる感情的な付き合い方はここのね、人たちに任せたらいいと思うんだけども、いわゆる感情が入らない、合理的な部分の付き合い方は何をKPIとして、うちはこういう管理項目でやっていくみたいな戦略と戦術みたいなところ、もちろんその前の目的があって、戦略があって、戦術があって、みたいな話なんだけど、そこの共有が国ごとにばらばらなので、良い国はうまくいくけど、悪い国はうまくいかないみたいなね。だから、基準値を決めたほうがいいですよね、本社がね。
東:はいはい。
森辺:「うちとしては、ディストリビューターとはこういうふうに付き合っていくんです。だから、こういうビジョンのもと、こういう目標を設定します。その目標を達成するための戦略はこうで、戦術はこうですよ」みたいな。「戦術については各国で考えてください。ただ、戦略まではもう本社で共通です。これに賛同してくれるディストリビューターとわれわれは付き合っていくんです」みたいな、こういう大きな方針が、本来はなければ駄目なんですよ。けど、それがほとんど皆無でしょう?日本のメーカーはね。なので、これから再構築をしていかなきゃいけないっていう、まさにそんなときなんじゃないかなというふうに思いますけどね。
東:そうすると、まず方針をやっぱりディストリビューター側に伝えて、徐々に説得をしていくみたいな感じなんですかね?
森辺:もうもう、そういうふうに馴れ合い、馴れ合いというか、そういう感覚になっちゃっているところが、やっぱりね、「今日から亭主関白にします」と言ってもね、嫁さんがそれを聞き入れてくれるのに1年2年かかるわけでしょう?
東:うん。
森辺:もしかしたら一生聞き入れてくれないかもしれないし。
東:(笑)
森辺:だから、時間かかりますよ。なので、最初が重要ですよという。
東:分かりました。今日はありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。