東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、『グローバル・マーケティングの基本』から抜粋してお伝えしているんですけれども、第2章の3で「「早期参入」にこだわる アジア新興国は先駆者メリットが発揮される市場」であるという副題があるんですが、ここについてちょっとお聞かせいただければと思います。
森辺:一般的に、欧米の企業は動きが速くて、日本企業は動きが遅いみたいなことを言われるわけですよね。これはもう世界中で結構常識みたいになっていて、アジアだとだいぶそれが定着していますと。日本企業って、何だっけ、何とかって言われているよね…。「Talk Only No Action」だっけ。
東:はいはい。
森辺:NATOだっけ。No Action Talk Onlyか。NATOとかって言われていて、いろいろ聞きにくるんだけども、結局、アクションしないよねみたいなね。それに比べて欧米の企業は、戦略がこれって決まったら、そこに適正な投資をドンと打ってどんどん進んでいくから、現地側もこの人たちとこの事業にリスクをかけるということをやりやすいと言うんだよね。日本企業は、なんかちょこちょこっとやってみて、駄目だったらガーッて撤退していくから、いや、そんなの自分たちの人生をかけられないよという心理が働くんだけども。話が逸れたけども。先駆者メリットということは、欧米の会社は、一番最初にやるということの凄まじいバリュー、価値をとてつもなく理解していて、何でもそうなんだけども、一番最初にやったものって、2番目にやったものよりも劣っていたとしてもね、仮にね。でも、その市場に与えるインパクトはめちゃめちゃデカくて、それによるメリットってとてつもなく大きいんですよ。たぶん何でもいいと思うんですけど、何だろうな、僕の例えはいまいち分かりにくいと最近言われるんだけど、例えばね、『ダイ・ハード2』は『ダイ・ハード1』を超えられないでしょ。
東:はいはい。
森辺:『ハリーポッター2』は『ハリーポッター1』を超えられないみたいな。それと一緒で、一番最初に見た衝撃、あれはすごいんですよ。映画で僕らは体感するじゃないですか。
東:はい。
森辺:これは、市場で一番最初に乗った車とか、量産されたフォードのT型だっけ、タイプT、いまだに言われるわけですよ。だから、一番最初にやるというのがすごい価値を生むということをよく分かっているのと。あと、欧米の企業って、もう1つあるのが、なぜ彼らが早く動けて、日本企業は早く動けないかということの問題なんですけど、彼らは早く動くことが最終的には早く勝つことにつながっていくということを論理的に理解をしていて。どういうことかと言うと、誰よりも早く先にやる、そうすると、誰よりも早く失敗するじゃないですか、先に。誰よりも早く先に失敗すると、誰よりも早く学ぶことになるので、結果誰よりも早く成功するという、このいわゆる仕組みを彼らは分かっているんですよね。だから、早くやるということを重要視していて。一方で、日本だと失敗するということが完全にタブーなので、いかに失敗を避けるか。となると、先にやる人の様子を見ながら石橋を叩いてみたいな話になってくるんだけども、今までの昭和~平成ぐらいまでは石橋を叩いてのやり方でよかったけども、アジアの企業がね、特に中国をはじめとしてこれだけ力をつけてきちゃうと、もう石橋を叩いていたら時代が変わっているじゃんみたいな、そういうスピード感になってきてしまっているので、なかなかかつてのやり方は通用しなくなっているという、そういうことですかね。そんなことを書いているのかな。
東:分かりました。ここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。