東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、前回から引き続き、『グローバル・マーケティングの基本』から抜粋してお送りしているんですけども。第2章の「先進グローバル消費財メーカーに学ぶアジア新興国のチャネル戦略」で、2-5という形で「導入期の戦略が違う 先進グローバル企業では導入期から広い視野で取り組む」と。具体的に言うと、近代小売+伝統小売でチャネルづくりを行うということがあるんでけれども、この導入戦略の違いというのを少し教えていただければと思うんですけども。
森辺:これはね、簡単に言うと、先進的なグローバル企業は導入期に近代小売の攻略に合わせて伝統小売の攻略をプラスするんですよね。一方で日本企業は、導入期には近代小売の攻略に集中して、成長期に入って初めて伝統小売の攻略を試みるんだけども、なかなか攻略できずに成長期に入れないと。なので、新興国に出てもう10年近く経つんだけども、いまだに導入期と同じような売上ですとか、現地の工場の稼働率が全然上がりませんみたいな企業、もしくはマーケットシェアが1%にも満ちていませんみたいな、そういう企業が多いですよというお話を書いているんだったと思います。
東:そうすると、先進グローバル企業は導入当初から両方のチャネルで導入を狙って、それは具体的にどういうメリットがあるのかとか、というのはどうなんでしょうか?
森辺:彼らは非常に全体像を見るのが得意じゃないですか。
東:はい。
森辺:最初にグランドデザインは描いているので、全体像を見たときに、この市場は消費財メーカーにとって伝統小売をやらないと儲からないなということが後進国に行けば行くほど分かるわけですよね。これは数の原理で、基本的に近代小売の何百倍という数、金額ベースで何百倍かな。具体的に言うと、ベトナムとかでもまあまあ3,000店舗ぐらいの近代小売に対して50万店の伝統小売というのが存在するわけだから。そうすると、伝統小売を攻略しないと難しいということが分かっていると。分かっているので導入期からそれを実施する。伝統小売を攻略するためには特殊なチャネルをつくらないといけないわけじゃないですか。
東:うんうん。
森辺:その特殊なチャネルをつくることに時間がかかるということも、彼らは最初にビッグピクチャーを見て理解するので、そこに着実に投資をしていくみたいなね。でも、一方で日本企業は、目の前の近代小売の攻略をコツコツコツコツやって、きっと今この目の前のことをコツコツやれば将来きっといいことがあるはずだって進んでいくので、全体像を見ていないので、目の前のことをひらすらやる。なんだけど、将来きっといいことというのは待っていなかったわけだよね。そういう状態になるというのが強いですかね。
東:分かりました。今日はここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。