森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。それでは、前回の続きで、海外展開に失敗する日本企業の3つのパターンということで、共通する失敗の法則ということでお話をしていきたいんですが。
前回ね、何が3つかというのをお話して、今日は1つ目の「モノ頼り」というところのお話をしていきたいんですが。これね、本当にB2C、B2B問わず、いずれの企業もやっぱりすべての中心がモノなんですよね。もちろん製造業ですから、モノがありきなビジネスなわけで、モノは非常に重要なんですけど。かつての状況ほどプロダクトそのものの重要性というものが、やっぱりマーケットにおいて低下しているということは事実としてあって。その要因はやっぱり中国の製造業の台頭で、彼らがより良いものをより安くつくるという中で、かつて日本が米国からその地位を奪い取ったわけですけども、それを一方で中国が日本から奪い取ってと、韓国が日本から奪い取ってという状況の中、いまだに目で見て分からない技術の差とか品質の差、機能の差みたいなところにやっぱり引っ張られてしまっている企業が少なくない。さすがにもう高品質だから大丈夫、モノが良ければすべてよしという、非常に極論ですけども、ここまで思っている企業ってそうはいないと思いますけども。でも、やっぱり戦略の節々に、結局「モノ頼り」じゃないかというような断片が多々見られると。
4P、マーケティング・ミックス、プロダクト、プライス、プレイス、プロモーションなんかに当てはめてみると、日本企業というのは、日本で実績のある商品をできればさほど変えずに売りたがるという傾向がプロダクトに関してはあって。プライスに関しては、新興国なので少しは安くするけど、日本と同じぐらいの価格でやりたいよねというのがやっぱりプライスには見え隠れしていて。なので、高いですよね、日本の製品というのは。かつて日本企業しかつくれなかった時代は、その高いということが十分受け入れられていた。また、新興国がマーケットというよりかは先進国がマーケットだったので十分受け入れられていた。ただ、今、高いものというのは、やっぱりそこにブランドという新たな、新たなというか、もう1つの価値がついてないと、ブランドがないものにお金は出さないんですね、B2BもB2Cも。それをうまく巧みにやっているのがヨーロッパ、イタリア、フランス、ドイツを中心としたヨーロッパのメーカーで。プレイスに関しては、日本で慣れ親しんだ近代小売を中心にということを書いていますけども。これ、書いていますというか、私、今、PowerPointを読んでいるんですけど。B2Cであれば近代小売がやっぱり中心になって、伝統小売になかなか置けない、伝統小売から遠ざかってしまう。B2Bであれば、やっぱり日系とか外資系みたいなところの牌の少ないところのインダストリーに、各インダストリーでも日系とか外資系の牌の少ないところにやっぱりどうしても寄ってしまう。当然ですよね、価格が高いですからね。なので、本来狙うべき、いわゆる地場の企業に対するプレイスがしっかりできていないと。プロモーションに関しても、できれば実績が出るまでプロモーション投資はあまりしたくないよというのが本音として見え隠れするので中途半端になると。結局、そうなってくると、ターゲットみたいなところっていうのは必然的に中間層には売れずにターゲットが牌の少ない富裕層になる、B2Cであればですね。B2Bであれば外資系とか日系に偏ってくるということになるわけですよね。
これ、4Pがありきで進んでしまっていて、その4Pの結果のターゲットなんですよね。これは根本的に順番が逆で、本来ならば狙うべきターゲットがあって、そこに対して4Pを組んでいく。もっと言うと、4Cを組んでいく。カスタマー側の観点でこの4つのPなりCなりを組んでいくということを考えていかないといけない。例えば、プロダクトにあたるところというのはやっぱりカスタマーバリューという、4Cだとカスタマーバリューに変えて考えていかないといけないから、顧客が求める商品って一体何なんですか?ということだし、プライスはコストに変わるので、顧客が賄える価格って一体いくらなの?ということを考えていかないといけない。そして、プレイスというのはコンビニエンスなので、顧客の利便性を考えたときに、どこに並べることが顧客にとって一番買いやすいんですか?買いやすい方法なんですか?ということを考えていかないといけないし。プロモーションに関しては、コミュニケーションというふうに捉える、4Cではですね、顧客とのコミュニケーション、顧客が選びたくなるような仕掛けを本当にしていますか?彼らにとって1ドルの価値は、われわれ日本人よりも高いんですよということをやっぱり考えていかないといけない。それがどうしても置き去りになってしまっているというのが今の日本企業の状態で。これをまさに私は「1P戦略」というふうに呼んでいるんですけども、最初のプロダクトのPにだけこだわって、残り3つのPが置き去りになってしまっている。
これをやっぱり変えていかないといけない。4Pが最適化されて初めてモノはターゲットに対して売れていくので、4Pを4C観点で考えるということはすごく重要で。それをバランスよくやらないといけないし。あと、われわれ日本人が今まで良いと定義してきたプロダクトが、必ずしも今はもう世界の良いではないですよということを考えないといけない。もしそうなのであれば、なぜ家電業界はB2C壊滅してしまったのかということの説明がつかないし、なぜ日本のB2Cの消費財も世界に出るとなかなか上位のマーケットシェアが獲れていないのかということにもつながるわけなので、日本の良いという定義を見直す必要があると。必ずしも世界の良いにはならないですよということを考えていかないといけない。なので、プロダクトに引っ張られ過ぎるというのが失敗する共通項の1つです。
ちょっとだいぶ時間押しちゃってなくなっちゃったので、次回また続きを話していきたいと思います。それではまた皆さん、次回お会いいたしましょう。