森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺でございます。森辺一樹でございます。
前回に引き続き、今回も先進グローバル企業の強さの秘密ということで、3つあると言っているのにまだ1個しか話していないような気がするので、今日は2個目のお話をしたいと思います。1個目は、前回、前々回を聞いてもらって、今日は2個目のお話ということで。
先進グローバル企業、ここで言っている先進グローバル企業、事例で出すのはP&G、ネスレ、ユニリーバなんかの消費財のメーカーの事例が多く出てくるかもしれませんが、基本的にB2BもB2Cも一緒なので、どちらもということで考えてもらったらと思うんですが。
2つ目が、市場規模を最大化するための明確なターゲティングがやっぱり先進グローバル企業は非常に強いよねと。過去にもこの番組でお話しましたけど、日本企業って「誰に売るか」よりも「誰と売るか」みたいなところを先に考えてしまって、一番重要な「誰に売るか」がいわゆるおろそかになってしまう。「誰に売るか」って、ターゲットですから、ターゲティングですから、ターゲティングがすべてなわけですよね。4Pとか4Cというのはターゲティングを軸に考えていかなきゃいけないのに、「誰と売るか」というのは4Pで言うところのいわゆるプレイスと言われるところだし、4Cで言われるところのコンビニエンスというところだし、流通とかね、どういうふうにしたら消費者が買いやすいのかとか、企業がユーザーが買いやすいのかというところが「誰と売るか」なので。「誰と売るか」なんてどうでもいいとは言わないけども、「誰に売るか」が決まってからなんですよね。
多くの日本企業は「誰に売るか」というものを何となくぼんやりさせてたまま、どれだけ強いディストリビューターと組めるかみたいなところが先行してしまうので、とにかく大手、とにかく大手と。大手のディストリビューターが必ずしも今の御社に合っているかどうかなんて、そうとは限らないわけですよね。基本的にはターゲットに、ディストリビューターを使う場合はターゲットに売れるディストリビューターが最善であって最適なわけなので、どんなに大きくてもターゲットに売れなかったら、それは最適ではないわけですよね。にもかかわらず、「誰に売るか」よりも「誰と売るか」みたいなところがやっぱりフォーカスされてしまう。
でも、先進的なグローバル企業というのは、もう絶対的に「誰に売るか」なので。消費財ビジネスの場合はアジア新興国と言ったら30億の中間層をどうやって獲るかなんですよね。消費財って、1つ数十円、数百円のものを売っているわけですから、もうビジネスモデルとして、いかにたくさんの人に、いかに速い頻度で、いかに繰り返し、永遠に使い続けてもらうかということが、もうビジネスモデルの肝なわけですよね。そう考えると、もう圧倒的に数なので、マスに売らなかったら、もうまったく意味がない。富裕層の数で言ったら、まだまだG7のほうが多いわけだから、富裕層とかを狙ってもまったく意味なくて。国境を越えてわざわざ出ていくのに、富裕層を狙って何するんですかと。消費財で富裕層って、1万円のチョコレートを売っているんだったらいいですよ。「ゴディバなんですと、自分たちは」と言うんだったらいいでしょうし、ヨーロッパのラグジュアリーブランドの「1本何万円もする香水を売っているんです」「シャンプーを売っているです」と言うんだったら、それでいいでしょうけども。高級なプレミアムなイメージを植えつけるのと、高級でプレミアムなものを売るというのはまったく別個の話なので。それってブランディングとターゲティングの違いなので、そこを一緒にしてしまって、自分たちを高い位置に置いておきたいがために、そしてまた中間層に売るということが非常に伝統小売を含めて新興国では攻略が難しい、いろんなものを変えていかないといけないので、何となく上位中間層とか富裕層ということで、ターゲットが上振れしてしまうということになって、いつまで経っても市民権を得られないというか、マスに浸透していかない。輸入品棚に売られているとか、日系の匂いのする小売にしか並んでいないとかっていうことになるわけなんですけど、一部のメーカーを除いてはですね。ユニ・チャームとか、ヤクルトとかね、ああいう、味の素とか、先進的な企業を除いてはそうなっちゃうんですけど。欧米の先進的なグローバル企業というのはもう圧倒的に中間層で、この軸が絶対ブレないというのがやっぱり強さの秘密ですよね。
消費財メーカーが中間層から逃げて何の商売するんですかという、もうさっき言ったように、いかにたくさんの人に、いかに速い頻度で、繰り返し、永遠に買い続けてもらうかということが最大の肝なので、ここで何かプレミアムとかっていう、「1P戦略」と私は言っていますけども、自分たちはハイクオリティのプレミアム商品をつくっているのでちょっと上からいきたいと、気持ちは分かるけども、それだと大きな商売にはならないですよと。中堅中小企業がやる商売としてはその戦略でいいでしょうけども、大手の消費財メーカーがやるにはなかなか厳しいのかなというふうに思います。
それでは今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。