森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。 すみません。今日も引き続き、前回のお話ですかね。私の話が長くて3回にわたってお話をしていますが、重要なことなのでね、何回もお話をしていきたいなというふうに思うんですけど、新興国市場における日本企業の採用に関するお話、そこには大きな誤解がありますよというお話の続きです。
日本企業の多くは、ローカル人材を採用したときに、すぐ辞めてしまうとか、あまり使えないとか、そういったネガティブな発言が非常に多いんだけども、実はそれは人材側が悪いのではなくて、採用する企業側が悪いんですよと。その要因というのは、優秀な人材を採用し過ぎると。その「優秀の定義は?」と聞いてみると、そこも非常にぼんやりしている、とにかく優秀であると。重要なのは優秀な人材ではなくて、自分たちがやらせようとしている業務にいかに合致した人材を採用するかだということが大変重要で。自分たちの業務に発展性とか面白みとか、そういったものがないのに、とにかく同じことでも毎日愚直にやるんだと。そんなのを理解してくれるのは日本人と韓国人ぐらいで、その常識を新興国市場に持ち込んではいけないと。
何かこれを、目の前のことをとにかく真面目に考えていれば、きっといつか報われるんだみたいな、日本でもたぶんそういう世界ってなくなってきましたよね。たぶん僕の親父の世代はね、転職なんていうのは、もう重罪に値するぐらいの勢いだったと思うので、うちの父親は本当に立派だなと思いますけど、1つの会社に新入社員で入社して定年まで働きぬいて、本当に尊敬していますけど、僕には絶対できないし、今ってまさにそんな時代じゃない。日本でもそうなのに、新興国に行ったらもっとそうなんですよね。
そんな中で、とにかく飽きさせない仕組みとか、そういったものは置いておいて、とにかくわが社を信じ、真面目に毎日コツコツやっていれば報われるんだって。それで報われてこなかった人を僕もすごく見てきているし、それを社員に押し付けても、なかなかそれは無理だよねということはものすごくよく分かるんですよね。だから、やっぱりそういうのは駄目よと。わけの分からない、目に見えない、将来そうなるかどうかも分からないけども、雰囲気と空気で信じ込ませて何とか持っていこうとするという、この昭和の時代はそれでよかったんですけども、それはそれでね、働く側もそれで楽しめたんだけども。
でも、今ってそうじゃないから、やっぱり業務に合った人材を採用する。とにかく優秀な人材を採用しようとすることこそがそもそも間違っていてね、これは日本企業側が優秀な定義をしっかりとつくるのが難しいとか、面倒くさいとか、手が回ってないとか、そういう理由でとにかく優秀とかね、とにかく優秀って意味不明ですよね。これからやらせようとしている業務ってほんのここぐらいなことなのに、なぜとにかく優秀な人材が必要なんですかという話なのでね。このやらせようとしている業務を明確にして、これをいかに飽きずにずっとやっていってくれるかですよ。飽きてしまったら、すぐそれを別の人にスイッチしていくかって、これをくり返しくり返しやっていく話なので。それがいかに3年よりも4年、4年よりも5年長く続くほうが企業にとってはいいわけですから、そこの不一致がないような採用をするということがまず1つですよね。
もう1つは、この飽きない人材を採用するということも限界があるので、それと同時に、いかにジョブローテーションであったり、いかにスキルアップの仕組みを業務そのものに入れ込んで、社員がそこに飽きてこない状態をつくり上げるかという、この両面でそれをつくっていかないといけないし。
そういったことをやらずして、とにかくロイヤリティを持ちなさい、会社にみたいな、それはやっぱりなかなか日本でもそんなことになっていないのに、新興国ではもっとそうですよね。企業というのは、心を打つ理念と適切な目的があって、明確な目標に対して綿密な戦略があって、それを高度な戦術で実行するという、こういう5段階の仕組みになっていて、その理念がやっぱり最上位概念としてあるんだけど、その理念も伝わっていない中、戦略もぼやっとしているし、なんだけども、とにかく優秀な戦術でカバーしてねみたいな、こういうのはやっぱりなかなかちょっと難しいので。ローカル人材が辞めてしまうとかっていう、ローカル人材が悪いのではなくて、組織側に問題があるというふうに僕は思うので。優秀な人材を採用しようとするのではなくて、いかに自分たちがやらせようとしている業務に合った人材を採用するかということを気に留めて採用してみてください。そうすると、今までの平均就業年数というんですかね、働く年数は格段に伸びていくと思います。
それでは今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。