森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日も前回に引き続き、慣れる生き物である人間に対して行うマーケティングについて、少し皆さんと一緒に考えていきたいなというふうに思います。
前回、人間って慣れる生き物だよねと、昔、缶コーヒーいっぱい飲んでいたのに、スタバとかタリーズができると缶コーヒーの売上は激減して、みんなスタバを飲んでいくと。昔、120円とかで飲めたものをやめて、350円ぐらいするのかな、400円ぐらいするんですかね、そういうものに切り替えていく。3倍…、3.5倍ぐらい高いわけですよね。でも、何かほかのものを犠牲にしてそっちを選んでいっているというのがあるわけですよね。もしくは、当時、大学生のときに缶コーヒーを飲んでいた人たちが所得が増えて味が分かるようになったときに3.5倍のコーヒーを飲むようになったと。コーヒーの味に慣れていって、そういうことになっていっていると。なので、人間というのは本当に慣れていくんだなと。
ものすごく人気のある芸能人も、パッとテレビに出なくなったら一瞬えーっと思うんだけど、それはそれで慣れていくという、本当に自分が予期しなかった現実が目の前に、良いことでも悪いことでも起きても、しばらくすると人間というのはそれに慣れていくんですと。つまりは世の中に絶対必要なんていうものは水と空気ぐらいしかないということなわけですよね。でも、そんな中で、あったほうが圧倒的にいいし、あったほうが充実感が高いし便利だし、というものがわれわれ企業がつくっているもので。スマホとか、ガラケーがスマホになったりもそうですし、慣れていったと。
そんな中で、そういう慣れる生き物に対してわれわれはマーケティング活動を行っているんですよと考えていったときに、重要なのって彼らのインサイトが何なのかを探るという行為は決して別に否定するわけではないんだけども、それを追求していっても幻のインサイトをずっと追いかけるような、そういう迷路に陥ってしまう可能性が非常に高くて。結局、もちろんインサイトを見ていくということもそうなんだけども、いかに彼らに新しい世界に慣れさせるかということがすごく重要で、特にこのコロナ禍ではっきりして分かったのが、例えばZoomの利用とかUber Eatsの利用なんていうのは、コロナがあったからこれだけ普及したわけですよね。これってまさにそうで、これぐらいのことがあると、やっぱりそれだけの規模感と続ける継続感で物事が進んでいくので、人間というのは慣れていくわけですよね。
さすがにコロナ禍のZoomとかUber Eatsほどでなくとも、インサイト、消費者が何を求めているんだろうということをずっと追いかけるよりも、ある一定のインサイトをクリアしたのであれば、それをどうやって慣れさせるかというところにマーケティングの力って重きを置いていかないといけなくて。欧米の先進的なグローバル企業がやっていることってそうなんですよね。ある一定のインサイトを測ってしまって、それに対して規模でそれを求めさせて慣れさせていくということをやっていくわけで。消費財のメーカーなんかまさにそうですよね。ネスレとかユニリーバとかP&Gがやっていることはまさにそういうことなので。インサイトを永遠に追っていっても何もそこには答えはないんですよね。ずっとインサイトを追い続けていっても。だから、最低限クリアしなきゃいけないインサイト、今の時代背景であったり社会情勢から、こういう最低限のインサイトはクリアすべきだと。それも世界標準化レベルで、一国の偏ったインサイトではなくて、ある程度グローバルに見たときのインサイトを決めたら、あとはそれをどうやって求めさせていくか。つまりはそれがある状態に慣れさせていくかということをずっと考えていかないといけない。
それってどういうことかと言うと、もはやマーケティングのかたちがとにかく長く続けていくこと、ずっと同じことを続け続けることみたいなことと、それをどれだけ広い規模、もしくは大きな規模でやれるかということがものすごく重要で、ここがやっぱりうまく新興国市場なんかでマーケットシェアを獲れない企業は、ずっとインサイトを追い続けているという、そういう印象が非常に強くて。一方でうまくいっている企業というのは、ある一定のインサイトのところまでを理解したら、あとはそれをどれだけ信じ切ってやり続けるかということと、規模を横に増やしていくかということに専念をしている。だから、人間というのは慣れるので、求めているものを探しても、結局そこってもう限界があるというか、意味がなくなってくるんですよね、ある一定のところまでいくと。それよりも、いかに自分たちが良いと思ったものを彼らに慣れさせるかというところがまさにマーケティングで。マーケティングとは、企業や消費者のニーズを探ることだと思っている、それがすべてだと思っていたら間違いだよと。もちろんそれもそうなんですよ。ある一定のインサイトは得ないといけない。でも、それ以上に、これを求め続けさせる、慣れさせるということこそがマーケティングですよと。それは決してなんら悪いことではなくて、それこそが世界の先進的なグローバル企業がやっているマーケティングなので、そこをもう少しどん欲に考えていく必要が、シェアの低い企業は、あるんじゃないかなというふうに思った次第でございます。
それでは今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。