森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日は、新興国市場に展開する上で最も重要なことって何ですか?という質問を結構よく受けるんですよね。これはYouTubeでも最近お話をしているんですけど、最も重要なことというのが、誰にとっての新興国展開なのかによって変わってくると。どういうステージの企業が、どの国のどの都市に、どういうタイミングで出ようとしているかによって何が最も重要かというのは変わってくると。「最も」と言うとね、本当は1つなんですけど。なので、いくつか私が今まで日本の製造業の新興国展開を支援してきてすごく感じる日本企業の弱点というか、ここがよくなれば日本企業はもっともっとシェアを上げられるのにな、売上を上げられるのにな、というふうに感じるところを何回かに分けてお話をしていきたいなというふうに思います。
何から話そうかな。今日はまずパッと頭に浮かんだ重要なことということで、まず展開をする上で市場を知らな過ぎるということは非常に多くて、市場の可視化と競合の可視化が十分になされていない状態で、とにかく自分たちの商品は品質が良いから何とかなるだろうという希望的観測のもと出ていくというケースが非常に多いですよね。基本的にはどういう市場、どれだけ儲かる市場なのか、どういう特徴のある市場なのかという市場側の可視化、これはマクロ環境分析というふうに言ってもいいかもしれませんけれども。対してその市場にはどういう脅威が待ち受けているのか。ミクロ環境分析というふうに置き換えてもいいかもしれませんけども、競合の脅威を知るという。この可視化が済んで初めて自分たちがそこに現在の経営資源で出たときに何が起こるのかということをSWOT分析していくわけで。まさにどういう市場にどういう敵がいて、自分たちの経営資源は何を使えるんですかということがあって初めて戦略ってできるわけですよね。
けど、市場の可視化も競合の可視化も不十分なまま、とにかく品質が良いので出ましょうって、これは神風特攻隊かみたいな話になってしまうので、やっぱりそこが不十分でうまくいっていない企業が非常に多い。9割方不十分だと思うんですよね。ここを改善するだけでまだまだ日本企業の新興国展開って改善できる。もしかすると、今は出るタイミングじゃないかもしれないし、もっと早く出ておくべきだったかもしれないということすら可視化で分かるわけなんですよね。それがやっぱりやれてなくて。
この可視化の業務って、日本だと調査の業務になるわけなんですけど、調べて明らかにする、そして分析をするということなんですが、シミュレーションするということなんですけども。これ、例えば調査会社に委託をするわけなんですよね。こんなの自前でやれる事業会社なんてないですから、基本劇には外注をしますと。日本でも消費者調査を散々やっていると思うんですけど。でも、これ、消費者調査というのは市場の中の本当に一部の消費者とかユーザー調査みたいなところの部分で、調査の業界で言うと、消費者系の調査と産業計の調査って2つのタイプがあるんですけど、私が今、可視化が不十分だと言っているのは産業系のほうの調査なんですよね。市場もそうですし、競争環境もそうですし。そういったことに積極的に費用をかけていかないといけないですし、そこの費用を過去、会社としてかけたことがないので、自分たちで集めろみたいな指示が上から飛んでくるみたいな、びっくりするような会社も結構まだまだ多くて。やっぱり先進的な企業、日本の中でも海外が進んでいる企業というのは調査慣れしている、可視化慣れしているので、分析するのは自分たちの仕事ですと。ただ、可視化自体は速くクイックにやっていかないと全然スピード感が追いつかないので、全部外注しますということで、当然のように調査会社を使っているというケースが、欧米の先進的なグローバル企業なんてみんなそうなんですけど、そこがやっぱり遅れているよねという。
結局、可視化ってインプットなので、インプットが悪いからアウトプット当然悪いですよね。インプットが10しかない会社が100のアウトプットを出せるかって、これはなかなか難しいですよね。もちろん10のインプットイコール…、インプットが入れば入るだけいいアウトプットが出るかと言うとそうではないですけども、自分たちの会社の中で過去の経験とセンスでいいアウトプットに変えていって。アウトプットというのが戦略だとすると、それを実行して得る成果、売上だったりシェアをアウトカムという定義にするならば、やっぱり最低限必要なインプットって絶対あるんですけど、ここがやっぱり少な過ぎる。めちゃめちゃ少ないインプットの中で、アウトプットとしての戦略をほとんど出さないまま、とにかくいい製品を持っているということが戦略の中心に来てしまって、当然ながら失敗をすると。だから、日本企業の海外展開の失敗パターンというのは、だいたい同じような失敗、傾向パターンであると。モノを中心に考えて出ていった結果、想定以上に市場はそうではなかったと。良いものだからまあまあ売れるでしょうと。もしくは、少し分かった企業だと、良いものだけどちょっと値段も高いから、なかなかド真ん中の中間層には売れないから上位中間層から富裕層に当てていきましょうと。実際当ててみたんだけども大した牌がなくて全然儲からないと。進出からもう間もなく10年経つけど鳴かず飛ばずみたいな企業というのは非常に多くいるわけなので。
やっぱり可視化が不十分ですよと。徹底的に可視化をしないと戦略なんてつくれないし、可視化の費用を使う、可視化に費用をかけるということが、結果として安上がりなんですよね。出てしまったら、撤退をするのもしんどいし、やっぱりお金をそれだけ使うので、出来る限り事前に可視化をすると。もうすでに出てしまっている企業は今からでも遅くないので、もう1回自分たちの戦略を再構築するための可視化をしっかりやったほうがいいと。そのときには市場の可視化と競争環境の可視化をしっかりやるということをやっていくという必要があると思います。
また今日も話が長くなってしまって、この番組は5分で終われというふうに言われているんですけど、7分半過ぎてしまいましたので、今日はもうこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。