森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日は、「品質の良さ」ということと、あと、「ブランドの高さ」というものがどれだけ価格にアドオンさせることができるのか、「転嫁」というふうに言ったほうがいいのかな、させることができるのかについてお話をしていきたいなというふうに思っています。
日本の製造業というのは、B2C、B2B問わず、品質が良いということで現在の地位を得ていると、もともとはあらゆるものが欧米で発明されて、彼らがつくっていた。それをより小さく、より安く、より良くしたことによって、彼らからその座を奪い取ったというのが日本の製造業の生い立ちであり、そこに中国が現れてその座を奪い取っていったというのが今です。もう間もなくすべて奪い取られるのではないかというような状況に今立たされているんだと思うんですけども。このときに、いまだに多くの日本の企業が、この品質の追求みたいなところにやはりどうしても捕らわれてしまって、そこからなかなか抜け出せなくなってしまっている。それが新興国を含めたグローバル市場においても非常に大きな足かせになっていると。
ただ、ここで考えなきゃいけないのは、品質というのはどれだけ磨いても、ある一定のところまで来ると、それをお金に換えることってなかなか難しくて。なぜならば、品質の良さがなかなか伝わらないというか、目に見えてこない。その目に見えてこないほんのわずかな品質で価格が大きく変わってきてしまうと、どうしてもやっぱり安いほうを選んでしまう。テレビなんかそうだと思うんですけどもね、今、コストコに行ってもそうですけど、LGのものすごい立派なテレビ、ドーンと入口のところに並んでますけども、もうこれで十分じゃんと。そのちょっと先に少し日本の東芝とかシャープのテレビが並んでいるんだけども、横に並べても、果たしてこれどっちのほうがいいんだろうと。たぶんきっとシャープや東芝のほうが値段高いのでね、そっちのほうが厳密に言うといいのかもしれないですけど、もはやここまで来たら好みの問題じゃない?みたいなね、そんな状況になってしまっていて。そんなかんやで品質というのはなかなか価格にアドオンすることが難しくなってくる、ある一定のところまで来るとですね。
ただ、一方でブランド力というものは、これはもう桁を変えて価格にアドオンしていく、転嫁させていくということができるもので、特にヨーロッパブランドというのは、ハイラグジュアリーブランドを中心に全部そうですよね。自動車だってそうだし、イタリアのスポーツカーだってそうですよね。ドイツでもいいですよ。ドイツのベンツ、BMW、ポルシェ、アウディ、日本はトヨタ、日産、ホンダ、スズキというときに、品質では決して負けてないのに、なぜ車の単価がこれだけ違うの?って、まさにブランド力みたいなところがやっぱり価格に効いてくるわけですよね。
この日本もそろそろ、ブランド力が実はお金になるんだよということを、本当にしっかりと考え直すタイミングに来ていて、もう品質をいくらこれ磨いても、これ以上お金には換えられないんですよね。それよりも、品質にこだわっているんだとすれば、自分たちのこだわりをもっともっと表現をするということが、それもまた1つのブランドなんですよね。別にブランドって高級なものだ、わー、なんだってそういうことを言ってるのではなくて、異常なまでの品質へのこだわりをしっかりと外に向けて発信していくことで、私たち、この会社はもうきちがいのように品質にこだわっているんだと。そこに共感をする人たちがここの会社の商品じゃないとだめだ。それがまさに独自化になるわけですけども。そうなって初めてそこに1つ徹底的に品質にこだわる会社というようなブランドが立つわけですよね。
でも、今の日本の企業っていうのは、総じて品質が良いというブランドは立っていても、じゃあ、1個1個の個を取ったときに、品質の良さがブランド化まではいってないですよね。ということは、品質へのこだわりがやっぱりまだまだ発信しきれていないということだと思うので、そこをもう少し工夫していくと、日本のブランドってまだまだ生かせるんじゃないかなと。
僕、日本企業には大きな可能性があって、それは今自分たちがこだわり続けてきたこと、こだわっていることをもっともっと表現していく、もっともっとうまく見せていくということをやっていく。それが日本企業の更なるブランドを生むことにつながって、そして品質を高めることでは成し得なかった、ブランドを高めることでの価格転嫁、アドオン、金額をアドオンしていくということにつながっていくというふうに思いますので、ぜひブランド力みたいなところをもう1回考えていくと、日本企業の更なる成長につながっていくんじゃないかなというふうに思います。
今日のお話はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。