森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日は何の話をしようかな…。今日はね、最近よく僕の周りでも、最近というか最近に限らずなんですけど、引き続きいろんな質問を受けるというか、議論の対象になることが多い、ASEANの伝統小売と、それから近代小売の攻略の方法みたいなところのお話をしようかなというふうに思います。
ASEAN市場を考えたときに、輸出でやるのか、現産現販でやるのか、みたいなところのお話になったときに、やっぱり圧倒的に伝統小売が優勢な市場というのが、いわゆるVIP、ベトナム・インドネシア・フィリピンみたいな市場は圧倒的にその傾向が強くて、ここを輸出でやるというのは正直ビジネス的にあんまり向いていないというか…。今日の話は消費財メーカーですね。消費財メーカー向けの話です。小売の話が出てきているので。言ったら、市場の85%とかね、80%が伝統小売の市場なわけですよね。全体の小売売上の80%とか85%が伝統小売と。輸出でやるということは、言ったら運送費とか関税とかいろいろ乗ってくるわけなので、基本的に日本で100円で売っているものが150円とか250円で売られることになる。そんなものは伝統小売では売れないので、基本的には近代小売集中になるわけですよね。そうすると、「この近代小売がそもそも少ない市場でそんなことをやってどうするの?」という話になっちゃうわけですね。
例えば具体的に言うと、ベトナムとかだと近代小売の数がおおよそ3,000~4,000ぐらいですよね。フィリピンで7,000店舗ぐらい。インドネシアでは4万店ぐらいあるんですかね。ただ、4万店のうち3万5,000店はインドマレットとアルファマートなので、結局この2社のコンビニに入れなかったら残り5,000店舗ですよという話になる。さらに言うと、インドネシアに関してはハラルでないと基本的にはアルファマートもインドマレットも置いてくれないので、限られたスーパーの輸入品棚に並ぶことになる。そうすると、もうビジネスとしては非常に小さな話になってしまうので、いわゆる大手の消費財メーカーがやるべき市場じゃないですよね、輸出で。なので、VIPに関しては現産現販になると。中小企業と言ってもやっぱり億単位のビジネスをやろうと思うと、インドネシアはハラルの問題がそもそもあるのでやめましょうという話になるし、ベトナムも近代小売だけで戦うにはまだちょっと早いんじゃないかなと。億いかないんじゃないの?という、中小企業向けにもですね。そうすると、やっぱり残るはフィリピンで。フィリピンと言っても、フィリピンをやるんじゃなくて、メトロマニラをやるみたいな話になってくるので。基本的にはそこの切り分けが非常に重要で。
残るは輸出でやると言うとやっぱりSMTになるわけですよね。シンガポール・マレーシア・タイ。ここであれば、マレーシアと言ってもクアラルンプールとジョホールだし、タイと言ってもタイ全土を攻めるのではなくてバンコクを攻めるという話になるので、基本的には輸出でやっても十分億単位のビジネスにはなりますよと。なので、中小企業の消費財メーカーにとっては十分な売上になるでしょうし、大企業がいわゆる導入期の戦略としてまずは輸出でやっていくということであれば、永遠に億では困りますけども、まあまあ、うまくいけば10億20億ぐらいまでは見えますからね、半分ぐらいが近代小売ですから。そういう意味では輸出でやるのか、現産現販でやるのかということを考えると、そういう切り分け方をまずしていくということが非常に重要ですよと。
基本的に大きなマーケットシェアを獲っていくとか、大きな売上を上げていくとなると、やっぱり伝統小売の議論から逃げることはできなくて、特にVIPなんかは伝統小売をやらずして出る意味がそもそもないという。ちょろちょろ近代小売で、中でも日系の匂いのするような近代小売で10年売り続けたって、そんなのはまったくもって何のマーケットに対するインパクトにもプレゼンスにもならないので、むしろある程度腹を決めて、やるならやる、やらないならやらないで攻めていったほうがたぶんVIPはいいと思うんですよね。VIPで近代小売だけやるのであれば、日本の地方都市に集中的にマーケティング予算を割いたほうがよっぽど費用対効果、ROIが高いと思うので、そこはやっぱりそういうマインドで、マインドというか考え方をしっかり持つということが重要になるのかなというふうに思います。
今日はもう時間が来てしまいましたのでこれぐらいにしますけど、また次回続きの話をしたいなというふうに思います。それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。