森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日は、和菓子のグローバル展開というか、国際展開についてお話をしていきたいんですけども。
和菓子の海外展開ってどうなんだろうということで、いろんな企業が今まさにここ10年20年取り組んでいるし、これからもますます取り組んでいくんでしょうけども。僕は、結論から申し上げると、非常に難しいと思っていて、和菓子ですから、いわゆる日本のお菓子ですよね。これ、普通に考えてもらったら分かると思うんですけど、いわゆる西側の諸国、欧米が洋菓子を世界に広めるまで、日本に広めるまでにどれぐらいの時間軸と、どれぐらいのお金が使われてきたかということを考えると、僕が言っている和菓子のグローバル展開というのは難しいという意味がよく分かると思うんですけど。彼らは世紀単位でそれをやってきているわけですよね。それで、ようやく今、浸透しているわけなので。
また、例えば日本人でもね、考えてもらったら分かると思う、中国の月餅っていうお菓子があると思いますけど、中国の企業がね、日本に来て「月餅どうですか、月餅どうですか」って言われてもね、「月餅を食べる習慣ないし、別にそんなの押し付けないでよ」という話になるわけですよね。それは向こうの人にとってもそうで、日本の和菓子って持っていっても、そんなもの押し付けないでと、別にもう洋菓子で十分舌は満足しているし、そこに敢えてちょっと理解しにくい和菓子をという、それはなかなかやっぱり難しい話で。日本人でも、もう40過ぎてようやく和菓子の良さが分かるみたいなね。それは僕だけかもしれませんけど。(笑)40過ぎて初めて和菓子の良さが分かったので、そんなものを海外の人、特に新興国の人に分からせようなんて、これは大変難しい話で。難しいというのは、だめだと言っているのではなくて、時間がかかりますよと言っているのと、やっぱりそれなりの投資が必要だということをね、申し上げているんですね。
その中でも、例えばね、どら焼きとかって言ったら、もう、すぐやりなさいという。ドラえもんが普及している国でどら焼きって、やっぱり浸透しやすいわけですよね。ここ10年ぐらい、非常に抹茶のブームが何回か来てますけど、抹茶とかもね、こういうものもブームに乗って、ブームがあるものはどんどん、どんどん、輸出したらいいと思うんですよね。だから、ブームのアンテナを絶えず広げておいて、そのブームにかかったものに関してはどんどん行ったらいいと思うんですよ。ただ、そうじゃないものは、やっぱりそれなりの時間がかかるし、1社でやれるような話じゃないんですよね。例えば、あずきを浸透させようと思ったら、もう国家ぐるみでやっていくみたいなことを、これをもう四半世紀ぐらいの時間をかけて、じわじわ、じわじわ、四半世紀じゃもう無理かな、半世紀、1世紀かけてやっていくみたいなことをやっていかないと、なかなかやっぱりちょっと難しい。
僕ね、過去に虎屋の黒川社長にね、「どう思いますかと、和菓子の国際展開というか、グローバル展開」って聞かれたときに、僕は「やるべきじゃない」と思うというふうに申し上げたことがあって。本来ならば「ぜひやりましょう」と言ってお客さんにするようなね、ことをするべき立場なのかもしれないですけどね、僕の場合は。でも、さっき言ったように、中国の企業が月餅を押し付けてきたら、やっぱり日本人は嫌だし、それと一緒で、日本の企業が「和菓子いいでしょ」と言って押し付けられたらね、これはまたあれだから。やっぱり押し付けられるというものってなかなか良くなくて。そのとき、虎屋の黒川社長も「僕もそう思います」とおっしゃっていたのでね、無理してやるものじゃないと思っていると。僕が「やらないほうがいい」と言ったのを聞いて、「安心しました」ということをおっしゃってましたけど。でも、やっぱり、それが賢明で。何かね、長い時間軸の中で浸透させるための取り組みとかはいいんだけども、すぐに利益にするための海外展開という意味ではね、やらないほうがいいということだったんだけども。
でも、僕ね、1つね、じゃあ、どうやって和菓子にイノベーションを起こせるかと。そうは言ってたらね、じゃあ、それだけ時間をかけて、何かブームを待たないといけない、待ちの状態なのかとかね、それで時間がかかる、お金がかかる、じゃあ、何も手を出せないじゃないかと。それで諦めるんじゃなくて、そこにイノベーションが必要だという話なわけじゃないですか。
僕、あいすまんじゅうというアイスがあるんですよ。九州のね、会社なんですけど。そのあいすまんじゅうが都内のコンビニだとなかなかないんですけどね、地方のコンビニに行くとね、あいすまんじゅうあるんですけどね。これはバニラの中にあずきが入ってるんですけど、まさに西洋の融合なんですよ。僕はね、このあいすまんじゅうを食べながら、これこそがイノベーションだと思って。イノベーションって皆さんね、新しいことを何か発見する、発明する、やるみたいなことを思ってるかもしれないですけど、イノベーションの5分類って引いてもらったらすぐ出てくると思いますから、見てもらったら分かりますけど、イノベーションって新結合なんですよね。今まであるものを、まったく別の方法でやるとか、融合させる、結合させる、まったく常識としては範疇になかったものを融合させることでイノベーションというものは起きるんですけども。まさにこのあいすまんじゅうはね、イノベーション、新結合なんですよね。こういうかたちで世界展開が図れれば、僕は、和菓子というものがね、あずきに紐付いた和菓子はどんどん世界に出やすくなるし。和菓子の単体で行くのではなくて、どうやってそこの和菓子のイノベーションを起こすかみたいなね、そんなことなんだと思うんですよね。だから、このあいすまんじゅうはね、まさにアイスの世界のイノベーション。これはね、世界へもっともっと行けると思うんですけどね。あいすまんじゅうさん、ぜひ連絡ください。お待ちしてます。
今日のお話は以上です。