森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日も引き続き、「「思考」が戦略に与える影響 その3」ということで、今日は最後ですかね、3つ目の思考パターンについてお話をしていきたいと思います。
3つ目の思考パターンはパーソンですね。人にまつわる思考パターンなのですが、これが戦略に大きな影響を与えていて。結論から申し上げると、戦略的ではないということがやっぱり非常に強くて、仕組みをつくるというよりかは俗人的に戦っていく傾向が非常に強くて、綿密な戦略と高度な戦術で実践のフィールドではビジネスのシェア争いというのが行われているわけなんですけど。綿密な戦略というのは誰がつくるのかと言うと、現場じゃないんですよね。現場が綿密な戦略なんていうのはつくれませんから、戦略をつくるというのは少し俯瞰して状況を見れる人がつくるべきものなので、基本的には社として戦略をつくっていかないといけないんだけども、社としての戦略が非常に弱いですと。
一方で、日本人の個としての能力は非常に高い、高度な戦術という意味で個としての能力は非常に高いんだけども、残念ながら戦術で戦略というのはなかなか補えなくて、多くの日本企業は、人は優秀なのに、大枠の戦略が優秀でないので勝ちきれないと。けど、なんとか持ちこたえている。なぜかと言うと、これは人が優秀だからつくるものも優秀なわけですよね。つくるものも優秀であると。4Pで言うと、プロダクトは優秀なんですと。ただ、全体で見たときに、マーケティング全体で見たときに、本当にその機能って必要なんだっけとか、本当にその品質そこまで必要なんだっけということを考えると、やっぱり価値提供という意味では低くなってしまうので、マーケティング全体では能力が低いんだけども、営業力という意味では能力が高いと。つまりはマーケティング力というのは売れる仕組みをつくる能力で、営業力というのは顧客と商談して受注を獲得する能力なので、基本的には戦っている領域が非常にもったいないというか、大きな枠で見きれていないので、森を見れてなくて木を見ているので、目の前の戦いには勝つんだけども、基本的には森全体でどういう戦いが行われているかというと、それは見えてないので、そこで勝てないのでトータルで負けるという、そういう状況になっているんですよね。
なので、俗人的に何かを成し遂げるというか、物理的にどうにもならないものを俗人的な精神論でなんとかしてしまおうという希望的観測みたいな、やっぱり文化というか、習慣というか、そういったものが非常に大きくまだまだ残っていて、そこは非常に改めていかなきゃいけないところなのかなというふうに思います。なので、このパーソンにまつわるところが3つ目のポイントです。
今回3回目でしたけども、3つ振り返ると、1つ目がプロダクトの思考パターン、それから、パートナーの思考パターン、3つ目がパーソンの思考パターンと。プロダクトの思考パターンというのは、ターゲットに対して4Cを考えることが重要ですよという話をしたと思います。パートナーでは、「誰と売るか」よりも「誰に売るか」を先に決めるんですと。「誰と売るか」ということも重要なんだけど、もっと重要なのは「誰に売るか」ですよと。なぜならば、「誰に売るか」というのがしっかりと定まれば、そこに売れる人と売るべきなので、大きい企業と一緒にやるとか、有名ブランドを取り扱っている企業と一緒にやるとか、そんなことは関係なくて、大きくたって注力してくれなかったらやるべきじゃないし、有名ブランドを扱っているということはそれだけ自分たちよりも大切なブランドがあるということですから、必ずしも自分たちの商品をしっかりと扱ってくれるとは限らないので、やっぱり自分たちの売りたい相手に売ってくれる先と一緒にやるというのがパートナーであると。そして、パーソン、戦力は俯瞰した立場で考え、戦術は直面した立場で考えるものなので、人にまつわる部分、俗人的に何かを成し遂げるのではなくて、やっぱり仕組みを先に考えて、大枠の枠組みを考えて、その中を埋めるという発想が非常に重要で。日本企業というのはビッグピクチャーを見ないんですよね。ビッグピクチャーを見ないで、階段を一歩一歩のぼっていくという思考が非常に好きなんだけども、そのときに何かそこに正義みたいなものが存在するんだけども、きっとこの階段を一歩一歩のぼっていくということは、この頂上にはきっといいことが待っているはずだという希望的観測でのぼっていくんですよね。でも、それはロマンという意味ではいいと思います。70年代80年代の考え方はいいと思うんですよね。ただ、今それ、一歩一歩のぼっていたらおじいちゃんになっちゃったよとか、一歩一歩のぼっていって頂上に着いたんだけど、思っていたよりもなんかいいものではなかったとか、そういうことになるので、やっぱり一番最初にまず上まで飛んでみて、「ああ、いいものがあるな。よし、全体が見えた」と、ビッグピクチャーしっかり見て、そこを逆算でクリアしていくということをやっぱりやらないとなかなか難しいんじゃないかなというふうに思います。
それでは今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。