森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日は、アジア新興国展開における「基準値」の重要性についてお話をしていきたいなというふうに思います。
多くの新興国市場に展開をしている企業で、なかなかマーケットシェアが上がっていかないという企業の多くは、この「基準値」を持ち合わせていないということが多々あります。これは別に中小企業のお話をしているのではなくて、大企業においても基準値がないと。何の基準値?ということなんですけど、自分たちの競争力の基準値なんですよね。マーケットシェアが上がらないのは、その基準値がないので、自分たちが果たしていけてるのかいけていないのかということがよく分からない。ぼんやりとしか見えていない。こういう企業って非常に多くて、結局、新興国市場に出て何と戦っているかと言うと、競合と戦うのではなくて、自分たちの前年比と戦っているんですよね。前年比105%やりましょう、110%やりましょう、チャレンジ115%です、みたいな目標を掲げて、基本的には前年比と戦っていると。これ自体は非常に森を見れていなくて、木を見て展開をしていて、結局、今年は前年比110%120%やっても、チャレンジ120%やっても、市場全体のシェアの競争があって、そこで敗れていくと、いつかチャレンジ120%とか、前年比115%みたいなところの数字も達成できなくなってしまうので。結局、今の参入ステージがどういうステージにあって、主要競合はどういうレベルの戦い方をやっていて、みたいなところを常に意識していかないと、シェアというのは上がっていかないんですよね。シェアって、他人のシェアを1%奪うから自分たちのシェアが上がるという話なので、前年比との戦いではなくて、競合との戦いであるということをやっぱりしっかり認識しないといけないんだけど。どうしても日本企業の場合は、自分たちは日本企業だし、メイドインジャパンだしなのか、メイドバイジャパニーズカンパニーだし、品質良いからあまり中国の安かろう悪かろうとあまり競合していないみたいなのがひと昔前の価値観としてあって。それが今、もう中国企業に品質も追いつかれて、価格ではコスト競争力は彼らのほうが高くて、なんだけどもそこにはなかなか正面から認めたくないという気持ちが大きく働いていて。一方で、ヨーロッパ、欧米の企業なんかは、品質はもちろん高いんだけども、B2Bであってもブランド力みたいなところをすごく意識してつくり上げてくるので欧米はしょうがないみたいな、そんなところであまり競合を直視しないという、そういう企業が非常に多くて、結局、前年比との戦いをしていくわけなんだけども。
結局、前年比との戦いをするって、本社から見ると、海外売上比率が何%になりましたみたいな、そういう戦い。前回か前々回かちょっとお話したと思うんだけども、国際マーケティングとグローバル・マーケティングの違いの話をしましたけども、国際マーケティングの視点で戦っていたら絶対に勝てなくて、今はグローバル・マーケティングの時代なので、グローバル・マーケティングの視点で戦わないといけない。なんだけども、視点というか思考ですよね。思考で戦わないといけない。なんだけども、結局、国際マーケティングの思考で戦ってしまっているから、そういうことになってしまう。視点だね。ごめんなさい。思考じゃなくて、視点でね。なので、視点は絶えずグローバル・マーケティングの視点で戦わないといけない。これ、前回じゃなかったかな。いつだったかな。ちょっと前に話したような気がするんだけども…。そうなってくると、結局、基準値を持たないといけなくて、自分たちが明確に…。何を言っているかと言うと、敵の競争力を100とした場合に、自分たちが110なの?120なの?と。そういうケースってあまりないんですけど、だいたい敵が100だとしたら、それ以下になってくるわけなんだけどね、日本企業の場合は。なんだけども、主要競合が100だった場合に自分たちが80なのか、70なのか、はたまた40なのか、30なのか、これによって全然戦い方って変わってくるわけで、この差を埋めて追い越すのが戦略づくりで、それを短・中・長で描いていかないといけない。そうなってくると、やっぱり基準値を明確に持たないと、自分たちはどこに向かって走っているんだっけ?というところがまったくなくなってきちゃうので、森を見ず木を見る戦略みたいなね、対前年比+15%いきましょうと、チャレンジ120%ですみたいな話になるので。そうじゃないよねということを少し認識をまずしっかりしないといけない。
また僕、話が長いからちょっと時間が来ちゃったんだけども、じゃあ、この「基準値」ってどうやって持てばいいの?という話を次回していきたいなというふうに思います。
それでは今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。