森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日も前回に引き続き、「近代小売(MT)との有利な交渉の進め方」ということでお話をしていきたいと思うのですが。
前回お話したのが、もう現産現販しているんだったら、これは小売とは直接交渉しないとだめですよと。最初はお勉強代を払ったとしても、ディストリビューター任せにずっとしておくと、言ったらその中身、中間流通マージンだけじゃなくて、その先の小売マージンも見えてこないので、基本的には見える化をさせていく、透明度を上げていくためには直接交渉をしていかないといけないし、現地法人があるのにそれをやらないというのはあり得なくて。先進的なというか、シェアの高い企業というのは絶対に直接MTと交渉していますから、最終的にはそうしましょうねと。輸出の場合は、もうディストリビューター任せで仕方ないですねと。この基本的なスタンスがありますよというお話をしたと思うんですね。
肝心な交渉なんですけど、結局、日本の小売とASEANの小売で何が違うかって、棚に置くのにお金が掛かるっていうのが、これはASEANの小売の最大の違いで、結局、1SKUあたり数千円なんですよね。1SKUなんて置いたって小売の売り場で全然目立たないので、基本的には3SKUとか5SKU置くわけですよね。それで、仮に1SKU 5,000円だったとして、今は円安なのでもっと高いと思いますけど、これ例えばメトロマニラの中心部、SM、ピュアゴールド、ロビンソンズなどの小売の例えば菓子レーンとかにしましょうかね。そこでたぶん最初に出てくる値段って6,000円とか、今は円安なので8,000円とか言われるかもしれません、1SKU。これを、じゃあ、5SKU買うとなると、8×5=40で4万円ですと。これ4万円、1店舗4万円ですから、あたりね、これが10店舗で40万円、100店舗で400万円になるので、基本的に棚代だけでこれだけ掛かりますよと。それ以外にリスティングフィー、ちょっと小売によってね、呼び方がね、レジストレーションフィーとかって呼ぶ場合もいろいろありますけど、それは一発単位でバーンとあったりとか。あと、冷蔵庫・冷凍庫なんかって言うと、毎月これは電気代が掛かりますからお金を取るというケースもあるわけですよね。
そうすると、結構、数百万から、やり方にもよりますけど、1,000万2,000万とか平気で導入で掛かってくるということになるわけですよね。これを掛けて、じゃあ、売れなかったらどうなるかと言うと、売れないものを置いておく棚はないですよということで、半年ぐらいで全部撤去されてしまうと。もう、容赦なく撤去されるので、これはバンコクであろうが、メトロマニラであろうが、クアラルンプールであろうが、シンガポールであろうが、ホーチミンであろうが、ハノイであろうが、ジャカルタであろうが、もう容赦なく小売は撤去されますから。そうすると、まったくもって掛けたお金が無駄になる上に、敗者復活戦がめちゃめちゃしにくいという、このマイナス点があって。
要は1回だめの烙印を押された商品をもう1回再導入するときに、「いや、これは前にやったけどだめだったじゃない」と。何年かぐらい覚えているんですよね、彼らはね。だから、市場も業界も覚えているし、小売はデータとして残っているしというので、「じゃあ、何が前回と変わったの?前回何がだめで売れなかったの?今回はなぜ売れるの?」みたいな話になってくるので、敗者復活戦がしにくいですよと、だから最初から風呂敷を広げちゃ絶対にだめ、というのがまず1つで。
これだけの導入費を払って売れるか売れないかの保証がまずないというね。小売は何もしてくれないと思ったほうがいいと思いますね。何かキャンペーンをやろうとか、メーカーと一緒になって何かをするというところに話し込んでいくには、やっぱりそれなりの担当者との人間関係をつくって、年数を重ねて実績つくってやってそういうことができるという話で。小売から出てくるのは「値引きしろ」と、「値引きして売れ」と。つまりは「Buy one get one free」やれみたいな話、「1個買ったら1個無料のキャンペーンをやれ」みたいな、そんな話しか出てこないので。安くしたら誰でも売れるよみたいな話なんですけど、これがASEANの小売の実態なので、売れないんだったら安くしなさいと。だけど、小売はしっかりマージンを取りますよみたいな、そういう世界なので、やっぱり風呂敷を広げないということはすごく重要で。
じゃあ、「風呂敷を広げないでどうやってやるの?」ということなんですけど、重要なのは、自分たちの型を手に入れるということなんですよね。型って何かというと、どういうふうな小売に、どういうふうに陳列して、何をすると商品がセルアウトしていくのかという型、売れる型、勝てる型、これがないのに風呂敷を広げてしまうと被害が広がるわけですよね。だって、売れる根拠がないのに、なぜ最初からそんなに風呂敷を広げるんですかと。自分たちが日本で実績のある商品をASEANに持ち込んだときに、本当にその4Pだったり4Cが消費者に対してしっかりとマッチしているのかということが、リサーチデータ上ではほぼほぼいけるだろうということで市場投入するんでしょうけども。でも、多くの場合、それが外れるわけですよね。現実社会はそうじゃなかったと。リサーチで、調査でやった、消費者調査をさんざんやってきたんだけど、そうじゃなかったという結果になるので。風呂敷を小さく、とにかく小さく小さくやって仮説を検証して、外れるので、必ず外れるので、それを修正して、また小さくやって、そして最終的に勝てる型をつくって、「自分たちの勝ちパターンってこうだ」ってなってから広げていくということはすごく重要で。それを鉄則としてやっていくということ。だから、最初の1年とか2年というのは本当にその型を習得するための実証実験みたいな、テストマーケティングみたいなもの。繰り返し繰り返し、いわゆる本番さながらのテストマーケティングみたいなことをやっていかないといけないと。
もう6分36秒になっちゃった。その具体的なやり方のお話をしたいので、今日はこれぐらいにして、また次回続きを話しますけども。すみません。今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。