森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日も引き続き、中小企業の海外展開の話をしていきたいなというふうに思います。
今日はね、人脈についてお話をしていきたいなというふうに思うんですが。人脈ね、すごく重要で、僕もこの20年間を通じていろんなシーンを今まで思い出して、今思い出しながら話しているんですけど。人脈って本当に重要だし、大切なものです。ただ、誤解してはいけないのが、人脈だけではどうにもならないということがすごく重要で。ひと昔前の中国とかね、30~40年前の中国とか、あと20~30年前のアフリカとかね、確かに日本の一中小企業が政府のお偉いさんに会って何か直接的な優遇をその場で受けるみたいなことというのは多々あったんですよね。例えばこういう利権をもらえたとか、こういう利権をある一定の地域内でもらえたとか、そういうのがあったんですよね。それは例えば特定の業種のライセンスであったりとか、あと税制優遇であったりとか、そういったものがありましたと。
ただ、じゃあ、現代の海外展開、特にアジアもしくは新興国においても、そんなことってやっぱり在り得なくて。海外に行くと人脈を語る人たちというのが結構いて、人脈を語る、「私はとてつもなくすごい人を知っている」みたいな、「共産党のなんとかを知っている」とか、「政府のなんとかを知っている」とかという、そういう自称「自分はすごい人知ってるよ」人たちみたいなのが結構たくさんいて。そういうのを聞いていると、多くの中小企業は「なんかこの人すごい力を持っているんじゃないかな」と、「目に見えない、とてつもない力を持っていて、その力で私たちのためにいろんなことをしてくれるんじゃないか」、こういう思い込みに陥っていくんですよね。これが運が悪いと騙されちゃってみたいな話になって。本当に騙しにかかっているという、いわゆる詐欺みたいな、そういうケースに引っ掛かるというのはそうそうないと思うんですけど、そういうのも一部のところではあって。そうじゃなくて、どちらかと言うと、向こうは騙しているつもりはないんだけども、リップサービスなんだけども、こっちは「あれ?当時言っていたことと全然状況が違うじゃん」となって、結局「騙された…」みたいなね、そういうケースというのは結構あって。
普通に考えたら分かるんですけど、日本で「いや、私は自民党の何とか先生と仲が良くて、その先生にちょっと話してなんとかしてもらいます」みたいな、そんなことを言うのって地方の政治家を応援しているおじいちゃんとかね、そういう人だったらまだ言うかもしれないですけど、なかなかないですよね。そんなことを日本で言ったら「怪しい、この人」となるではないですか。例えば、「孫さんと知り合いなので、ちょっと話してみます」とかね、言われた瞬間に「怪しい!」となるのに、なぜか海外に行くと、「財閥系のグループのトップを知っているからちょっと話を」と、いやいや、そんなこと言ったら日本だったら確実にアウトなのに、海外だとそれを聞いても「すごいんだな」と思い込んでしまう中小企業というのは結構いて。
僕、この20年間で1つ分かったことが、「能ある鷹は爪を隠す」ということわざがあると思うんですけど、これって世界共通だなというね。本当に実力のある人って、やっぱり爪を見せないですよね、どこへ行っても、中国へ行ったって、ASEANへ行ったって、どこへ行ったって。わーわーわーわー吠えるのは、もうみんなやっぱり爪をむき出しにするのはやっぱり三流という言い方はちょっとあれですけど、なかなかそうでないケースが多い。日本人は控えめなので、そこまで言わないですよね。なんですけど、結構やっぱりリップサービスというか、そういうふうに言う人たちというのはあって、それを直球で信じると、なかなかいい状況にはならないと。
あともう1つ、「すごい人を知っている。そのすごい人が自分たちに優遇をしてくれる」という類の話に出会ったときに、向こうのメリットをまず考える必要があって。メリットがないのに誰もそんなことしないんですよね、普通に考えてね。なので、人脈ってすごく重要だし、コネっていうのは非常に重要なんだけども、やっぱり例えば僕も「何々さん紹介してください」とかって、「紹介してくれ、紹介してくれ」という人たちを見ますけど、いや、僕にとってもこの人のこの人脈、僕とは全然レベルの違うこの人脈、そんなに安々といろんな人を紹介できないし。だって、変な人を紹介したら「森辺君、なんでこんな変な人を紹介するの?」と言われてしまうし、この人に僕がこれからの人生20年間30円間の中で何かお願いしたいことがあるかもしれないのに、そんなに安々紹介をするなんていうことはしないですよね、普通ね。友達だったらいいですよ。対等の友達だったらね。なんだけども、社会的に見てそれだけ上の人をそんなにパッと紹介できるかと言うと、やっぱり紹介をすることが失礼にあたってしまうかもしれないし。そうすると、そんなことってまずあり得なくて。そんなこと、紹介すらあり得ないのに、じゃあ、その相手がその中小企業のために骨を折って何かをしてくれるなんていうこともまずあり得ないですよね。「じゃあ、それによってその人たちはどんなメリットがあるの?そんな骨を折るんだったら大企業のためにやりますよ」という話なんですよね。だってそのあとのメリットが大きいですからね。だから、人脈がある系の話に一切乗らないということはすごく重要で。
人脈に任せてしまうと、もう全部がアンコントローラブルなんですよね。「いやもう、あの人に言って全部ちょっとやってもらうから」みたいな。それって待つしかないので、物事がうまくいくときにはとんとん拍子でいいかもしれないけども、大概の場合うまくいかないので、そうすると、「あれ? 状況違うよね。言ってたことと違うよね。あれ?どうしたんだろう?」とずっとずっとそうなっていって、最後「やっぱり駄目だった」みたいな話になっているというケースが非常に多く見受けられる。
一方で、戦略をベースに全てを組み立てていけば、駄目だっていう課題にぶつかったときに、それに対して対策が打てるので、どんどんどんどん自ら状況を改善できる。人脈頼りになると、基本的に自ら改善というのはできない、ずっと待ちになってしまうし、戦略はコントローラブルだけども、人脈はアンコントローラブルなので、それでいいと言うんだったらそれでやったらいいと思いますけど、なかなか事業の場合は、それだと難しいなというのを多々見てきているので、人脈系の話をする人が出てきたらまず避ける、まず関わらないというのが、僕はもうモットーにしているので。楽して儲かるよ系のお話と、すごい人知ってるよ系のお話をする人は、もう僕は耳を閉じるということは決めているので。そういうのに引っ張られている中小企業をずっと見てきたので、そこは気を付けたほうがいいんじゃないかなというふうに思いました。
今日もだらだらと長い話をしてしまってすみませんでした。以上にしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。