森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日は、「狙う市場で成功確率が大きく変わる」というお話をしていきたいと思います。企業がアジアを中心とした新興国市場に展開する際に、どの市場に出ていくか、展開していくかによって成功確率って全然違いますよねということをお話をしていきたいなと。
もし、この国を狙っていれば、おそらくこれぐらいの経営資源だったら成功していたのに、この国を狙ってしまったから成功しなかったなんていうケースっていっぱいあって。結局、自分たちの経営資源、人・モノ・カネ・情報、自分たちの競争力ですよね、経営資源って。難しい言い方をしますけど、競争力は自分たちの強さのレベルに対して、じゃあ、どれだけ難易度の低い市場、もしくは難しい市場を狙うのかという、ここのマッチングなんですよね。パズル合わせなんですよね。自分たちのレベルが低いのに、例えばインドネシアとか、そもそもハラルとかがあるような市場、VIPというASEANの中でも市場としては、市場性のポテンシャルは最も大きいんだけども、伝統小売を攻略しないといけない、B2Cで言えば。非常に難しい、VIP、ベトナム、インドネシア、フィリピンとか。これはB2Bでも難しいですから、VIPは。そうすると、一企業から取れる客単価が低いわけですからね、VIPは今現状は。ただ、将来にわたってはポテンシャルがあるという市場。こういうふうに考えると、やっぱり経営資源が少ないのに難しい市場を狙ってしまったばっかりに、なかなかビジネスが進まず、結局大きな損失をそこで生んでしまうので、なかなか次の海外展開に足が出ないという、そんなケースって少なくなくて。これってもう、ほんとに自分たちの経営資源を客観的に判断する、自分たちの競争力ってどれぐらいなんだっけということを明確に数値で見るということをやっぱりする必要があって、その競争力に合った市場から展開をしていくということがすごく重要で。結局、その市場に出たら、競合との競争になるわけですよね。大きい市場にはたくさんの競合がいるし、市場が小さかったら競合はいないけど、小さいからあまり食えないと。ただ、自分たちがそもそも狙っている売上ってどれぐらいなんだっけ、収益・利益ってどれぐらいなんだっけ、というところから考えると、もしかしたら敵のいない小さな市場でも十分かもしれないし、そこのパズル合わせをどうやってやっていくかということを考える必要がある。
なので、市場ばどれぐらい大きいのかということを見ると同時に、そこにいる競合の競争力を100とした場合に、自分たちの競争力はどれぐらいなんだっけと、それが100に対して70だったら、80だったら、まだまだ戦えるかもしれないけど、30、20じゃもうまったくお話にならないので、狙うべきじゃないよねということになるので。やっぱり自分たちが出る市場、VIPに比べたら、日本企業は例えば消費財メーカーでB2Cのメーカーでアジアに出るというときに…。VIPは本来ならばここをやらないといけないですよ、最もポテンシャルがあるし、最も大きく成長するので。ただ、経営資源の少ない、競争力の弱い企業がVIPに行っても、まったく箸にも棒にもという状況になるので、やっぱり近場の香港、韓国、シンガポール、台湾みたいなところが、やっぱりまず最初の選択肢としては出てくるわけですよね。そこに輸出をちょろちょろやって、そこである程度自分たちの競争力を上げてきて、経験値を積んできたら、少し、じゃあ、マレーシア、マレーシアといってもクアラルンプールに手を伸ばしてみようかとか、マレーシアはハラルがあるので、じゃあ、バンコク、タイじゃなくてバンコクですね。バンコク、首都限定でちょっと手を伸ばしてみようかみたいな展開になるので、基本的にはやっぱり狙う市場で全然変わってきますよと。
そもそも発展途上国から新興国へのこの発展段階って7つのステップがあって、そのステップの、今狙おうとしている国がそのステップの一体どこにいるんだろうということを考えないといけないわけですよね。だいたい複数が同時に展開されているという場合もあるので、そこはちょっとケースバイケースで見ていく必要はあるんですけど、だいたいODAが、日本政府の開発援助が入っていって、ASEANでもまだ入っている国はありますし、中国だってちょっと前までずっと入っていたわけで、今はアフリカなんかは積極的に日本はODA、ジャイカがやっていますけど、そういうのがまず入って。そういうのが入っていくと、最低限のインフラみたいなものがある程度出来上がってくるので、その現地の国が外資系企業の優遇政策みたいな、誘致政策みたいなのをやるんですよね。うちの国に来てくださいと、工場をつくってくださいと、工場の敷地を用意しますと、建屋も建てますと、工員も用意しますと、どうぞというような、外資企業の誘致政策。それから、外資企業に対する規制の緩和が始まってくるわけなんですよね。
政府と民間、一番最初の第一陣としてだいたい行くのは日本の商社とか銀行など、それから官民インフラ整備プロジェクトみたいなものが始まって、いろんな工業区とかが展開されていくわけですよね。これが3番目。それらが整備されると、今度は4番、民間進出の第一陣が、インフラ事業者なんかが出ていくわけですよね。インフラをつくるために必要となる製品や部品をつくっている企業がまず出ていって、5番目に民間進出第二陣として、自動車メーカーなどが出ていくと。6番目、民間進出第三陣で、家電メーカーが出ていきますよと。7番目、民間進出第四陣でFMCGのメーカー、消費財メーカーが出ていきますよと。だいたいインフラ事業者、自動車メーカー、家電メーカー、FMCG消費財という、こういう順番になっているので。ここの消費財まで出ていくと、もうほぼほぼ豊かになってきているので、だいたい今のベトナム、インドネシア、フィリピンなんかは消費財まで出ていってますから、だいぶ豊かになっている状況でしたよね。ミャンマーの反政府、軍部ののクーデターが起きる前までは、自動車が出ていて、これからいよいよ家電が出るぞと、家電の保有率が一家庭で少なかったわけですけど、家電が出るぞというタイミングでああいうことになっちゃったので、もったいないなという、またあそこで10年20年30年とたぶん無駄にして、人々の貧困が続いていくんでしょうけども、ASEANの中での競争にもますますまた差が出てしまうんでしょうけども、しょうがないですね。
そういう順番なので、こういう順番を見極めて、今自分たちが狙おうとしている市場が一体どのステージにあるのかというところと、自分たちの競争力の度合いをパズル合わせしていくと、成功確率がだいぶ変わってくるというお話でございます。
今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回よろしくお願いいたします。