森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日は、このパンデミックの間、2020年から2022年まで、この3年間ですね、ASEAN、特にVIP、ベトナム、インドネシア、フィリピンの伝統小売がどういう状況にあったかということについてお話をしていきたいなというふうに思います。ベトナム、インドネシア、フィリピン、それぞれ少し違った事情があるようで、だいぶ大変だったという国もあれば、むしろ伝統小売の重要度がさらに増したなんていう国もあったりしていて、ちょっと国によってだいぶ事情が違いますよという状況のようです。
VIPに関しては、SPYDERの『SPYDER CHANNEL』のほうで実際に現地に、2022年かな、行っていて、伝統小売のオーナーさんたちにインタビューをしてきている動画があるので、そちらで見てもらっている方はもうすでにご存じかもしれませんが、やっぱりだいぶ大変だったと。というのは、2021年に、20年にもあったのかな、いわゆる「営業禁止」と政府の規制が入って、営業しちゃ駄目よという期間がだいぶ長くあって。そこから2022年の前半ぐらいで、ベトナムは早くから外国人の訪問に関しても一切なんら制限をかけずに開放し始めて、国内の経済このままじゃまずいので、どんどん、どんどん、昔の状態に戻ってもらうと、外国から人が来てもらわなきゃ困るということで、そういった規制を取っ払ったタイミングが2022年の前半だったんですけど。その状態のときで、伝統小売のいわゆる顧客の戻り、景気の戻りというのはだいたい半分ぐらい、6割ぐらいみたいな声がやっぱり多かったので、だいぶこの3年間で伝統小売は疲弊したと。取り扱い商材を変えたという伝統小売もあったのでね。日用品を売っていたんだけど、日用品は売れないから、水を売っていますみたいなね、お菓子を売っていたんだけど、お菓子より飲み物ですみたいな、やっぱり飲み物が一番回転が速いので。取り扱う商品をどんどん変えていったみたいなところも聞かれたので。商品もね、結構埃をかぶってみたいな、基本、伝統小売に1回並んだもの、買ったものは返品なんてできませんから、売れなかったら、どんどん、どんどん、埃がたまっていくわけなんですけど。やっぱり分かりますよね、「ああ、これはだいぶきてるな」とか。少々、賞味期限切れていても並んでいたりしますから、まあまあ、だいぶしんどかったんだろうなというのがベトナムの状況でしたと。
一方で、インドネシアはどうかと言うと、インドネシアもだいぶ数は減ったと言っていましたね。インドネシアって、ちょっと余談ですけど、インドネシアって今、447万店ぐらいの伝統小売があるんですけど、ここ平均、年平均だいたい2万4,000店舗ぐらいのペースで減少しているんですよね。これだけ聞くと、「うわっ、伝統小売やっぱりなくなるんじゃないの?」と、「近代化されていくんじゃないの?」みたいな話、「どんどん、どんどん、コンビニになっていくんじゃないの?」みたいなことを想像しがちですが、少し数字を使って計算をしていくと、年間2万4,000店舗ぐらいの減少だと、もう447万店あるということは、もうだいぶ地域に根付いてしまっているので、186年ぐらいかかってしまうんですよね、なくなるまでに。仮に2倍のスピードで4万8,000店舗、5万店舗毎年減っていっても、これは90年以上かかるので、3倍で7万店、7万5,000店ぐらい毎年減っていっても60年ぐらいかかるので、向こう数十年は伝統小売は存続しますよということなんですけど。だから、やらなきゃいけないよということには変わらないんですけど。だいぶインドネシアも大変だったねと。ただ、やっぱり政府の中小企業の支援策みたいなのがだいぶあったみたいで、そういったものを活用したというのが聞かれましたかね。
一番面白かったのがフィリピンで。フィリピンは実は、どこだったかな、フィルスター・グローバルというメディアがあるんですけど、そのメディアによると、伝統小売がこのコロナ禍パンデミックの間、2021年に14万店増えているんですよね。14万店増えていて、「えー」って思う人も多いと思うんですけど、実際に14万店増えていて。実は近代小売もパンデミックで小型店の重要性みたいなことを結構言い始めていて。ごめんなさい。14万店増えたのは2020年ね。2020年にパンデミックになって14万店増えていて。結局、いわゆる大型店は規制されて営業中止というか、停止しないといけなくなって、「じゃあ、どこで買うの?」といったときにサリサリストアで買うわけですね、伝統小売で買うと。伝統小売は密になりようがないので、基本的にはそこでみんな買っていたと。もともとフィリピンの場合は、伝統小売の市場からの親しまれ方が、他のASEAN以上にやっぱり親しまれていて、業界、近代小売からもウェルカムされているんですよね。そもそも伝統小売はどこから商品を仕入れているの?といったら、近代小売から仕入れていたりするわけですよね。ピュアゴールドが伝統小売向けの商品提供サービスをやっていたりとか、あと、アルファマートもフィリピンに進出していますけど、地域の伝統小売と共存するためのあらゆる施策を展開していたりとか。フィリピン政府自体も、超低金利でマイクロファイナンスを伝統小売を含む小規模事業者に徹底的に展開をしたというのがこのパンデミックの3年間で。基本的には伝統小売の発展が国の発展だということを言っていて、やっぱり地方自治政府、中央政府含めて。伝統小売が80万店とかフィリピンはあるんですよね。一説によると100万店とか言われているんですけど。そこの100万店の後ろには家族がいて、世帯があって、その人たちを支えていくということがいかに、自分が政治家だったらそうするだろうなというふうに、政治的観点から見てもたぶん重要で。国の安定にもつながるし、いたずらに、じゃあ、コンビニを増やせば、それが人々の幸せかというと、そうではなくて、中央集権的なコンビニのやり方ではなくて、それぞれがスモールなオーナーとして、実入りは少ないんだけど、それで満足している生活がそこにあって、自立して、いわゆる分散型のビジネスがそこに成り立っていて、これどっちが素晴らしいかと言ったら、たぶん今までの価値観、世界の価値観で言うと、たぶん中央集権で、とにかくこういうスタイルでやっていきますと決めたものを、ズドンとコンビニのようにやっていくというのが、たぶんよかったんだと思うんですね。そして、人々はそこで働くみたいな。けど、そうじゃなくて、1人1人がオーナーシップになってみたいなやり方のほうが、フィリピン人には合っているのか、何なのか、ちょっと分かりませんけど。政府も支援する、業界も支援すると。そんな中で非常に伸びたというのがフィリピンの伝統小売で。だから、フィリピンとベトナムなんかは非常に大きく顕著に違うというのが実態だったのかなというところでございます。
それでは今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。