東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:では、森辺さん引き続き、前回に引き続いてインドネシアのマンダムのお話をしていきたいと思うのですけど、ざっくりと前回の振り返りをやらせていただきたいのですが、いかがですか?
森辺:前回はマンダムという会社がインドネシアで非常に高いシェアを持っていて、成功している会社ですと話をして、今130億円ぐらいの売り上げがある、インドネシアで。ただその背景には1969年から進出していると長い歴史がって、合弁で出ていますよと。そんな中でインドネシアというマーケットの特製をしっかり捉えて、中間層以下、1番のBOPにはいかないですけど、その少し上ぐらいからやはり中長期で取り組んでいく、投資をしているということをやっている優秀なマーケティング会社ですねというお話をしたと思います。
東:今インドネシアで130億というお話があったのですけど、日本でどのくらいあるのというのを調べてみたのですが、連結ですけど、2013年3月期で約600億。2014年3月期で680億と。そうすると日本だと。
森辺:5分の1、6分の1はインドネシアで稼ぎだしているというのはすごいです。
東:1000億をみたない、日本ではどちらかというと当然資生堂さんとかコーセーさんのほうが大きいのに、マンダムはインドネシアで130億もやっているというのは結構すごいことです。
森辺:とてつもないことだと思います。なかなかそこまでやれている会社はなくて、前回マンダムの現地のずっとやられていた方、お会いしたことはないと。僕会っていたのを東に言われて思い出したのですけど、山下さんという方がずっと引っ張ってこられて、同じややこしいですけど、フマキラーの責任者も山下さんという方で、その方には僕会っていないので会っていないというイメージがあったのですけど、その方も以前お食事したときに話したけど、やはりMTはもちろんのこと、TTで投資をしっかりとしていくということはアジアではすごく重要だと言っていました。実際に彼らの販路を構築した人です。
東:現地で、インドネシアの現地でNo.1、マンダムがNo.1であるカテゴリーが10個もあるというのは結構すごいですよね。
森辺:11個ですか。ちなみにヘアクリーム、ヘアジェル、パヒュームタンク、ヘアワックス、ポマード、スプレーコロン、スプラッシュコロン、パヒュームティッシュ、パウダーヘアダイン、スティックデオドランド、コンパクトパウダー。すごいですよね。置いてありますからね、小さいお店とかにもマンダムの商品は。マンダムと分からないですから、一見。よく見るとマンダムなんだと。
東:食べ物みたいな。
森辺:中国かな、台湾の商品かなと思ってしまうのが一見、でもマンダムだというのでビックリしました。アジアに行くと、好きだからショッピングモールとかいろいろな小さいところとか奥地のところへ行くではないですか。そのときに、やはり欧米は強いな、マーサーは強いな、なんとかは強いなと思って見ていて、ここは中国製がいっぱい置いてあるのかな、韓国製かなと思って取ったらマンダムだったというのが結構あったりするので、さすがだなという風に思って。また、インドネシアは日本人に対する印象が東南アジアの中で最もいいではないですか。だからそういう意味で日本のかわいい文化みたいなのも輸出されているし、日本のこういうものに対するイメージが相当高いのは1つです。
東:そういうところも追い風になっているけれども、当然そういったところだけではないということですよね。
森辺:その追い風をうまく活用できているわけです。マーケティングが素晴らしい、チャネルづくりが素晴らしいから。
東:ギャッツビーなんかにしても、日本と同じようなものもあれば、マンダムは現地化を、インドネシア版みたいなのを作っているということですよね。
森辺:そういえば思い出すと、東南アジアの男性。僕はシンガポールのアメリカンスクールで育っているじゃないですか。そのアメリカンスクールにはタイ人もいればインドネシア人も、マレー人もいっぱいいたのですけど、当時1980年代だったのですけど、学校だけに限らず街でもそうなのですけど、ポケットに櫛をさすのがすごく流行っていたのです。コンプというのかな。いわゆる棒状のくしをポケットに差すのがすごくはやっていて、それで髪の毛をシックスティーズとかアメリカ人が髪をくしでこうポマールをかき分けるみたいなイメージのが、ちょうど80年代、20年遅れてシンガポールとか東南アジアで流行っていて、シンガポールで流行っているから当然インドネシアとかマレーシアとか波及するわけです。ねっとりしたヘアワックスを男性でもつけていたのです。どんなに。
東:ポマードに近い。
森辺:低所得の人たちというか、中間の人たちでもすごくおしゃれに気を使うというか、暑いのにあえて長ズボンを履いたりとか、長袖履いたりとか。ポマードをつけてビシャっと決めている人が結構多かったので、インドネシア人はつけているなワックスというイメージが当時からあったので、そういう市場でもあったのだと思います。
東:そういうおしゃれに敏感なところでもあるということですね。
森辺:すごいのは、この間ネスレの話をしましたけど、ネスレが小袋でフィリピンとかのサリサリ、インドネシアだとワルン。インドネシアのワルン、250万店あるというところに商品を販売しているという、マンダムも小分けのギャッツビーとか売っているわけです。1個3円とかで。だから、すごいなと。年間3000ドル未満の低所得者層をターゲットに売っているわけなので、さすがにこれはコーヒーでネスレとかコピコの小袋分け。味の素の小袋わけは見ましたけど、整髪料の小袋分けですよ。
東:1回しか使わないということですよね。
森辺:シャンプーの小袋わけがあるので、そう考えたら確かにありだなと思うのですけど、格好つけて髪の毛決めるぜというときに使うわけです。
東:日本だと考えられないですよね。1回だけに使うためにそれを買うというのを。
森辺:だから、そういうのもあるし。使ったことない人も1回試してよかったら今度デカイので買おうとか。
東:やはりそれだけ現地適合化したものを、小袋から普通に日本で置いてあるようなものからいろいろ作っているということですよね。森辺さんも前回言われていましたけど、マンダムの強さというのはチャネルに現れてくると思うのですけど、その辺はどうですか?
森辺:家族経営の小さなパパママショップのワルンを主要の販路として捉えられていて、そこがインドネシアのTTの比率は多分85%ぐらいTTだと思うのです。そこを抑えているというとものすごく強いことで、これグローバルマーケティングを研究している大石先生も言っていますけど、TTの販路は1回作ると模倣困難性が非常に高いのでマネが出来ないわけです。だからそこはすごく彼らの1つの強みです。すぐに崩されない強み。
東:ここに大石先生から教えていただいた資料があるのですけど、マンダムの社長と専務さんの日経新聞でのコメントがあって、西村社長のコメントを抜粋すると、島が1万7000以上あるインドネシアで量販店はもちろん、何百店もある家族経営の小さな屋台まで商品をおこし、送り届けるのは至難の業ですと。極論すれば、海外進出と現地生産は誰にでも出来ます。実は1番難しいのは流通網。私たちは佳境の方とパートナーシップを築いて乗り越えましたと。一方マンダムさんの専務は、商品以上に大切なのは流通だと言い切っていらっしゃいます。インドネシアは家族経営の小さな屋台が主流。それが何百店もあると。
森辺:何百万店ですね。
東:何百万店もあると。人が住んでいる島が1万2000以上あり、現地のパートナーがいないと配送しきれない。インドネシアの他、フィリピンやタイは佳境が流通を抑えており、人脈をまく価値が必要であると。お二人とも共通しておっしゃっていることは、1番難しいのは流通網。商品以上に大切な流通であるということをおっしゃっているのですけど、この辺の考え方はどう?
森辺:ここまでちゃんと理解出来ていて、理解した上で実行出来てしまっている企業というのは本当に少なくて、その商品以上に流通だって、結局日本にある商品を出来ればそのまま、そのままの価格でいうのが多くの日本企業の根底にあるわけではないですか。MTで苦労してTTなんてまだまだ先みたいに思っているわけです。まずはMT入って、TTは後だと思っているのですけど、そのTTをどのタイミングでやるかというのが決めてから進出していかないと、進出しないほうがいいのではないかという話にもなりかねないので、やはりTTをどれだけ攻略するかということはすごく重要だし、特にコンシューマープロダクツになればなるほど、アジアのTTなら出ないほうがいいという。それぐらいのことだと思います。今はMTだけ。あとでTTやるのだというのだと、追いつけないです。今TTやらないと。
東:これはやはりトップ、日本の本社のトップ、経営陣がきちんと現地で重要なことまで分かって現地もオペレーションしているからうまくいくという。
森辺:だからこれくらいの今日本で600億ぐらいですよね。2000億を超えていないオーナー企業で、トップの判断でぐっといける単一商品ではないですか。そういう会社はすごくアジア向きで、結構成功している会社は単一ブランド、オーナー企業でやはり数百億ぐらいの会社はすごくチャンスだと思います。日本でベタだったとしてもアジア新興国でマーケットを取ってしまったら、のちのちそっちのほうが大きくなるわけで。
東:680億のうち130億がインドネシアで稼ぎだされているのはすごいですよね・
森辺:経済格差を考えたら、日本とインドネシアの経済格差はもっとでしょう。6倍とかそんなのでは済まないので、そう考えるとやはりそういう会社は早いし。でもなかなかそれをトップまで遠い会社はあるわけではないですか、売り上げで何千億とか1兆とかの会社も。そうすると現場が苦労しているというのはすごく僕も分かるので、積極的にご相談には乗っているのですけど、かわいそうです。そんな話は上には言えないというのは多いですから。
東:これだけ徹底的に何が大切かきちっと分かって、きちっと戦略をもって徹底的にやることが出来れば当然日本の会社でもここまで出来るという証明ですよね。
森辺:証明だと思います。やはりアジアなんかは、富裕層をねらっていい業種とねらっていけない業種というのは明確にあるし、コンシューマープロダクツの業界でなぜあえて富裕層いくの?という。何万円の値段設定をしても売れてしまうのだったら良いですけど、言ったって数百円の物を売るわけではないですか、コンシューマープロダクツは。そうしたらやはりいかにミドルからボトムをとるかということがすごく重要になってくるし、あと中国の富裕層とまた東南アジアの富裕層は違うのです。購買行動も趣向も。だから必ずしも、中国ダメで東南アジアに流れてきているのが多いではないですか。そうすると、その流れを東南アジアへ持っていきがちな会社も結構あるのですけど、そうではないのではないかなという思いはあります。
東:分かりました。では、今日はここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。