森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日も引き続き、「インドネシアの小売市場」についてお話をしていきたいと思います。
前回、前々回とね、伝統小売、近代小売のお話をしたり、主要な近代小売とかハラルの話、それから伝統小売が447万店あるよと、79%は伝統小売だよ、金額ベースでみたいな話をちょっとさせてもらって、ポイントをね、インドネシア市場攻略のポイントの話をして。今日はね、伝統小売のこの447万店、正確には447万4,316店舗なんですけどね、2020年度のデータなんですけど、それぐらいあります。これはユーロモニターのデータをベースにしているんですけど。伝統小売ね、これだけあって、これが今後どうなるのかという、近代化していくんでしょと、コンビニになっていくんでしょと、アルファマート、インドマレットがもう3万3,000店舗あるんだから、どんどんそれに変わっていくんだよねということなんですけどもね。
結論から言うと、伝統小売はなくならないと。特にインドネシアの伝統小売は相当なくなりませんというのが結論で。今、伝統小売をやらなければ、市場にはもう参入できませんよということが1つ言えるんだと思います。なので、どの製造業、食品・日用品のメーカーも、先進的なグローバル企業や先進的なローカル企業というのは、先進的な日系企業もそうですけども、伝統小売の攻略に躍起になっているのだと。
なぜなくならないの?ということなんですけどね、まず、じゃあ、コンビニが本当に伝統小売をどんどん食っていくのかということなんですけど、インドマレットとアルファマートの店舗数の出店スピードを過去ずっと見ていくと、やっぱりここ近年になってスピードダウンしているんですよね。当初よりもやっぱりだいぶスピードダウンしているし、言っても桁が2桁違うんですよね。インドマレットが1万8,000店舗で、アルファマートが1万5,000店舗、対して447万店あるので、これが変わっていくというのはやっぱり相当なことなんですよね。仮に、じゃあ、伝統小売10店舗で1店舗だったとしたって1桁違ってくるわけなので、相当大変なことであるということと。
あと、もう1つは、実はここ10年とかのインドネシアの伝統小売、2015年からね、10年じゃないね、5年ぐらい、ここ5年、7年ぐらいを見るとね、だいたい年平均1万5,000店舗ぐらい減っているんですよ。やっぱりそうじゃないかと、伝統小売減っているんじゃないかということなんですけど、これ、1万5,000店舗ぐらい年間減っていったぐらいのスピードではね、全部なくなるのに90年以上かかるんですよね。96年とかかかるわけですよ。じゃあ、仮に倍のスピードで減っていったとしたって60年ぐらいかかるわけなので、基本的に60年かかるということは、この時間軸はすごい重要で、その間に起こり得るデジタル化、いわゆる今もうすでに起こっていますけど、伝統小売がデジタル武装を始めているわけですよね。いろんなテック系の会社が、伝統小売をデジタル化する、デジタル武装すると。顧客の決済もQRコードでできる、お金のやり取りはないと。ディストリビューターも今までは配荷をして、注文取って配荷して、現金回収してみたいなことをやっていたのを、全部決済をデジタル化してしまう。あの汚いお金を触って持って行って途中でなくなったりする、そういうリスクはないわけですよ、少額のお金を集めないといけなかったと。これが中間流通事業者とか、メーカーにとってどれだけ効率的なことか。だから、スマホで頼んでいるわけですよね、もうね、何万店舗レベルでそういう実証実験がもうすでに進んでいると。実証実験というか、実験じゃないですよね、もうサービスとして提供されていて、グロシールと言われる問屋さんの仕事が非常に楽になっている。ワルンというのは伝統小売のことを言うんですけど、グロシールという問屋さんがいるんですよ。その問屋さんがだいたい数十店舗ぐらいのワルン、伝統小売に配達をするんですけど、そのグロシールの上にちょっと大きめのディストリビューターがいてみたいな、そういう構造になっているんですよね。もう全員にとって良い事だらけなんですよね。
メーカーにとっての最大のメリットは、今、インドネシアのどの地域のどのエリアのどの伝統小売で、何がどれぐらい注文されているかというのがすべて手にとってデジタルで分かるというね、画期的な仕組みで、こんなすごい話ないですよね。だから、メーカーにとっても、いや別に、伝統小売は今まで邪魔くさかったけど、細かくてたくさんあって、いやいや、逆に全然いいじゃないと、コンビニよりいいのかもみたいな。
一方で消費者にとってどうかと言うと、数百メーターおきにあるコンビニよりも数十メーターおき、数メーターおきと、家の下にある伝統小売のほうが圧倒的に便利だったりするわけですよね。しかも、ばら売りしている。われわれの駄菓子屋の感覚とはもうね、絶対違うんですよ、伝統小売って。駄菓子屋は、コンビニのほうが便利だからどんどん淘汰されていったし、結局、なぜ日本の小売が近代化していったかと言ったらね、その他のインフラに秘密があって、小売単体では実は近代化なんて絶対なし得なくて、基本的なインフラ、ガス・水道・電気とかね、もっと言うと道路、高速道路、日本全国津々浦々高速道路伸びていて、物流が最適化されたから小売が近代化できたという、そういう背景があるわけですよ、日本は。でも、じゃあ、インドネシアの国の開発計画とかを見てみると、2050年までの開発計画を見たときに、道路が津々浦々伸びるかと言ったら、伸びないわけですよ。アスファルトを敷かれていない道路もいっぱいあるわけですよね。高速道路、そんなに伸びていかないわけですよ。フェリーで移動しないといけないという島国事情もあるわけですよね。そうなってきたときに、本当に、じゃあ、ここ10年20年で伝統小売が消えるのかと言ったらね、絶対消えない。そういうことを考えると、やっぱり伝統小売ってものすごく重要でね。
デジタル化したって、どんどんデジタル化していることによって伝統小売は生まれ変わると言ったほうがいいんですよね。だから、やっぱりすごく重要で。結構ね、こういうことを言った人がこの10年の中で何人かいるんですけど、「伝統小売が近代化してから行けばいいじゃん」と。でも、そうはならないということがここ近年確実になってきている。僕は昔からね、「伝統小売は生き残りますよ」という仮説を持っていたんですけど、ここコロナ禍でそれが本当に確信に結構変わってきているという、そんな状態。
あとね、政府の支援がね、すごく伝統小売、いわゆる中小事業者ですよね、日本でも中小企業に政府は支援しましたけど、これ、地域の役人とか政府、政府だとしたらね、票を取れるので、数が多いわけですよ。伝統小売447万店に何世帯、447万店世帯あって、そこに何人の人たちが有権者がぶら下がってると言ったら、平均ね、インドネシアは子ども多いですから、人口が多いですから、じゃあ、平均4人加わったら2,000万人ですよ、2,000万人。だから、やっぱり当然政府も支援するし、そういう背景からも伝統小売はなくなりませんよというお話で、インドネシア、今日で終わりたいと思います。次回はね、フィリピンをやっていきたいと思います。
それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。