森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日も引き続き、フィリピンの小売市場についてお話をしていきたいなというふうに思います。過去3回にわたって小売市場の規模のお話であったり、近代小売と財閥の関係みたいな、伝統小売、80万店の伝統小売、それからVIPの中で、ベトナム、インドネシア、フィリピンの中では最も近代化が進んでいる市場であるというようなお話含めてさせていただいたという中で、近代小売とね、伝統小売の密接な関係みたいなところについて今日はお話したいなというふうに思うんですが…。
どこの国でもそうですけど、伝統小売への配荷を伸ばすには、まず近代小売でそれなりに目立った存在になるということが非常に重要ですよと。なぜならば、伝統小売のオーナーは近代小売での売れ筋でない限り取り扱いをしないから、ということをこの番組でもさんざん申し上げてきたと思います。その中で言うと、今までお話した通り、前回前々回お話した通り、主要3大小売のピュアゴールド、SM、ロビンソンズでそれなりに目立つ存在になるということが大変重要ですよというのが1つで。
中でもピュアゴールドとアルファマートという、このコンビニですね、アルファマート、2番目に大きいコンビニ、インドネシアのコンビニがフィリピンに出てきてますけども、この2つの小売でどれだけ目立つかということが、伝統小売をやる上で非常に重要で。近代小売と伝統小売の密接な関係ということでお話を今日しますというふうに言いましたけどもね、どういうことかと言うと、伝統小売の仕入れがフィリピンは非常に面白くて、近代小売から行われているんですよね。「えっ、どういうこと?」って、たぶん皆さん、今思ったんじゃないかなと思うんですけど、日本だと駄菓子屋がイオンから仕入れてくるみたいな、セブンイレブン、ローソンから商品を仕入れるみたいなね、普通に一般のお客さんと一緒に並んで買って仕入れるみたいな、そういう感覚ですよね。まさにそういう状況になっていて。日本で言うと、いわゆるコストコみたいなね、業販向けのスーパー、会員制スーパーみたいな、これはS&Rと言ったかな、フィリピンにもあるんですよ。そこみたいなものなんですけど、まあまあ、そことはちょっとね、ピュアゴールドなんかがやっているサービスというのは違っていて。結局、フィリピンの近代小売は、伝統小売との共存が重要だと思っているわけなんですよね。伝統小売はなくなるとも思ってないし、なくなってほしいとも思ってないと。VIPの中で最も伝統小売が行政の支援を受けた、コロナ禍で支援を受けたというのがフィリピンだったわけなんですけど。実はコロナ禍で支援を受けて、伝統小売の数が増えてますよと、万単位で増えてますよというね、そんな情報も一部報道されていたりします。
そんな中でどういうことかと言うと、ピュアゴールドなんかは、例えばレジが16個とかってレジがあったら、8個は一般コンシューマ向け、消費者向け、残りの8個は伝統小売のオーナーさん向けのレジになっていて、「For Whole Sellers」と書いてあるんですよね、8レーンから16レーンまでみたいな。棚もね、伝統小売のオーナーさん向けの商品だけが置いてあるような棚が用意されているピュアゴールドの大きな店舗とかもあるわけなんですよね。
どういうことかと言うと、商品が、例えば小分けになっているものがぶわーっと20個とか袋に入っていたりとか、「伝統小売の最大のメリットって何?消費者にとって何?」と言ったら、「すぐ買える」とか、そういうメリットもそうなんですけど、「今使いたい分だけを買える」ということが伝統小売の最大のメリットなんですよね。
例えば、頭痛薬でも、24錠を、いつ使うか分からないものを、今買いたくないんだと。今買いたいのは今のこの頭痛を治すための2錠なんだみたいなね。お菓子も小袋に入ってちっちゃく入っているし、シャンプーだってワンボトル買いたくないんですと。今日の夜シャンプーしたい、このサシェット1つ買いたいみたいな、このニーズを満たせるかなんですよね。だから、実は伝統小売のほうが近代小売で売ってるよりも、グラム当たりとか1個あたりで言うと高いわけですよ、商品は。10%~20%ぐらい高いわけですよ。それも消費者は分かっていると。それでも今使いたい分だけ、今食べたい分だけが買えるということが重要で。なぜならばフィリピンのような今まさに新興国のような成長過程の国は、個人のキャッシュフローがめちゃめちゃ重要なわけですよ。給料が月2回あるってどういうことか分かるかって、キャッシュフローが重要ということですよね。だから、今使いたい分だけ、仮に高くても、ということなわけですよ。これが非常に重宝されているわけで、その仕入れをピュアゴールドから行っているし、アルファマートも伝統小売向けの支援をやっていて。
フィリピンはね、ASEANの中でも本当に一番近代小売が伝統小売を支援している。この番組でもね、なぜ伝統小売がなくならないのか、デジタル武装して伝統小売がどう変わるのかみたいな話をさんざんいろんなエピソードでやっていると思うので、また振り返って見てもらったらと思いますけど。フィリピンの近代小売はそんな感じで。伝統小売で売れる売れ筋セット20セットみたいなものが売っているわけですよね、ピュアゴールドに。アリンプリンプログラムと言って、伝統小売のオーナー支援をするプログラムもあるし。そうなってくるので、伝統小売はずっと維持され続けるわけですよね。だって、フィリピンなんか80万店あって増え続けているというわけですから。コンビニよりも便利な存在になるみたいなお話なわけで。非常にユニークな商流になっていますよということでございます。なので、この特にピュアゴールドとかね、伝統小売をやるときには、アルファマートみたいなところ、伝統小売の支援をしているところでしっかりと伝統小売向けの商品を展開していくということが非常に重要になってくるということでございます。
こんなところですかね。あと、もう1回ぐらいやろうかな。すみません。以上になります。また次回お会いいたしましょう。