第104回 中途半端な日本企業のポジショニング
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テキスト版
皆さん、こんにちは。スパイダーの森辺です。今日は、中途半端な日本企業のポジショニングについてお話をします。1980年代、90年代、ジャパンアズナンバーワンと呼ばれた時代からだいぶ時が流れ、残念ながら、現代の日本企業は、グローバル市場において中途半端なポジショニングに立たされていると言わざるを得ません。そして、この中途半端なポジショニングを改善しなければ、グローバル市場で大きなパフォーマンスを上げることは難しい。今日は、中途半端な日本企業のポジショニングについて、一緒に学んでいきましょう。この図は、日本企業の中途半端なポジショニングを表している図なんですが、向かって左側、ドリーム・プロダクトというのは、人々が夢にまで見て欲しいと思うような商品。例えば、テスラであったり、例えば、ダイソンであったり、例えば、アイフォンというのがまさにそれにあたる。こういったものというのは、現代、多くが欧米の企業がつくっていると。一方で、この右側、コモディティというのは本当に誰でもつくれると、量産できるようなもの。そういったものは、もうすでに中国や台湾、韓国の企業がつくっていると。そして、日本企業というのは、ドリーム・プロダクトにもなれなければ、コモディティにもなり切れない、中途半端なポジショニング。つまりは高い技術力を駆使して、とても品質の高いものを私どもはつくっていますと。品質が高いものこそすべてと。品質は高いんだけど、ブランド力がないと。値段もそこそこ高いと。そういったものは、日本市場では当然、日本のブランド、日本の企業なので、日本の1億2,700万人には求められてきてはいるんだけれども、それがアジア新興国含めて、欧米市場でも、なかなか求められない中途半端な市場になってしまっている、というのが今であると。
例えば、昔の日本企業は違ったと。ソニーのウォークマンなんてまさにドリーム・プロダクトだし、ソニーのトリニトロンというテレビ、これもまさにドリーム・プロダクトだったと。もともとは欧米がつくっていたものを、日本企業がより小さく、より品質よく、より高い機能でつくっていった。そして、より安くつくっていった。なので、世界中が日本の製品を求めたというのが、80年代、90年代、2000年までの、たぶん、姿だと思うんですよね。それを、その座を中国や韓国、台湾の企業が奪っていって、いろんなものが発明から長期の時間が経って、誰でもつくれるようになったと。そんなさなか、マーケティングを軽視して、ひたすら品質を磨き倒した日本企業が、結局、中途半端なポジショニングに陥ってしまった。ファッションもそうですよね。ファスト・ファッションなのか、ヨーロッパのラグジュアリーブランドなのか。車もそうですよね。日本の車、確かに品質はいい。でも、ドリーム・プロダクトかと言ったら、ドリーム・プロダクトはやっぱりベンツや、ベントレーや、ロールスロイスや、フェラーリになるわけで。コモディティと言うと、韓国製や中国製の車がこれからもたくさん出てくる。これが電気自動車の時代に来たら、言ったら、モーターがベースになるので、エンジンベースではないと。モーターと電池で動くと。そうなってくると、その側になるものというのはブランドが求められるので、ブランドのない車がどれだけ世界の人に乗られるだろうかと。技術よりもブランドとかデザインが重要になってくる、そんな時代になっちゃうと。
そうすると、残念ながら、何に例えても、日本企業というのはどっちにもいかない。例えば、レクサスどうか。レクサス、確かにドリーム・プロダクトなんだけども、そこにベンツやBMWを持ってきちゃったときに、ベントレーやロールスロイスを持ってきたときに、完全なるドリーム・プロダクトかと言われると、そうじゃないと。この辺にやっぱりポジショニングになってしまう。じゃあ、カメラはどうだと。確かに、カメラはすごい、ニコンとキャノン、圧倒的なカメラだと。ただ、ライカという存在があると、本当の意味でのずば抜けたドリーム・プロダクトかと言うと、ドリーム・プロダクトではない。いろんなものをあてがってもなかなかずば抜けてドリーム・プロダクトってないんですよね。時計も、セイコーやシチズン、カシオの時計の性能は圧倒的に高いと。ただ、スイスのラグジュアリーブランドの時計と比べるとどうなのか、と言うとそれも違う。
世界には、日本の企業、昔、ドリーム・プロダクトたくさんつくってきたのに、現在は残念ながら、このドリーム、夢を見るようなプロダクトはなかなか存在していない。一方でコモディティにもなり切れなくて、品質さえよければすべてよし、という考え方をまだ脱ぎ捨てられない企業が多いと。。
世界は、品質や機能は当然求めているんだけども、これだけ競争環境が変わってきて、市場環境が変わってきた現在のグローバル競争では、品質と機能だけじゃだめなんですよね。マーケティング全部を駆使して、ブランドもなければだめだ、デザインもなければだめだ、流通チャネルもなければだめだ、いろんなことがなければ商品というのは評価されてこない。そんな時代において、いまだに品質に執着しすぎている日本企業というのは、まだまだ多いと。
ここを変えていかなければ、なかなか世界で評価されてこない、成功してこないと。これは僕が長く海外で過ごし、海外の人たちと接して感じるんですけども、日本人と比べて、世界の人、世界の人を1つのくくりにするというのはそもそも間違いなんだけども、日本人ほど繊細じゃない。めちゃめちゃいいものなのか、ファスト・ファッションなのか、本当にラグジュアリーブランドなのか、これぐらいの差があるんですよね。ファッションで言うと、日本のデパートの中で売られているようなデパートブランド、世界中の人、誰が欲しがるかと。ラグジュアリーブランドほど知名度もない。けど、ファスト・ファッションほど安くもない。中途半端に高いわけですよね。そうすると、やっぱりそんなものというのは日本人しか着ないと、世界にはなかなか打ってでれないというのは今、アパレル業界でも起きていると。従って、中途半端なポジショニングというものをどう改善できるかというのが今後の日本企業の課題だと思います。
それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。