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第142回 アジア新興国市場 マーケティングの基本プロセスとは その2

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。前回に引き続き、マーケティングの基本プロセスについてお話をします。

前回、「R」というものを説明をしました。簡単におさらいしておくと、マクロ環境、ミクロ環境、SWOT分析が3つで形成されているのが「R」なわけですけども、簡単に解釈をすると、その市場がどんな市場なんだ、儲かる市場なのかというのがマクロ環境分析で。それを可視化していく、儲かる市場なのか否かということを可視化することがマクロ環境分析。そして、ミクロ環境分析というのは、その儲かる市場にどれぐらい脅威になる敵がいるんだということを、敵を可視化するというのがミクロ環境分析だと。そして、SWOT分析というのは、その儲かる市場でも強い敵がいる、そんな市場に自分が出たときに果たして勝てるの?勝てないの?どれぐらい勝てるの?どれぐらい勝てないの?ということを見ていくのがSWOT分析だというお話をしました。

今日は、次のステップ、この「R」までできると、じゃあ、出ようとか、出ないとか、はたまた、ベトナムを最初に出ようと考えていたけど、やっぱりベトナムじゃないね。「R」をやった結果、最初に出るべきはタイだねとか、インドネシアだねとか、フィリピンだねという、国別の進出の優先順位が見えてくるというのがこの「R」ですよね。ここまで来ると、この「R」をやれば、逆に言うと、今、自分たちのこの経営資源では、もう負けがほぼ確定しているので出るべきじゃない。輸出でやるんだ。輸出だったらキャッシュオンデリバリーでリスクはないし、現産現販しちゃ駄目だということが分かるわけで。いわゆる日本企業でよくありがちな、こんな失敗はもう出る前から分かっていたでしょうみたいな進出をしなくて済むわけですよね。何とか行ってから、気合と根性で走りながら学んで駐在員を兵隊のように送り込んで、気合と根性で何とかしろみたいな、そういう話にはならなくなるので、「R」をやると、それは未然に防げる。

じゃあ、次のこの「STP」って何なのかと言うと、これは、自分たちが出たときに、勝てるという判断を「R」でするわけですけど、どれぐらい勝てるかという判断をするんですけど、どれぐらい、今度儲かるんですか、ということをしっかり見ていく。たとえば、「STP」の「S」ってセグメンテーションなんですけど、どんな層に売ったらいいのか。B2Cの場合は、富裕層なのか、中間層なのか、低所得者層なのか。もしくは、年齢はどういう年齢がいいんだと。性別はどうなんだ。はたまた、どの都市のどのエリアに住んでいるような消費者を狙うんだ。もしくは、どういう小売で買い物をするような消費者を狙うんだ。もしくは、どういうものを購入するような、もしくは、どこにどういう意識を持っている人をターゲットにするのかという、こういうものをだいたい4つぐらいのセグメントに分けて狙うところを決めていく。B2Bであれば、これも用途分類で分けるというケースが非常に多いわけですけども、自分たちのつくっている商品が、または部品が、いろんな用途で使われるわけですね。例えば、モバイル、携帯の用途で使われていたり、コンピュータの用途で使われている、何とかの用途で使われている。そうすると、どの用途のセグメントを最初に攻めますか。もしくは、同時に攻めますかという、セグメントを可視化するというのが、このセグメンテーション。セグメントが、もうこのセグメントでまずやるんだということが分かったら、そのセグメントの中のターゲットが一体どこなのかということをより具体的に見ていくというのが、このターゲティングなんですよね。その中でも、具体的にどこを狙うんですか。ここはもう、バイネームで企業名を出していく。このセグメントを攻めると決めたら、そのセグメントに存在している企業を全部バイネームで出していく。これをやると、自分たちが狙おうとしている市場の規模が数字で分かってくるわけですよね。100%獲ったときにこれぐらい、じゃあ、50%獲ったときにはこれぐらいの売上があがる、10%獲ったときにはこれぐらいの売上が上がるということが見えてくるわけですよね。そして、最後のポジショニングというのは、自分たちの立ち位置をどうするんですかと。自分たちは、立ち位置を海外に出て変えるというのはあまりないかもしれないですけど、基本的には「R」で競合のポジショニングを見ているわけなので、そのポジショニングを踏まえて自分たちはどういうポジショニングを取るんだ。自分たちは、高品質高機能で高いです。非常に値段が高い。ただ、高品質なんだというポジショニングを取るのか、それとも、自分たちは高品質高機能なんだけども、非常にリーズナブルな価格で出していますよというポジショニングを取るのか。それは企業によってポジショニングはさまざまだと思います。こういったポジショニングをもう1回再設定するというのが、この「STP」の最後のポジショニングなわけですよね。この「STP」までできると、いわゆる出ようとしている国がどういう市場で、そこにはどんな敵がいて、自分たちが出るべきか、出ないべきかということが分かって、そして、出るという判断をしたときに、自分たちが最初に攻めるセグメントがどこで、そのセグメントにはどれぐらいの企業がいて、もしくは、消費者がいて、それを獲ったらどれぐらいの売上になるのかということが分かり、そして、そのターゲットに対して自分たちはどういうポジショニングを取るべきなのかということがほぼほぼ決まっていくわけですよね。ここまでできると、本当に日本でやっているような4P、「MM」、マーケティングミックスにより近づいていくわけですけども。この「MM」、プロダクト、プライス、プレイス、プロモーション、これに関しては、何が、どういう商品を、いくらで、そして、どういう場所で売って、どういうふうに知ってもらうんですか、というのがおそらく多くの参考書の解釈ですよね。4P、「MM」の。自分たちがどういう商品を売るんだ。そして、それはどういう金額で売るんだ、価格で売るんだ。そして、それをどういう流通を通じて売っていくんだ。最後の、その商品を知ってもらうためにはどういうプロモーションを打っていくんだという、こういう解釈。でも、これをアジア新興国でやろうと思ったときには、少し解釈を変えないといけない。自分たちが売りたいものを売れればそれが一番なんですけども、やっぱりアジア新興国って、ニューマーケット、ニューマインドセットという言葉をある新興国の学者が言っているんですが。私の友人でもある南アフリカのプレトリア大学の元教壇に立っていたタシミア先生が言っていますけども、そういう本も書いていますけども、ニューマーケット、ニューマインドセットという。要は、何を言いたいかと言うと、「新しい市場では新しいマインドセットを持て」ということなんですよね。アジア新興国市場って、われわれの豊かな日本とはものすごく大きく違う市場。その市場において、自分たちの商品、「日本で実績のある商品これなんです。どうですか、これ、品質いいですよ」、ドーンって出していくのではなくて、その市場では一体何が求められているのかということからゼロベースで考えていく。彼らは、いくらだったら賄えるんだと。この賄えるという言葉が非常に重要で、賄うというのは自分たちのライフスタイルとか生活に取り込めるということなので、特に消費財メーカーなんかは、買うなんていうのは100円200円10円20円のものですから、1回や2回は買えるんですよね。いかに、彼らが自分たちの本当に日々の生活に取り込む、賄っていけるかということを考えると、そういう値段で出していけるか。企業もそうです、B2Bも。ユーザー企業が自分たちの経済活動の中で、それを賄っていかなきゃいけない。1回買えるじゃ意味がないんです。繰り返し買ってもらわないと意味がない。そうなってくると、いくらなら賄えるのか、そして、彼らはどこだったら買いやすいんですか。代理店のほうがいいんですか、ネットのほうがいいんですか。代理店もたくさんあったほうがいいんですか。日本の多くの企業の場合は、管理が大変だから、自社内競合が起きたら困るから、1カ国1ディストリビューター制、理由なき1カ国1ディストリビューター制、1カ国1代理店制を引いていますけども、欧米の先進的な企業でそうやっている経営、企業というのはほとんどない。いくつか、複数でエリアを分けて使っている。こういう、どこなら買いやすいのか。要は、ユーザー、消費者目線で考えていく。そして、どうやったら選ばれるのか。世界中の企業が今、アジア新興国市場を狙っていて、B2Cであれば小売で売るということが基本的になるんですけど、小売で売るとなるとチョコはチョコのレーンに、ドン・キホーテでない限り、全部並ぶわけですよね。そうすると、競合とさらされるということになったときに、アジアの消費者にとって、1ドルといったら大変貴重な1ドル。この1ドルを使って、まずかった、失敗した、捨てる、こういう感覚はないので、いかに失敗しないかということが重要。そうすると、知らないもの、そんなものに手は出せないわけですよね。そうすると、消費者にどうやって知ってもらうかということをやらないといけない。B2Bに関しても、ユーザー企業に、これがどれだけ品質がいいものなのかということを知ってもらう。知ってもらわないと、やっぱりなかなか買えない。「メイドインジャパンです。日本製です。品質いいんです」だけじゃもう、なかなかものは売れないという時代になってきています。このようにマーケティングの基本プロセスをしっかり詰めれば、皆さんの参入戦略の制度は格段に上がると思います。今一度、皆さんの戦略とこのマーケティングの基本プロセスを比べてみてください。
それでは、また次回お会いいたしましょう。