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第152回 アジア新興国の近代小売と伝統小売 その1

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、アジア新興国における近代小売と伝統小売についてお話をしていきたいと思います。今回を含めて3回ぐらいでお話を分けてできればなというふうに思います。

まずこの近代小売と伝統小売ですが、まず定義から整理をしていきたいんですが、近代小売というのは、われわれが日本でも慣れ親しんでいる、いわゆるデパートとかハイパーマーケット、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストアなどのいわゆる近代的な小売のことを指します。日本の場合、伝統小売というのはほぼ存在せずに、ほぼほぼ近代小売なので、敢えて小売を近代的な小売とか伝統的な小売って呼ぶことはまずないんですが、新興国と呼ばれるところには必ずこの伝統小売という日本人にとっては未知な小売が存在するので、わざわざ近代的な小売を近代小売とか、伝統的な小売は伝統小売というふうに分けて定義をしているというのが実態でございます。

近代小売というのは、そういう近代的な小売で、一方で伝統小売というのがいわゆるパパママショップですよね。日本で言うところの駄菓子屋とかそういったものにイメージは近いのかもしれないんですが、父ちゃん母ちゃんがやっているような、横2m×奥行2mぐらいの小さいものから、横3m×奥行3mぐらいの中ぐらい、4m×4mぐらいの比較的大きいものまでいろいろあるんですが、伝統小売というのはそういったパパママショップを指していると。なぜアジア新興国に行くと伝統小売の存在が大きくなってくるかと言うと、伝統小売というものが金額ベースで小売を通じていわゆるFMCG、消費財というのは流通していくわけですけども、その小売を通じて流通していく金額ベースで伝統小売が8割を占めていたりするんですよね、まだまだ市場的に。近代小売を通じての金額ベースの市場というのがまだ2割ぐらいだというような状態で、伝統小売が非常に重要になってくるので伝統小売の存在感がアジア新興国、まあ、新興国と呼ばれるところでは非常に高い。近代小売というのはそういうものですよと。一方で英語で定義をすると、近代小売というのはModern Tradeといって、略してMT。なので、専門家なんかとお話をしているときにはMT、MTと。Traditional TradeはTTというふうに呼びますけども、そんなふうに言ったりする。

あと、もう1つ間違いやすいのがGeneral Tradeというのがあるんですけども、略してGTと呼びますが、これはModern TradeとTraditional Tradeの間に入るTT、General Tradeというふうに使われる場合もあります。近代的じゃない、でも、Traditionalなパパママショップでもないんだと。いわゆるPOSレジは入れていないんだけどもグローサリーベース。言い忘れましたけど、近代小売の最大のポイントは、僕はPOSレジが入っている、いわゆるシステムが入っている小売は全部近代というふうに定義をしていて、入っていないものをGTとかTTというふうに定義をしています。近代ではないんだけども、TTでもないというような、そういう小売が存在する、そういったものをGTと、General Tradeというふうに言うケースもありますし、また、国によってはModern Tradeが自分たちにとっては最もGeneralなTradeなのでGTというふうに定義しているところもあるし、逆に、TTが自分たちによってよりGeneralなTradeだという国はTTをGTというふうに定義している国も存在するというのが実態でございます。

この新興国と言われるところを攻めれば攻めるほど、このModern TradeとTraditional Trade、MTとTTというのが非常に重要になってくるんですが、消費者というのはこのいずれから商品を買うんですよね、オフラインの場合は。いわゆる食品・飲料・菓子・日用品等の消費財の場合、まだまだオンラインで購入するというのは、新興国の場合だと、今現時点では非常に割合としては少ないので、中国を除いてはですね、中国はもう新興国ではないので、先進国なので、中国を除くと非常に少ないので、やっぱりオフラインでものは購買される。そのオフラインで購買をしていく中で近代小売というのはマストなんだけども、伝統小売も両方やらないと、なかなか収益が立たない。なぜならば、先ほど言ったように比率が圧倒的に8割が伝統小売だから。

一方で、日本企業が弱いのもこの伝統小売で、小売に置く、商品を小売に置く、近代小売に置く、伝統小売に置くって、これ、置くためにはディストリビューション・チャネルをつくっていかないといけない。このディストリビューション・チャネルをつくることに、なかなか日本の消費財メーカーは苦戦していて、特に近代小売は自分たちでつくれるんだけども、伝統小売がなかなか難しいというのが今の現状で。国によっては、例えば、ベトナムなんていうのは近代小売が2,000店舗しかない。2,000店舗しかない国で、週販どれだけ商品を売っても、50万店存在する伝統小売、ベトナムには50万店の伝統小売が存在するんですが、これを攻略しないと、マーケットシェアを獲るとか、売上を上げる、利益を出すということはおろか、現地法人を出してしまったら、現地法人の固定費すら賄えない状態になってしまうんですよね。このように非常に伝統小売の存在が非常に重要で、また、これはよくありがちな誤解なんですが、富裕層は近代小売で商品を買って、貧困層が伝統小売で商品を買うというような誤解を持っている方も、認識をしている方も多いんですけども、これ全く違って、富裕層も貧困層も両方使うんですよね。近代小売で買うケースと伝統小売で買うケースというのが両方あって、伝統小売ってわれわれで言うところのコンビニエンスストアに近いような存在なので、両方やっぱり攻略をしないといけない。

また、近代小売で売られているもののパッケージ形態と伝統小売で売られているもののパッケージ形態というのは全然違って。伝統小売というのはばら売りが基本なんですよね。いかに今買いたいものを今使いたい分だけ買うか。今、チョコレート10個は要らない。でも、1個食べたいんだ。その1個売りを買う。たばこも1本吸いたいから吸うと。これに関してはまた改めてお話をしますけど、アジア新興国の市場では個人のキャッシュフローが何よりも重要。1個単価、1グラム単価は、実は伝統小売のほうが圧倒的に高いのに、伝統小売がばら売りをされている理由というのは、彼らは、例えば、薬で例えるのが分かりやすいんですけど、われわれ日本人だと、頭が痛いと24錠入りの頭痛薬を買うわけなんですけども、今2錠飲んで次の残りの22錠はいつ使うか分からないんだけども、2,000円ぐらい出して頭痛薬を買いますと。でも、こんなキャッシュフローは新興国の人たちは持ち合わせていないわけですよね。なので、彼らにとっては、今使いたい分だけを買えるということが非常に重要で。伝統小売は今使いたい分を買うために存在している市場と言っても過言ではないぐらいの市場です。

この伝統小売と近代小売なんですが、徐々に近代化は進んでいます。近代化は進んでいるんですけども、じゃあ、向こう20年30年で伝統小売が完全に駆逐されるかと言うと、私はなかなかそれは考えにくいと思っていて、両方攻略をしないといけない。そしてまた、伝統小売というのは、ものが置けるスペースが非常に限られているので、その店のオーナーは、近代小売で売れている売れ筋商品だけを伝統小売でばらにして売りたがるという傾向があるので、基本、近代小売は絶対にやらないといけない。けど、近代小売だけやっていたんじゃ、先ほどのベトナムの例で申し上げた通り2,000店舗しかないわけですから、近代小売が。2,000店舗だけでやっていても絶対に商売は拡大しない。そうすると、伝統小売も攻略しないといけないという。近代と伝統、両方やらないといけない、これが新興国の最大の特徴で、日本企業の問題点は、まずは近代からということで近代に入るんですけど、なかなかその後、伝統小売での戦略が描けずに伝統小売で浸透せずマーケットシェアが獲れないというのが、今の日本の消費財メーカーの課題だと思います。

ちょっと時間がなかなかもうなくなってきちゃったので、今日はこれぐらいにしますが、また次回、引き続き、今日の近代小売と伝統小売のお話をしていきたいと思います。それでは、また次回お会いいたしましょう。