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第154回 アジア新興国の近代小売と伝統小売 その3

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も、引き続き、アジア新興国の近代小売と伝統小売ということでお話をしていきたいと思います。

今回は、実際にASEANの5カ国、シンガポールはもうほぼ100%近代小売なので、残る5カ国を見たときに、どれぐらいの近代小売があるのかということについてお話をしていきたいんですが、それがこの図なんですよね。ASEANで最も近代小売が少ない国がベトナムで2,000店舗。ベトナムにはたった2,000店舗しか近代小売がないんですよね。一方で、伝統小売は50万店存在して、中でも食品が置けるような伝統小売というのは30万店存在している。エースコックさん、ベトナムで50%のシェアを持っているエースコックなんかはこの30万店をほぼ100%に近いかたちで配荷できているというのがこの50%というシェアを持っている源になっているわけなんですけど、そんな市場であると。2,000店舗しか近代小売がなかったら、もうこれ、週販どれだけ売ったって、現法を持ってしまったら、近代小売だけやっていたら完全に儲けるということは難しいですよね。また、マーケットシェアを獲るということも難しい。今、2,000店舗しかない、近代小売がないものが、じゃあ、向こう3年で2万店舗になるかと言ったら、絶対あり得ない。セブンイレブンの店舗の増加数の最も増加の著しい年でもそんなスピードでは伸びないので、そうすると、向こう何年もしくは何十年にわたって伝統小売をやっていくということはベトナムでは非常に重要で。

ここで少しお話をしたいんですが、小売の近代化って何が要因で起きるかと言うと、小売だけが単体で近代化するんじゃないんですよね。その他のインフラが同時並行的に近代化することによって小売も近代化すると。日本で小売流通とか消費財なんかに関わっている人たちは、アジア新興国もそのうち近代化するんじゃないか、小売がと。その考え方の背景には何があるかと言うと、日本の小売の近代化が背景にあるんですよね。日本は小売の近代化が劇的に進んだ。なぜならば、日本の経済成長は奇跡と言われる経済成長を遂げていて、さらに一番大きかったのは物流ですよね。高速道路が整備されて、鉄道が整備されて、北海道から沖縄まで、基本的には日本の中でもうどこでも津々浦々配荷ができるような状態になって。ガス、水道、電気の基本的なインフラも当然急速に近代化した。これら、基本的なインフラのうえに乗っかっている小売が、基本インフラが近代化したから初めて小売も近代化できるというのが実際で。じゃあ、ベトナムに行ってください。ベトナムのホーチミン、ハノイ、ダナンを見たときに、これから10年15年で日本のような市場になるかと言うと、なかなかそれは想像しにくい。やっぱり時間がかかる。

一方で、ASEANの中で最も近代小売が多い国というのは、この図の通り、インドネシアで3万5,000店舗で、前回のこの番組でその2でもお話をしましたが、インドネシアの3万5,000店舗のうちの3万店はアルファマートやインドマレットという、インドネシア系のコンビニエンスストアが占めていると。あのセブンイレブンまでもが撤退せざるを得なかった、非常に強い2社のコンビニエンスストア。この2社が3万店舗も占めているということは、この2社の小売の交渉力というのはものすごく強いということが容易に理解ができる。また、さらにインドネシアはハラルの国なので、ハラルがないとなかなかこの2社は商品を置きたがらないという実態もある。そうすると、伝統小売というのは重要。もちろん、伝統小売でもハラルは非常に重要になってくるんですが、こういう状態です。

そのほか、マレーシアを見ても6,500店舗。タイを見ても1万3,000店舗。タイの1万3,000店舗のうちの1万店はセブンイレブンなので、タイぐらいの近代的な小売、近代小売の比率がもう5割を超えていますから、タイだと、CPグループがセブンイレブンをやっているんですが、CPとしっかり話をつけられれば、1万店舗のセブンイレブンに配荷ができれば、なかなかいいところまでマーケットシェアはいくし、利益もしっかり出る。現法を仮に持ったとしても出るんじゃないかなというふうに思います。
最後、フィリピンも6,500店舗。フィリピンの伝統小売の数は80万店。あ、インドネシアは300万店存在するので、やっぱりこの近代小売を攻めるということと伝統小売を攻めるということを両方やらないといけない。この番組のその1、その2でも説明しました通り、伝統小売のパパママのオーナーは、近代小売で売れている売れ筋の商品しか置きたがらない。なぜならば、彼らの店舗にはそんなにたくさんの商品を置けるスペースというのはないので、売れ筋を売りたがるということと、売るためにはばら売りをしていかないといけない。伝統小売はばら売りをしなきゃいけないということが1つです。あと、高級品や富裕層をターゲットにしたものは売れません。かといって、伝統小売というのは富裕層が買い物をしない場所なのかと言うと、そうじゃなくて、富裕層も中間層も貧困層も、近代小売も伝統小売も両方使います。ただ、伝統小売というのは生活に必要な食品・日用品を買う場であって、高級品を買う場でないのでそういうものは売れませんよと。化粧品は安価なものじゃないと売れないし、高級な化粧品は百貨店のデパートでないと売れないですよということで言っていますけども、そういうことですと。

それ以外に近代小売と伝統小売、強いて言うのであれば、その1の図を出してもらって、それぞれの定義の話をしましたと。近代小売というのはこういうものですよ、伝統小売というのはこういうものですよ、General Trade、GTの存在の話もその1でさせてもらったと思います。それぞれの定義と、消費者のそれぞれの小売に対して何を望んでいるか、必ずしも、近代小売、伝統小売と分けるのではなくて、わざわざ分けられているのは、伝統小売の存在が非常に重要だから分けられているだけであって、両方重要ですよと。その2のスライドを出してもらって、なぜならば、これだけまだ比率が、特に先進ASEANは5割ぐらいまでいっていますけど、新興ASEAN、ベトナム、インドネシア、フィリピンに関しては、まだまだ2割ぐらいしか近代化が進んでいないので、伝統小売というのは、向こう30年ぐらい消えないですよと。また、そこで苦労したとしても、伝統小売の攻略に苦労したとしてもメコン経済圏が残っている、ミャンマー、カンボジア、ラオスが残っている、その後、インドが残っていると。インドなんてまだ近代小売の比率2%いってないですからね。そして、伝統小売の店舗数はもう測定不能というような市場ですと。これ、アフリカもそうですね。アフリカもやっぱり伝統小売が非常に多くて、新興国と呼ばれるところには必ず伝統小売が存在して、ここでの影響力を持つことが将来小売が近代化したときに引き続き影響力を持つことなんですよね。なぜコカ・コーラが山奥のへき地の伝統小売しかないところまで誰よりも先に商品の配荷をしに行くのかというのはまさにそういうことなので、いかにそういう戦いをしていくかということが消費財にとっては求められるという、そんなお話ですよね。そして、その3で実際に近代小売どれぐらいの店舗数があるの?と。このその3のスライドに切り替えてもらって、この店舗数を見たら、これだけの店舗数で商売してもやっぱりなかなか儲からないねというのは、容易に想像ができると思いますので。いかに近代小売と伝統小売を両方狙うかということが、アジアにかかわらず、この新興国と言われるところでは大変重要になってくると。そして、この小売の近代化というのは、なかなかすぐには起きないですよと。いろんなインフラが近代化して初めてその上に乗っている小売も近代化するので、あらゆる経済インフラが近代化しないと、小売だけが近代化していくものではないと。なので、両方やる必要があるんだというお話でした。

今回はこれぐらいにしたいと思います。それでは、また次回お会いいたしましょう。