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第157回 アジア新興国市場 正しいマーケティング・ミックス(4P)

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、前回に引き続き、マーケティング・ミックス4Pのお話をしたいんですが、前回、日本の消費財メーカーの間違ったマーケティング・ミックス4Pの話をしましたが、今回は、正しいマーケティング・ミックスって一体どういうものなの?ということでお話をしたいと思います。消費財メーカーを題材に今回もお話をしていますが、これはB2Bでも同じように置き換えて考えてもらったら結構なので、皆さんが部品メーカーとか装置メーカー、設備メーカー、B2Bのメーカーであれば、サービス業でもそうですけども、自分たちの事業に置き換えて今から説明することを考えてもらえればと思います。

「正しいマーケティング・ミックスってどういうものなのか?」ということで、今回は消費財でお話をしますが、消費財メーカーにとって一番重要なのは何かと言うと、ターゲット、消費者なわけですよね。参入戦略とか再参入戦略上、最も重要なのは、僕は「ターゲティング」と「4P」だと思っていて。

この最も重要なターゲット、特にアジア新興国の場合、中間層が絶対に数の原理から言って重要なんですよ。なぜならば、消費財というものは100円200円のものを売っていて、いかにたくさんの人に、いかに早い頻度で、いかに繰り返し、いかに永遠に買い続けてもらうかということが最もビジネスモデル上、重要なわけですよね。これが、1本1万円や5,000円化粧水を売っているんだったら全く話は違うし、1箱5,000円1万円するチョコレートを売っているんだったら、また話も違う。ゴディバだと言うんだったら話が違うし、1本何万円もするモンブランのペンだって言うんだったら、また話は違うけども。こと消費財と言うんであれば、もう絶対にアジア新興国で重要なのは中間層。これはアジア新興国に限らず世界中で中間層なんですよね。数なんですよね。数と頻度と継続性が非常に消費財メーカーにとっては重要。そうすると、ターゲットは中間層。なぜならば一番数が多いから。

そして、商品というのは、日本で実績のある商品とか日本で売れていた商品とか日本人が好きな商品ではなくて、アジア新興国の中間層、ターゲットにしている中間層が求める商品をやっぱり売らないといけない。自分たちがプレミアムとかプレミアムじゃないとかどうでもよくて、アジア中間層の人たちが何を求めているんだということをゼロベースで考える。結果として、日本で成功したものが投入されるにしろ、やっぱり考え方の基本としてはアジア新興国の人が何を求めているのかということをゼロベースで考えるということがProductでは重要だし。
Priceに関して言うと、中間層が賄える価格で売らないといけない。これ、自分たちの商品はいい原材料を使って高い技術でつくっているから、プレミアムだから高くていいんだと、こんなことじゃ絶対駄目で。賄えるというのがすごくミソで。消費財なんていうのは、アジア新興国でも1回や2回は買うことができるんですよね。3回4回買うこともできるかもしれない。でも、先ほど言ったように、消費財のビジネスは、いかにたくさんの人に、いかに繰り返し、いかに永遠に買ってもらわなきゃいけないということは、長い期間買わせるということは、賄ってもらわないといけないわけですよね。無理して買うということは消費財だったらできるわけですよね。これ、ベンツや何やと言うんだったら無理して買えないし、ハリーウィンストンのダイヤだ、パテックの時計だって、これは無理して買うこともできないけども、消費財というものは無理すれば買えるので、賄えるか否かというPricingというものが非常に重要で、そこになかなか至っていないので、結局、ローカルで競争すると負けてしまうというのが1つ。

また、Place、これ中間層が買いやすい売り場に並べるということが非常に重要なんだけども、基本的には近代小売が中心になってしまって、伝統小売に配荷するためのディストリビューション・チャネルに投資をしないので、なかなか中間層が買いやすい売り場になっていない。アジア新興国では、中間層は近代小売でも買い物をするけども、日々、伝統小売でも買い物をするんですよね。われわれにとってコンビニのような存在が近代小売や伝統小売なわけなので、いかに伝統小売も含めた売り場への配荷を実現するかということが重要で、それを実現するための販売チャネルづくりが重要。中間層が買いやすい売り場に並べるということは、近代小売と伝統小売、両方やりなさいということですね。

そして、また、Promotionに関しては、中間層が選びたくなるような仕掛けをするということが重要で、これは非常に大きな誤解なんですが、店舗に並べることと、並べたものを消費者が選ぶことというのは全く別次元の話で。並べるというのはチャネルへの投資なんですよね。物理的にディストリビューション・チャネルをしっかり整備すれば、並ぶということは並ぶんですよ。じゃあ、並んだ後、消費者が、並ぶということはドン・キホーテに並ばない限り、基本的にはカテゴリーごとにまとめて並べられる。チョコはチョコ、クッキーはクッキー、洗剤は洗剤、何とかは何とかってカテゴリーごとに並べられる、競合の商品と隣り合わせに並ぶわけですよね。そのときに消費者があなたの会社の商品を選ぶか否かというのは、やっぱりPromotionの仕掛けの技で。いかにPromotionに投資をするかということが、選ぶ、競合の商品は5回に1回、でも、自分たちの商品は3回に1回選んでもらう、2回に1回選んでもらう、こういった競争が非常に重要で。これにしっかり投資をしないといけない。

また、これはPromotionだけ投資しても、結局、後が続かない、砂漠に水をまくようなものなので、ProductもPrice、Placeも整って初めてPromotionに投資するからすべての効果が発揮されるというのが非常に重要で。これがやっぱり4つのPが最適化されるということが非常に重要。アジア新興国の人たちはケチなのではなくて、1ドルの価値が非常に重たいんですよね。われわれは1ドルで何か新しい商品、知らない商品、Promotionしてもいないので初めて小売で見た商品を買って食べてまずかったら捨てて2度と買わない、これで済むわけなんですけども。彼らはこの大切な1ドルを使って買ったものがまずいから捨てるなんていうことはできなくて、そして、それをまたずっと食べないといけないわけですよね。なので、失敗できないんですよね。われわれみたいに簡単に失敗できない。なので、口コミが非常に重要。経験者にどうだったか聞く。美味しかった。よし、じゃあそれを買おう。なので、1ドルの価値が非常に重たいということと。あと、それだけ重たいから1度失敗すると再参入する、敗者復活戦がなかなかしにくいですよということも肝に銘じておかないといけない。これは対消費者に対してもそうだし、対小売に対してもそう。

なので、正しいマーケティング・ミックス4Pというのは、整理をすると、Product、いかに中間層が求める商品を、いかに中間層が賄える価格で、いかに中間層が買いやすい売り場に並べ、いかに中間層が選びたくなる仕掛けをするかということが大変重要になります。

それでは今日はこれぐらいにして、また次回、間違った4Pマーケティング・ミックスと、正しい4Pマーケティング・ミックスの整理、まとめのお話をしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。