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第228回 ASEANの伝統小売で売れるものと売れないもの(消費財)

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、ASEAN市場、伝統小売で売れるものと売れないものについてお話をしていきたいと思います。
日本の消費財メーカーにとってこの伝統小売、ASEANの伝統小売は大変重要になっております。ASEAN市場をターゲットにした場合にいかに自分たちの商品を伝統小売で売っていくかということは大変重要で。しかし、この伝統小売は、小売の性質上、伝統小売では売れないものと売れるものというのが存在して、ここをしっかり理解をしておけば、自分たちの持っている商品の中でこういうものは売れるし、こういうものは売れない、もしくは自分たちの商品はこうしないと売れない、こう変えないと売れないということが明確になっていく。多くの日本企業は伝統小売を攻略しなければいけない市場なのに、にもかかわらず伝統小売に合っていない商品形態になっていたりするわけなんですよね。ここを変えていかないと伝統小売で商品を売るということはなかなか難しくて。今日は伝統小売で売れるものと売れないもの、こういったことを一緒に学んでいきたいと思います。

まず、「伝統小売って何なんだ?」というところからなんですが、この番組の視聴者はおそらくほとんど分かっていると思いますが、伝統小売の画像を出していただいて。この図のとおり、いわゆるわれわれが日本で慣れ親しんでいるコンビニとかスーパーとかハイパーとかデパート、こういったものは近代小売と言われていて、定義としてはPOSレジが置いてあるか、ないか・あるかだと思っていただいたら結構だと思うんですが、いわゆる一般的な近代的な小売であると。これをModern Tradeと呼ぶんですけど、MTというふうに言います。一方で伝統小売というのは、この図のとおり、いわゆる昔ながらのパパママショップ、日本で言うと一昔前の駄菓子屋みたいな、そういうお店ですけども、伝統小売、Traditional TradeでTTと。国によってはGeneral Trade、GTというふうに言って、General、一般的な小売ということで、このGTが伝統小売だったり、近代小売だったりという、国によってどっちの定義にするかというのは、その人にとってのGeneralが何なのかということなのでちょっと変わってくるんですが、GTという表現を使う国も中にはあるし。またMTでもないしTTでもない、ちょうど真ん中のGroceryみたいな、POSレジは入ってないし、そんなに近代化していないので近代小売じゃないんだけども、パパママショップほどTraditionalでもないので間のGTみたいな扱い方をしている国もあるので。まあまあ、MT、GT、TTというふうに3つの本当はカテゴリーがあるんですが、MT、TTというふうに今回は解釈をしていただければと思います。

実際にもうちょっと写真を見ていただくと、こんな感じのところですよね。何枚か写真があるのでちょっと見ていただいて。こういう、国によっては結構治安の悪い国だと網が張ってあって、小さな窓口からおじさんやおばさんが商品を受け渡したりとか。なので、南アフリカとかまで行くともう鉄格子なんですけど。この写真の中で網があるのは、これはフィリピンですね、フィリピンもなかなか物騒な地域もあるので、そういったところはこうなっていたりとかします。こんなのがTTですよと。

もう1つ、グラフを出しますけども、これは緑がTT、青がMTということで。インドとか、今回、ASEANじゃない中国とかも入っていますけど、参考までに載せていますけども、近代小売と伝統小売の比率です。どれぐらい比率が違うのかということで、VIP、ベトナム、インドネシア、フィリピンなんかを見てもらうと、13%、15%、22%ということでまだまだ2割ぐらいなんですよね、近代小売の比率って。大半が伝統小売で構成されている。これは金額ベースなので、小売を通じて流通する消費財の13%、僅か13%だけが近代小売なんですよと、残り87%は伝統小売なんですよというのがベトナムの例で。じゃあ、この13%の近代小売って店舗数に直すとどれぐらいあるのかという話なんですけど、だいたい3,000店舗ぐらいなんですよね。一方で、残る87%の伝統小売ってどれぐらいあるのかと言ったら、50万店も存在するわけですよ。そうすると、もうお察しのとおり、3,000店舗でいくら商品を売っても、日販、週販どれだけ売ってもなかなか大きなビジネスにはならない。日本はセブンイレブン1社で2万店ありますから、ベトナム全土で3,000店舗、これはコンビニ含めても近代小売3,000店舗って、まだまだ成長過程なわけですよね。一方でこの50万店をどう攻略するかというのが非常にポイントになってきて。フィリピンだったら今、近代小売はどれぐらいですかね、6,500店舗ぐらい。一方で伝統小売が80万店ぐらいありますかね。最もASEANで近代小売が多いのがインドネシアなんですが、インドネシアですらまだ3万5,000店なんですよね。うち3万店はアルファマートとインドマレットというローカル系のコンビニエンスストア。セブンイレブンがインドネシアを撤退しましたけども、セブンイレブンを追い出した張本人がこのアルファマートとインドマレットですよね。彼らとの戦いに敗れて撤退をしたということなので。一方で、じゃあインドネシアの伝統小売はどれぐらいあるかと言うと300万店存在すると。

この何十万、何百万ある伝統小売を攻略するということが日本の消費財メーカーにとっては非常に重要で。基本的に近代小売って、いろんなお金が掛かるんですよね、導入費、棚代、半強制的なプロモーション、彼らはマージンは本当にたくさん取りますし。そうすると、ある意味ここだけで商売をしていてもVIPの場合はあまり儲からない、大きなビジネスにはならない。むしろそこで商品を売るということは、いわゆる認知度を上げるという活動に、それが半分ぐらいあるというふうに言っても過言ではないぐらい近代小売だけでは儲からなくて、いかに近代小売で認知度を上げて同時に伝統小売も攻略するかということは大変重要で。

でも、結局、近代小売で売っているものを伝統小売でそのまま売って売れるのかと言うと、必ずしもそうではなくて、そこをしっかりと理解をしないといけなくて。まず、伝統小売で売るためには近代小売で絶対売らないといけないんですよ。なぜならば伝統小売のお父さんお母さんは、パパママオーナーのお父ちゃんお母ちゃんは、自分の狭い店舗の中で商品を売りたいので売れ筋しか取り扱いたくないんですよね。そうすると、いかに近代小売で売れているかということを注目するわけですよね。近代小売で売れている売れ筋のものだけ売りたいですと。なんですけども、近代小売で、例えば10個入りで売っているものはばら売りしたいんですよね。なぜならば10個じゃ100円ですと。でも、ばらだったら10で割ったら10円なので、こういう単位で売りたいと。実際にはこれは10円じゃなくて12円とか13円で売られているんですよね。でも、そうじゃないと、結局近代小売って何かと言ったら、今使いたい分だけを今買うということがものすごく重要で。アジア新興国、新興国どこでもそうなんですけども、彼らの個人の消費者にとって一番重要なのって、個人のキャッシュフローなんですよね。未来に使うかもしれないものに、お金を先に払うということが大変なんですよ。なぜならばインカムがある程度限られている中で生活を回していくので、貯蓄に回る金額というのは、これはもうマクロ統計データを見てもらったら分かると思いますが、そんなに多くないんですよね。そうすると、ギリギリの中で生活をしているので、半年先、1年先に使うようなものは買いたくない。例えば、頭痛薬。われわれ日本だと12錠入り、24錠入り、どっちにしようかなと悩むかもしれない、風邪薬もそうですよね。でも、基本的には12錠入り、24錠入りとかを買うわけですよね。でも、新興国の人たちは、今使いたい1錠とか、頭痛薬は2錠で飲みますかね。なので、今使いたい分だけを、1錠2錠から買えるという、ここがすごい重要で。けど、一方でこれ、1個あたりは、グラムあたりは高いんですよ。12錠で買ったら1200円なのに、2錠買ったら150円だとか、160円だとかということをするわけですよね。でも、それでもいいんですよね、彼らにとっては、今使いたい分だけ。だから、実は伝統小売は高く売れるんですよね。伝統小売は安くしか売れないんじゃなくて、実は伝統小売というのは高く売れるということが非常に面白い特徴で。
なおかつ、伝統小売で売れるもの、売れないものというのが今回の番組のタイトルですけども、24錠の頭痛薬は売れないですよ。けど、これを1錠にすると売れるわけですよね。これ、例えばコーヒーもそうですよね。瓶でこうやってすくって入れますけども、そうじゃなくて、新興国へ行くと、さっきの写真をちょっと出してもらえますかね。サシェットの上から吊るしているようなやつがありますけども、これも1回使いきりから使えるわけですよ。シャンプーとか、そういうものも1回から使えるという。アジア新興国の、われわれの感覚で言うと毎日シャンプーします。朝もシャンプーします、朝シャンもします、夜もシャンプーしますと、1日に2回シャンプーしますと。でも、これはわれわれのあくまで常識であって、じゃあ、ASEANの人がそうしているかと言うとそうじゃないし。インドの人なんていうのは、もしかしたら3日に1回しかシャンプーしないかもしれないし、2日に1回しかシャンプーしないかもしれない、もしくは、何か大きなイベントがあるときしかシャンプーしないかもしれない。そうすると、やっぱり今使いたい1回分が欲しくて、こんなボトルでいつなくなるか分からないようなものを買って、流しの下にもう1本ボトルをキープしておくなんていうことができるのは、これは先進国の人たちの常識であって、新興国はそうじゃないので、いかに今使いたい分だけのパッケージに変えていくかということがすごい重要。

だから、私が言っているのは、何か伝統小売に売るためには近代小売で売れなきゃいけないので、近代小売で売っていない、全く伝統小売向けの商品を売れと言っているのではなくて、近代小売で売っているものをいかに伝統小売仕様に変えていくか、入数を変えていくか、パッケージを変えていくか、グラムを変えていくかと、こういうことをやっていくということが1つ。

もちろん伝統小売で売る化粧品って、高級化粧品はやっぱり売れないので、化粧品もある程度安価なものに変えていかないといけないし、小さいものに変えていかないといけないし、そういう“もの自体を変える”ということよりも、いかにパッケージ形態を変えるか。彼らにとって、消費者のキャッシュフローをいかに変えていくかということが大変重要になるので、そこを皆さん、日本の製造業も意識をするということが大変重要になっていくと思います。忘れてはいけないのは、伝統小売は決して安いものしか売れないのではなくて、実はグラムあたりは高いので、高く売ることができるということが1つです、ということはしっかりと認識をしておいてください。

それでは今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。