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第255回 財閥系や同業種との提携、合弁の落とし穴

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、「財閥系や同業種との提携、合弁の落とし穴」にいついてお話をしていきたいと思います。

海外事業、特にアジア新興国展開における財閥系企業、もしくは製造業であれば現地の製造業、同業種と提携、合弁の落とし穴というのが存在するわけなんですが。財閥系企業と合弁をすること、同業種と、製造業であれば製造業同士が合弁をすることを決して否定しているわけではないんですが、このいわゆる展開形態には大きな落とし穴が存在して、この落とし穴にはまっている日本企業って決して少なくないんですよね。合弁会社をつくりました。そこの商社が入ったりするケースもあるんですが、「合弁会社をつくりました」という、いわゆるつくったというニュースはセンセーショナルに発表されるんですが、実は数年経って撤退というのは、上場企業の場合IRでちょろっと紹介されて「合弁解消しました」みたいなサラッと触れてるだけというケースが非常に多くて。実はそこには大きな落とし穴があるということを今日はお話をしていきたいと思います。

まず、今日はスライドがないんですけども、財閥系企業と組むという話なんですが、これは中国だと1980年代とか90年代、国営企業と組むという、中国は財閥系というか、国営なわけですよね。ベトナムも国営系の、いわゆるもともと国が所有していた企業が民間企業になって、そこと合弁を組まないとなかなかライセンスが取れない、外資のライセンスが取れないとか、いろいろな問題があったわけですよね。フィリピンとかインドネシアとかタイというのは、それこそ財閥系企業が非常に幅を利かせているわけですよね。韓国なんかはまさにそうだと思いますけども。金融から不動産から小売から何とかから建設から、あらゆるものを財閥企業が押さえています。一方で国営というのも、あらゆるインダストリーを国営企業が押さえています。この国営企業、同魚種のメーカーか、もしくはこの財閥系の企業と日本企業も合弁事業をしないと、その国でビジネスをさせてもらえないという、こんな背景があったんですよね。なので、このいわゆる財閥系とか同業種との合弁事業というのは一時期非常に盛んだったというか、むしろそうしないとその国に展開できなかったという、そういう時代があったんですよね。

一方で今はどうかと言うと、外資規制もだいぶ進んでいて、多くの産業で、インダストリーで、独資で日本企業100%のシェアで設立ができるようになってきている。もちろんまだできない規制業種というのも当然存在しますけども、昔ほどそうじゃなくなってきた。これに伴って、必ずしも合弁が良いスタイルじゃないですよというのが今の全体的な流れなわけなんですが。

そんな中でも、やっぱり財閥系の企業をしっかり使っていく、もしくは財閥系企業とやらないという2つの選択肢があるわけなんですけど。落とし穴ってどういう落とし穴かと言うと、だいたい財閥系と組むとか同業種と組むというのは、過去は参入による規制があったわけですよね、外資規制の壁をクリアするために致し方なく合弁をしたという経緯があったので、過去は過去でそうだったんですけど。今ってどちらかと言うと、自分たちはつくる人です、製造業の進出で言えばつくる人、売ることを現地のパートナーにお願いしたい、じゃあ、どういうパートナーがいいかな、財閥系企業だったらこんなに幅広いコネクションを現地で持っているから財閥系企業に任せておけば安心だな。同業種と組むというのは日本だったらあり得ないわけですよね、同業種と組むというのは。A社というメーカーが市場1位のA社というメーカーが市場2位のB社と組むかと言うと、絶対に組まないわけなので。日本のA社が、日本で1位のA社が現地の1位のB社と組むっていうことをするわけですよね、海外の場合は。それは何を目的でやるかと言うと、このA社は現地のB社の販路が欲しいわけですよね。究極的には販路が欲しい。自分たちは商品を持っていますよ。良い商品をつくりますよ。あなたたちの販路でこれを売ってくださいというのがA社の目的です。一方で、財閥系の企業にとっても、現地の同業者にとっても、日本企業と合弁事業をするということ自体は、言ったらマイナスはないわけですよね。最近だと、もう中途半端に投資をして、中途半端に駄目だったらすぐ撤退していくような日本企業とはもうやりたくないという企業も増えてきていますけども、基本的にはマイナスはない。特に同業種なんかだと、日本企業と合弁つくって、技術を吸い取るだけ吸い取って、合弁解消になっても、結局、設備は持って帰れないし、工場も持って帰れないので、もう半値、8掛け2割引きみたいな値段で、結局、自分たちはそれを日本企業から買い取ることができて、日本企業は撤退をそのまましてきてくれるので、言ったら、現地の企業には損はないわけですよ。なので、組まない手はない。日本の大手と組めば、技術は入るし、信用力は入るし。仮に駄目だったとしても、リスクを取るのは彼らだけ。自分たちはほとんど損はないというケースで、あまりノーと言うようなことというのはないわけなんですよね。結局、日本企業のスタンスの問題なんですけど、スタンスとしては自分たちの凝り固まった、いわゆる日本での成功実績をベースにした商品を売りたいという、それを売るための販路をくださいと言って財閥系の企業や同業種と組むわけなんですけど。結局、このモノ自体がそもそも市場に合っていないので売れません。せっかく販路を手にしても売れません。同業種にしてみたら、言ったら、日本企業と合弁でつくる商品が売れても、言ったら、出資比率に応じて利益というのは還元されるわけですから、うまみが少ないわけですよね。

一方で、自分たちが、自分たちでつくっている製品というのは、まさに中間層以下をターゲットにしている、例えば、B2Cの消費財だったら、中間層以下をターゲットしている商品だし、よっぽど売れるわけですよね。こんなtoo muchなものを富裕層だけにハイスペックなものを中間層にはなかなか受け入れられないようなものを売って、出資比率分の利益を得るよりも、やっぱり自分たちが自分たちだけでつくっているほうが売れたりするので、結果的になかなかうまくいかなかった。日本の製造業は合弁相手が悪かったとか、基本的には合弁、相手が悪いというふうに言うんですけども。でも、私はこれは必ずしもそうじゃなくて、日本のメーカー側のスタンス、それはどういうことかと言うと、自分たちがマーケティングに介在しなかったということ、本当にその商品というのは現地で受け入れられるのかというところまでを引っくるめて合弁相手としっかりと戦略のすり合わせを事前にやらなかったから売れなかった。売れなかったから合弁が解消になったという、そういうケースというのは非常に多いし。財閥系って大きいんですけど、結局その財閥の本体が合弁相手として組むかと言うと、そうではなくて、その財閥というのは不動産もやっていれば、金融もやっていれば、小売もやっているし、建設もやっている、いろいろな子会社があって、その関連子会社の1子会社と組むわけですよね。では、この1関連子会社が実際に販売チャネルを持って売っているかと言うと、またそうではなくて、その下にはディストリビューターという販売店レイヤーがまたあるわけなんですよね。そうすると、本当に必要なのって、ディストリビューターのレイヤーなので、財閥ではなかったりするわけなんですよね。

なので、やはり自分たちはつくる人で、現地のことがよく分からないから財閥に頼るとか、同業種に頼るとか、その販路があれば売れるんだというような発想ではなかなか昨今のアジア新興国ビジネスというのは通用しなくて、自分たちがその国でどうやってマーケティングを実行していくのかという、売ることにもしっかりと介在したうえで、じゃあ、この機能をこういうパートナーにお願いをしたい、ああいうパートナーにお願いをしたいというふうにつくり込んでいくと、必ずしもざっくり財閥と組めば成功するとか、同業種の販路があれば売れるとかということには必ずしもならないので、そこは日本の製造業は1つしっかりと考える必要があるんじゃないかなというふうに思います。

今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。