第262回 本当にグローバルで戦うべきかを考える
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、「本当にグローバルで戦うべきかを考える」ということについてお話をしていきたいと思います。グローバル市場というのは、すべての企業にとってその市場で戦うべきかと言うと、決してそうではありません。グローバル市場で戦うべき企業と、グローバル市場で戦ってはいけない企業というのが存在します。今日は、どういう企業であればグローバル市場で戦うべきで、どういう企業であればグローバル市場で戦うべきでないのか、ということについて一緒に学んでいきましょう。
まず、グローバル市場で戦うということは、日本国内の市場で戦うことよりも、より多くの特殊な経営資源を必要とします。人、モノ、金をまず必要とする。そうすると、普通に考えて、大企業になればなるほど、グローバルの市場というのは必要とされるし、むしろグローバルで戦うべき企業になっていく。一方で、中小企業になればなるほど、必ずしもグローバル市場で戦う必要があるのかと言うと、決してそうでないケースがある。まだまだ国内市場でやるべきことがたくさんあるのに、それを置いておいてグローバルの市場に行くというのは、これまた本末転倒の話ですし、もちろん将来を見越して早期に参入をするという意味で、国内の市場は国内の市場でしっかりやりつつも、将来の投資のために海外へ行ってポートフォリオ分の経営資源を投入すると、これは非常に素晴らしい考え方だと思うので、これは別に決して否定するものではないのですが。中小企業になればなるほどやっぱり経営資源が足りないので、現実的に国内の市場に9割の力を注いで、じゃあ、1割の市場で海外、先行投資をしていくんだと言っても、この1割の経営資源ではとてもじゃないけど足りない。勝てるだけの経営資源に至らないというケースが非常に多いので、ここが非常にポイントになるわけなんですが。どれぐらいの経営資源を必要とするのかということを、まずしっかりと組み立てないといけない。
図をお願いします。グローバルで戦うための経営資源なんですが、基本的には、人、モノ、金、情報が必ず必要ですよ。これは国内の市場よりもより多く必要になってくる。なぜならば、海外の市場というのは、基本的には未知の領域にこれから0から進出をしていくわけなので、国内の市場であればある程度ベースが出来上がっている、自分たちの顧客ベースというのが出来上がっていて、自分たちにはチャネルもあるし、信頼、自分たちを信頼してくれる顧客もいるわけですよね。そして、オペレーションもすでに回っているし、あらゆることがほぼ分かっているというのが国内市場。一方で、海外の市場、グローバルの市場というのは、それがまだまだ脆弱な体制である、チャネルも脆弱、顧客の信頼も脆弱、日本では大企業であっても海外ではなかなかそこまでのプレゼンスを発揮できていないというケースが非常に多いわけなので、日本国内よりも、いわゆるやるべきことがいっぱいありますよ。
加えてナレッジやノウハウというものが非常に重要になってくる。日本というのは土台ができたところでビジネスを回していますから、もうすでにある土台、すでにある顧客や、すでにあるチャネル、すでにあるオペレーションの上で、よりこの1を2にする、2を3にするという、こういうことをやっているわけですよね。一方で、グローバルに出るということは、これは0から1をつくるという仕事になってくる。このナレッジやノウハウというものが必要になってくるわけですよね。これが言ったら、どれぐらいあればいいのかということは非常に重要で、ここですごく大切になるのが競合他社なんですよね。現地で戦う競合他社、グローバルで戦うための経営資源がどれぐらいの差があるのか。例えば、自分たちの力を10としたときに、競合の力が12、13ぐらいであれば、まだこれは戦えるわけですよね。一方で、自分たちの経営資源が10に対して、競合の力が100、これは10倍違うわけですよね。この市場に出ていっても、これはとてもじゃないけど勝てないわけですよね。そうすると、やっぱり負け戦をわざわざしに行くよりも、経営資源をしっかり蓄えてから出るというのも1つの選択肢であって。決して海外に出ないということを言っているのではなくて、出るタイミングを測るべきだというふうに申し上げていて、それが非常に重要ですよ。この出るタイミングを間違えると、海外事業というのは失敗します。
もちろん失敗をするということでより多くのものを学びます。先進的なグローバル企業というのは、誰よりも早く出ていって、誰よりも早く失敗をして、誰よりも早く学ぶから、誰よりも早く成功するという、非常に優れたロジックでグローバル展開をしていくし、新しいことを起こしていく、イノベーションをつくっていくので、この考え方自体は非常に素晴らしいものなんですが。この誰よりも早く失敗をするというところには必ず高度な仮説があるべきで、この高度な仮説があって失敗をするから、これは学びに変わるんですが、何の仮説もなく神風特攻隊のように出ていって、ただ失敗をして帰ってくるでは、これは全く学びがないので。日本企業は非常に多いんですが、20年前に失敗をした、10年前に失敗をした、そして、今、再参入しているんだけど、過去の失敗から何の学びもないので同じようなことをまた別の担当者が繰り返し失敗をしていると、失敗スパイラルをずっと繰り返しているという、こういうケースというのは非常に見受けられるので。やっぱりこの高度な仮説があったうえでの失敗でなければいけないですよ。
であるならば、出るタイミングをしっかりと測っていくということがやっぱりすごく重要で、この図の通り、競合他社との経営資源の差をどういうふうに見るかということが1つ重要なので、この番組でもお話した「R」ですね、マーケティングの基本プロセスの「R」、最初のリサーチですね、これをしっかりやっていく。「マクロ環境」「ミクロ環境」「SWOT分析」をしっかりやっていくと、自分たちが実際に出たときに何が起こり得るのかということが可視化できる。そうすると、自分たちは出るべき企業なのか、それとも少しタイミングを見て出るべきなのか。今出ちゃいけない企業なのかということが明確になっていくと思いますので、そういうふうに自分たちの出るべきタイミングをしっかりと知るということはグローバル市場、海外市場、海外展開にとっては大変重要になってきます。
今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。