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第265回 マーケティングミックスの順序

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、「マーケティングミックスの順序」についてお話をしていきたいと思います。

マーケティングミックス、前回お話をしましたけども、MMですよね、マーケティングミックス、4P、別名4Pというふうに言われていますが、これには順序があるわけですよね。一般的に、プロダクト、プライス、プレイス、プロモーションというふうな順番で進んでいくわけなんですが、アジア新興国市場では、この順番を変えていかないといけません。今日は、アジア新興国市場ではマーケティングミックス、MM、4Pの順序をどのように変えていけばいいのかということについて、一緒に学んでいきましょう。

スライドをお願いします。まず、4P、MMが何なのかということは前回のこの番組を見てもらったら分かると思うんですが、日本のマーケティングミックスの基本的な順番というのは、日本というか、一般的なマーケティングミックスの順番というのは、プロダクト、プライス、プレイス、プロモーションの順番で実施されていく。どういう製品を売るべきなのか、どういう価格帯で売るべきなのか、どういうチャネルで売るべきなのか、どういうプロモーションでそれを広めていくべきなのか。この考え方、この順番というのは、基本的には実績がしっかりと土台が整っている市場での組み立ての順番なんですよね。なので、もうすでにほかの商品は売っているし、ほかの商品の価格も決めたことがあるし、もうすでにチャネルはあるし、プロモーションも実施経験があるという市場では、この順番で物事を考えていく。一方で、アジア新興国市場などは、仮に若干の実績があったとしても、ほとんど未開拓の地でこれから新しく商品を売っていくとなったときに、これ、国内でやっているマーケティングミックスの順番で組み立てていくと非常におかしなことになる。

なぜならば、国内では、もうぶっちゃけ、皆さんの会社の信頼とか、商品への信頼、そして、消費者やユーザー、B2Cだったら小売店の信用、信頼というのはもうすでに整っているわけですよね。そうすると、どうしてもプレイスとかプロモーションというのは後回しになる。だってもう、みんな知っているんだもん、皆さんの会社のこと。なので、知らせるべきは新商品が出たよということをプロモーションすればいいだけだし、チャネルなんていうものはそもそももう持っているわけなので、何か手を加える必要というのはないわけですよね。今まで使っているチャネルに新しい商品を流せばいい。そうすると、着目されるべきはプロダクトとプライスがやっぱり非常に中心になってきちゃうんですよね、日本でこの4Pを組み立てようとすると。一方で、新興国では、これどんなに優れた商品を、製品をつくろうが、どんなに適切な価格のものを届けようが、どんなにプロモーションをしようが、チャネルがなかったら商品なんて届かないんですね。そうすると、やっぱりチャネルをしっかりつくっていかないといけない。

多くの場合は、この図の通り、プロダクト、プライス、プレイス、プロモーションの順番で組み立ててしまうので、まず日本で実績のある商品を日本で売ってきた価格通り、あまり変えたくないけど少し安めにして、そして販売チャネルをつくって、プロモーションはできれば実績が出るまで掛けたくないな、投資したくないなみたいな話になっちゃうんですけど。そうではなくて、まずチャネルをどうするかということを着手する。自分たちの売るべきターゲット、中間層に商品を届けるために必要なチャネルはどうあるべきなんだというところの設計からまず入るわけですよね。そして、そのチャネルをつくっていく過程で、流通から、そして小売から、B2Cだったら小売から、B2Bだったらユーザーから、こんなプロダクトじゃニーズないですよ、こんなプロダクトじゃ売れないですよ、こんな価格帯じゃ買われないですよということが、どんどん、どんどん、フィードバックされていくわけなんですよね。なので、プロダクトやプライスを、こちら中心で決めていく、いわやうるプロダクトアウトで物事を進めていって、結局最後にチャネルをつくったんだけど売れませんでしたということにならない。チャネルを最初につくっていくわけですから、チャネルありきで始まっていく。すると、そのチャネルをつくる過程でどんどん、どんどん、市場からフィードバックが入ってくる。そうすると、プロダクトはこうあるべきだ、プライスはこうあるべきだ、プロモーションはこうあるべきだということのほかの3つがどんどん、どんどん、精度が上がっていくので、必ずやっぱりチャネルから入らないといけない。

この「チャネルから入る」ということは、ターゲットが絶対に明確になっているんですね。ターゲットが明確になっていなかったらチャネルなんてつくれませんから、自分たちが売るべきターゲットが誰なんだということが明確にあると、そのターゲットにリーチすべきチャネルはどうあるべきなんだということが考えられる。そうすると、チャネルがしっかりつくられていく。このチャネルをつくっていくという過程で市場からのフィードバックにより、プライスはこうあるべきだ、プロダクトはこうあるべきだ、プロモーションはこうあるべきだということがフィードバックされて、すべてが最適化される。これはしっかり本当にチャネルからやっていくということは非常に重要で、マーケティング研究の第一人者の明治大学の経営学部の大石教授も「チャネル・ファースト」ということを言っていますので、アジア新興国市場ではこのチャネルが非常に重要になってくるということを、皆さんも今一度認識をして、まずチャネルづくりから始めるということを考えてみてはいかがでしょうか。

今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。