第297回 競合の可視化なくして自社の戦略はない その2
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、「競合の可視化なくして自社の戦略はない」ということで、競合調査の重要性についてお話をしていきたいと思います。今日はパート2ですかね、その2になると思います。前回のまとめのお話なんですが、日本企業…。ごめんなさい。今回の番組は、対象は製造業です。B2B、B2C問わず製造業で、対象市場は新興国全般です。
前回のお話なんですが、一般的に日本企業は競合の情報を知らなさ過ぎるというふうなお話をしたと思います。これ、日本企業の戦略を見ていくと、戦略をつくるうえで競合の情報をあまり収集していない、自社の営業マンが拾ってくる情報とか、こういったものだけをベースにしている。自社の営業マンが分かるような情報なんていうのは、これはもう全くもって競合情報じゃなくて、競合が嫌がるような情報、これこそが競合の情報なので、これはもう第三者機関に依頼をして集めていくしかないですよというお話をしたと思います。
競合の情報が分からないで戦略をつくるとどういうことになるかと言うと、結局、市場というものがあって、どれぐらい儲かる市場なのかということと、そこにどれぐらい強い敵がいるのかというのが分かって、これが可視化されて初めて自分たちの戦略があるわけですよね。日本企業は、これがどれぐらい儲かる市場なの?ということはしっかりと調べているんですけども、そこにどういう敵がいて、彼らの戦闘能力って本当に具体的に数字でどれぐらい強いんですかというところが分からないので、「いや、自分たちはいい商品を持っているから大丈夫でしょう」とボーンと出ていって、なかなかマーケットシェアが広がらないという結果に陥っている企業が少なくないですよと。やっぱり競合情報というのはしっかり収集しないといけない、可視化しないといけないし、競合が可視化されていないのに戦略をつくるなんていうことはあり得ないですよという話をしたと思います。
スライドをお願いします。このスライドをお見せしたと思うんですけども、「競合ってどういうところなの?」といったときに、欧米系の競合、ローカル系、言ったらローカル系とか中国系の競合、そして日系の競合があるわけなんですが、日系の競合は、正直もう自分たちが日系だったら日系がやりそうなことってだいたい想定がつくので、特に重要なのって、やっぱり自分たちが想定しないような戦略を繰り広げるローカル系とか中国系の企業と、あと、やっぱり進出が早い、新興国への進出が早い欧米系の先進的な企業を調べるということがすごく重要で。ここを、彼らが具体的になぜ成功しているのかということを見ていかないと、自分たちの戦略なんて具体的にならないんですよね。結果として、自分たちのいい商品を中心とした、いわゆるプレミアムプロダクトを中心とした戦略、いいものをつくっているから何となくなるんじゃないか戦略みたいなものが出来上がってしまって、B2Cだったら本来ターゲットとすべき中間層からだいぶ上振れしてしまう、B2Bだったら本来狙うべき最も数の多いローカル企業とかをターゲットにできずに日系企業に偏ってしまうとか、外資系企業に偏ってしまうみたいなことになってしまっているので。
結局、新興国に出るということは、数の原理なんですよね。超高級品を売ってない限り、ビジネスというのは数の原理なので、いかに牌のデカいところに自分たちのターゲットを設定して、ドーンと戦略を繰り広げるかということなわけで。特にFMCG、食品・飲料・菓子・日用品なんていうのは、いかにたくさんの人に、いかに速い頻度で、いかに繰り返し、永遠に買い続けてもらうかということが非常に重要で。単価が安くなればなるほど数の原理なわけですよね。そうすると、やっぱりそういうところへの展開を競合がどうしているのかということをしっかり見ていかないといけない。
じゃあ、競合からどういう情報を収集すればいいのかという話なんですが、それが次のスライドなんですが、基本的にはこういうような情報を収集しているようなことになります。特になんですけども、私が重要視したいのは、やっぱり日本企業は競合のチャネルまわり、どうやって売上をあげているんだと、彼らはどうやって販売をしているんだというところが非常に重要で。
次のスライドをお願いします。もうね、競合調査と言ったらこの3つしかないんですよね。いわゆる日本企業がなぜ新興国で負けるかと言うと、製品は決して負けていないんです。価格、確かに高いけども、これは実際に数が売れるとなったら日本企業も価格を下げるという努力をしっかりすることができるので、そうすると、価格競争力は別に決して持てなくはないんですよね。プロモーション投資も、売れたらやるみたいなことを言っていますけど、結局これも売れると分かっていたら絶対やるんですよ、プロモーション投資なんて、日本企業だって。そうすると、売れるかどうか分からないから売れたらやるということになって後手にまわってしまっているので、これは何かと言ったらチャネルなんですよね。チャネルがしっかりしていないから売れていない、シェアが低いというケースがものすごく多いので、競合のチャネルと比べたときに、競合の販売チャネルの戦闘能力を10としたときに、日系企業の販売チャネルの戦闘能力って1とか2なんですよね。これ、9とか8とかの差があったら、どんなに製品が良かろうが、どんなに頑張ろうが全くもって歯が立たないので。やっぱりこれはチャネルをしっかりしないといけないし、チャネルがしっかりしていないとプロモーションを打ったって、これは砂漠に水をまくようなものになってしまうので、このチャネルまわりを見るということに重きを置くということが大変重要で。もう、うちの競合調査と言ったらだいたいここですよね。そもそもうちの会社で一番多い調査って何かと言ったら、競合を調べたいというのと、あと、販売、ディストリビューターを探したいという、この2つで9割、言い過ぎかな…、8割は確実だと思います。なので、競合に関しては、チャネルまわりを見ますよと。
もう1回図に戻りますけども、この3枚目の図ですけども、主要競合のチャネル戦略の可視化をやりますよと。それから、主要競合のディストリビューション・ネットワーク、これね、主要競合のチャネル戦略の可視化ってどういうことかと言うと、一体全体どういう考え方でチャネル戦略があるのかということを見るわけですよね。例えばB2Cだったら、彼らは伝統小売を中心としたチャネル戦略を繰り広げていますと。近代小売に関しては、現地法人が直販していますみたいな、全体のストラクチャーをまず見るというのがチャネル戦略の可視化。
2つ目のディストリビューション・ネットワークというのは、これは理由なき1カ国1ディストリビューター制みたいなわけの分からないチャネル・ネットワークを築いていないのって日本企業ぐらいで、管理が大変だからとか、自社内競合するからという理由で、理由がない、そんなのは理由にならないので、理由なき1カ国1ディストリビューター制というふうに私は呼んでいますけれども、1社しかディストリビューターはないですよと。その1社では物理的にシェアが広がらないし、牌が広がらないのは目に見えているじゃないですか、計算しなくても分かるような状態になっちゃっているというケースが多くて。一方で、うまくいっている企業のディストリビューション・ネットワークを見て見ると、複数のディストリビューター、大小含めてをエリア別にしっかり配置して、ディストリビューション・ネットワークをつくっているみたいな。このネットワークのストラクチャーがそもそも日本企業と比べると、全然日本企業は劣っているなんていうケースがあるので、ネットワークを見るということも必要です。
3つ目、主要競合の組織とマネージメント体制の可視化。主要競合はこれらの販売チャネルをどういう組織体制で、どういうふうに動かしているんですか、KPIは何なんですか、彼らの管理育成の手法ってどういうものなんですか。もちろんこれはディストリビューターとかディストリビューション・ネットワークというのは動かさないといけないので、どういう体制でどういうふうに動かしているのかということを見ていくわけですね。それを自分たちと競合で比較していくと、自分たちに今何が足りていて、何が足りていないんだということが明確に見えていくので、その足りていないところを補っていくということが戦略になるわけですよね。多くの日本企業というのはもうすでに進出している。うちのクライアントでも9割は進出している。9割以上かな、9割以上進出しているクライアントの再参入戦略をつくっているわけですよね。もう10年前に出たんだけど、うまくいかないから再参入戦略をつくりたいという話なので、そうやって自分たちに足りていないところを補っていくということが大変重要なので、競合を可視化するということは戦略を構築するうえで非常に重要。特に再参入戦略を構築するうえでは大変重要になりますので、ぜひ皆さんもこの競合調査に今一度力を入れてみてはいかがでしょうか。
今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。