第311回 1カ国1代理店ではシェアは上がらない その3
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、「1カ国1ディストリビューター制ではシェアが上がらない」ということについてお話をしていきます。前回もね、話が長くてダラダラしちゃいましたけども、簡潔にまとめていきたいと思います。(笑)ちょっと、前回、前々回の整理をすると、1カ国1ディストリビューター制、これはB2CであってもB2Bであっても…。B2Bの場合はね、1カ国1ディストリビューターでも問題ないことも当然あるんですけど、B2Cになればなるほど伝統小売というものが重要になってくるわけですよ、FMCGに近くなればなるほど。だって、重要なのは中間層なんですよね。アジア新興国に出るということは、もう数の勝負ですから、FMCGの商売というのは何がポイントかと言うと、いかにたくさんの人に、いかに速い頻度で、いかに繰り返し、永遠に商品を買い続けてもらうかということが重要です。そうなると、中間層が重要です。そうすると、中間層の買いやすい売り場ってどこかって言ったら伝統小売なんですよね。そうすると、いかに伝統小売にリーチをするディストリビューション・ネットワークをつくらなきゃいけないかということで。この伝統小売に1社の大規模なディストリビューター1社だけで、じゃあ、配荷ができるかと言うと、これは非現実的なわけですよね。なので、複数のディストリビューターを使わなきゃいけない。だって、計算すれば分かるわけですよ。ディストリビューターの中に社員が何人いて、自分たちの商品を案内してくれる社員は何人いるのかということを計算していくと、「この数だともう何十年かかっちゃう。30万間口獲るのに何十年かかっちゃう」とかっていうことは必然的に出るので、一緒じゃ駄目ですよということが分かってくる。
あと、二次店とか三次店、どれぐらいの二次店を使っているのか、こういう情報をディストリビューターから開示されないという関係性自体がもうそもそも間違っていて、これをどれだけ一緒にタッグを組んでやっていくかという話なんですよね。日系企業側のスタンスもすごく僕は悪いと思っていて、「うちのディストリビューター、情報を開示してくれないんですよ。どこに売ってるか全然教えてくれないんですよ」と、「そんなディストリビューター、よく使っていますね」という話なんですけど、でも、そういう状態にさせてしまっているのは、日本の企業側の対応だったりするわけですよね。
例えば、3年4年5年ぐらいで、どんどん、どんどん、現地の担当者、駐在員が変わっていって、これは人事異動が当然ありますから仕方ないんですけども、誰とどう話していいのか分からないと。ディストリビューター側は華僑の一族のファミリー企業だけども、日本の海外担当役員のトップが、トップ同士のトップ会談みたいなものがなかなかない。現場の駐在員はどんどん変わっていく。そしたらディストリビューターも不安に思いますよね。これ、いつ切られるか分からないと。もちろん契約書もそうだと。事実上独占なのに、独占契約になっているのに、何かあったら困るので、一応契約書上は非独占になってるみたいなね。契約書で非独占にされてて1年更新ですみたいな話。こんな意味のない契約書は本当になくて、どうせ独占にするんだったら、独占契約を与えるということをネタにコミットメントをどんどん取ったらいいわけですよね。「年間これだけ最低買え」とか、いろんな条件を付けられるわけですよね。「最低これだけの人を付けろ」とか、「プロモーション投資はこれぐらいメーカーとして出すけど、ここはあなたたちのリスクでやれ」とか、いろんな要求ができるんですけども、そういうこともしないので、非独占になっていると。非独占になっているから、どんどん、どんどん、疑心暗鬼になって関係も離れていくみたいな、そういう状態になっていたりもするわけですよね。
そんなかんやで、また話が逸れちゃったんですけど。1つのディストリビューターでは、実際に物理的にいかないわけですよ。B2Bでもそうなんですけど、この地域は強いけど、あっちの地域は弱いとか、この地域は強いけど、こっちの地域は弱いとか、これは結局、小売でもそうですよね。Aの小売には強いけど、B、C、Dの小売には弱いとか。そうすると、これはやっぱり伸びていかなくて、自分たちが弱いエリアを強くするのって時間かかるじゃないですか。10年かかるでしょう。5年、10年、15年ってかかっていく。そんなの待てないので、やっぱり、それはその地域では別のディストリビューターを使うということをやらないといけないし。当然、嫌だと言うんですよ。Bの小売も、Cの小売も、Dの小売も「自分たち頑張るから」と言うんだけども、結局、その商品が、その人たちが頑張るというのを待っていたら5年10年かかっちゃう。でも、ほかのディストリビューターでB、C、Dの小売の数字を上げていったら、これAも上がるので、これをいかに理解させるかということがやっぱり重要で。期限を決めて、条件を決めて、駄目だったら別のところを使っていくということをどんどんやっていかないと、先進的なグローバル企業はもう躊躇なくやっていますよね。それが、今の既存のディストリビューターにとっても結果幸せになるんですよね。でも、それをやらないことのほうが、結局Aの小売でしか売れないので、言ったら、消費者に支持されていないということですよね。だって、どこにでも入ってないんだもん。そうすると、それは、どんどん、どんどん、衰退していって、結局、ディストリビューターの取扱いが減っていって、ディストリビューターもアンハッピー、メーカーもアンハッピー、こういう構造になっちゃうわけですね。
重要なのは、「誰と売るか」というよりも、「誰に売るか」ということなんですよね。B2Cだったら消費者じゃないですか。だから、消費者の心の中にどれだけ自分たちの商品がブランディングされるかということが一番重要なわけですよ。でも、そこから1つ戻って、店舗、小売店という話になってきて、売る現場、「どこの小売で売りたいの?」というところをまず決める。どこの小売で売りたいのということが決まれば、じゃあ、「そこの小売に売れるのは誰なの?」ってディストリビューターを決めていかないといけないんですね。A小売、B小売、C小売、D小売って、4つの小売に売りたい。それが1つのディストリビューターで不可能なのであれば、やっぱりそれぞれディストリビューターを決めていかないといけない。もちろん、ちょっと頑張れば入れるとか、いろんな微妙なさじ加減があるので、調整をしていくということは非常に重要なんですけどね、全部ばらすということは必ずしもいいことではないので。これはB2Bでもそうですよね。このエリアのユーザーには強いけど、このエリアのユーザーには弱いとかっていうことは往々にしてあるので、やっぱりそれはしっかりと見極めるということをしていかないといけない。
また今日も時間が経っちゃったのでこれぐらいにして、また次回、すみません、最後4回目で終わりにしたいと思います。今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。