第391回 【Q&A】新興国展開で最も重要なこと その8
新刊はこちら » https://www.amazon.co.jp/dp/449565019X
定期セミナーはこちら » https://spydergrp.com/seminars/
テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、皆さんからの質問にお答えをしていきたいと思います。今日もしばらく続けている「新興国で成功するために最も重要なこと」ということで、今日はその8ですかね、その8。「最も」なので1つであるべきなんですけども、どういうインダストリーの企業が、どの国のどの都市で、どういうことを展開するかによって、最も重要なことというのは変わってくるので、僕の支援人生の中で本当に重要だなと思ったことをいくつかの観点に分けてお話をさせていただいています。今日で8回目かな。もうそろそろ終わらないといけないですよね。
今日はね、「最も重要なことって何ですか」と、マーケティングの基本プロセスですよと。これはB2Cでも、B2Bでも、どの企業にとってもマーケティングの基本プロセスは本当に重要ですよと。マーケティングの基本プロセスって何かと言うと、R-STP-MMなんだけども、Rというのはリサーチの略で、マクロ環境分析、ミクロ環境分析、SWOT分析で構成されていて、STPというのはセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの略で、最後のMMというのはマーケティングミックスの略、4Pとかってよく僕も言いますけども、マーケティングの基本プロセスというふうにネットで叩いてもらったら分かりやすい説明がいっぱい出てくると思うので見てもらったらいいと思うんですけども。これって戦略をつくったり、フィジビリティスタディをつくるときに本当に重要な、あらゆるマーケティングのフレームワークってだいたいここに集約されていっているので。
日本企業が今まで海外市場、新興国市場で失敗してきた事例のケーススタディなんていうのを開いてみると、だいたいこの最初のRをしっかりやっていなかったと。マクロ環境分析はしっかりやったんだけど、ミクロ環境分析はあまりやらなかったみたいなところが結構あって。SWOT分析は自己都合の、自分たちに都合のいいSWOT分析をしてしまったがために失敗したとかっていうことはよくある話。
STP、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングも、ターゲットがふやっとしているんですよね、日本企業の新興国展開。本当にターゲットがふやっとしている。「B2Cだったら中間層が新興国は爆発的に伸びているわけだから、そこがめちゃめちゃ重要なのに、なぜ新興国に行ってまで自分たちの商品がハイスペックだから富裕層とか上位中間層と言っているの?」と、「B2Cは数です。いかにたくさんの人に、いかに速い頻度で、いかに繰り返し、いかに永遠に買い続けてもらうかがビジネスの肝なんだから、数ですよ。先進グローバル企業はもう端から中間層ですよ」と言っているのに、ターゲットが上振れするという問題。
それから、日本企業がB2BでもB2Cでも弱いのがポジショニング。自分たちがどういうポジショニングを築くのか。それは永続的に続いていけるポジショニングなのかみたいなところのやっぱり深さが非常に浅くて、中国企業やアジア企業に追い上げられてしまっている。これは簡単なことというか、分かりやすい話だと思うんですよね。ヨーロッパブランドほどブランド力はないんだけども中国企業ほど安くもない。中途半端なブランド力に中途半端な価格がついて、これをじゃあ、どうするの?というところに行き着いてしまっている。これは60年代、70年代、80年代ぐらいはよかったんですよね。もともとアメリカがつくったものを、より良く、より小さく、より安くつくるということで世界第2位の経済大国にのし上がっていって、「Japan as No.1」とまで言われていったわけですから非常によかったと。でも、そのあと中国にその座を奪われて、そこから30年間迷走しているというのが今の現状、日本企業の現状だと思うんですけど。でも、30年間ブランディングをさぼってきたので、まさにポジショニングですよね。自分たちのポジショニングを見失ってしまっていると。だから、いずれの企業を見ても、おばあちゃんにもおじいちゃんにも、お母さんにもお父さんにも、お兄ちゃんにも弟にも、娘にも子どもにも、みんなにハッピーみたいな顔をしているポジショニングを取っている企業が非常多くて。でも、そういったものに今の消費者というのはやっぱりなびかないので、自分たちの芯があって、ヒストリーがあって、「私たちの信じてるクールはこれです」というものを徹底的に主張する。そこに共感をして、それを使いたいと思う、そういう流れになってきているので、もうかつての時代から大きく変わってきているんですよね、市場が。にもかかわらずまだ30年前の市場で迷走している製造業って非常に多いんじゃないかな。特にB2Cの製造業はですね。なので、そういうことがしっかり分かっていく。
最後のMMみたいなところというのは、これも「4P、4C」とネットで叩いてもらったら、パッとすぐ、今、出ると思うんですけども、4Pの観点、プロダクト、プライス、プレイス、プロモーションというのはあくまで企業側の観点で、本来日本企業がやるべきは、「ターゲットに対してどうやって4Cを当てていくんですか」という話なので、もうここでやっぱり今すでに出ている企業が、なかなかブレークスルーしない、マーケットシェアが獲れない、その大きな要因というのがこの4C観点になれないと、ターゲットに対してどうやって4Cを最適化するんですかと。すべての失敗の要因というのは、この4Cの中に潜んでいるので、4Cが完璧に最適化されているのにシェアが上がらないなんていうことは理論上あり得ないんですよね。だから、問題があるとしたら4Cで、この4Cをどうやって最適化するかが成功への唯一の最短ルートなので。
ぜひこのマーケティングの基本プロセスを、これから出る企業はR-STPのところをしっかりやる。もうすでに出ている企業はSTPとこの4P、4C、MMのところをしっかりもう1回押さえていくということをやると、今の現状から大きく改善することができると思います。
それでは今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。