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第419回 戦略の軸は中間層獲得

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、この『グローバル・マーケティングの基本』 日本実業出版社から私が去年出した本ですけども、この本について解説をしていきたいと思います。

今日は第2章、「2-2 戦略の軸は中間層獲得」ということで、74ページについてお話しをしていきたいと思います。このページ、章は、2-2は、消費財メーカー、中間層とかっていう話なので、いわゆるB2Cのメーカーさん、消費財メーカーに限らずB2Cのメーカーに対してお話をしています。特に消費財メーカーになるんですけども。結局、例えばB2Cでも、高級ラグジュアリーブランドとか、例えば高級車とかっていうメーカーになると、超高級化粧品とか、こういうものは別に中間層は関係ないわけですよね。買える人が本当に0.1%の超富裕層とかを相手にビジネスをしているわけですから、中間層ではなくて。なので、消費財の中でも特にFMCG(Fast Moving Consumer Goods)のような消費財、中間層がビジネスのメインターゲットになるような企業に向けてのお話なのですが。「アジア新興国市場の最大の魅力って何ですか」と言うと、これはもう中間層の爆発的な拡大以外にないんですよね。過去20年、そして、これからの10年20年を考えても、もう絶対的に中間層であると。

このスライドをちょっとお願いします。図を見ていただいて。現在、中間層の数がだいたい15億人ぐらいというふうに言われているものが、もうまもなく30億人に拡大していくと。これがアジア新興国市場の最大の魅力であって、この中間層を狙わないんだったら、もうアジア新興国市場に出る意味がまったくないんですよね。特に日用品メーカーなんかまさにそうで、数十円、数百円のものを売っているのに、プレミアムとかって意味が不明ですと。なんですけど、多くの日本企業はまさにそこにとらわれてしまっていて、根本的に中間層にターゲットを当てた戦略ということを、なかなか大変なのでね、取ろうとしない。私はもう1円でも高く売ることは大賛成なので、安くしろと言っているのではなくて、ターゲットをやっぱり中間層からぶらさない。先進的なグローバル企業というか、マーケットシェアの高い企業と、アジア新興国で、低い企業の大きな違いって、ターゲットが中間層からぶれるかぶれないかの違いなんですよね。ぶれてないんですよ、高いシェアを持っている企業というのは。なんですけど、残念ながら多くの日本の消費財メーカーは高ぶれしていて。かつて家電メーカーがそれをやって多くの日本のB2C、ほぼ全滅ですかね、海外ではもうB2CメーカーではなくてB2Bのメーカーになっていますけども。そのような状態に消費財メーカーもなり得るなというふうに感じている次第で。

結局、消費財メーカーのビジネスの肝って何ですかと言うと、いかにたくさんの人に、いかに速い頻度で、いかに繰り返し永遠にモノを買い続けてもらうかということがビジネスの肝なわけですよね。にもかかわらず、自分たちの商品は良いモノですと、プレミアムだから、ちょっとは安くするけども、起きやすい近代小売中心に並べて、プロモーションは売れるまでちょっと控えましょうみたいな話で、誰が買うんですかと。その最中、台湾や韓国、中国のメーカーがどんどん、どんどん、競争力を上げてきて、パッケージを日本語にして、あたかも日本メーカーのお菓子のようなものがたくさん出ていると。これを偽物だという権利は日本のメーカーにはなくて。なぜならば、日本のメーカーも日本国内では英語のパッケージのお菓子をたくさん売ってますから、よく読むと意味不明な英語がいっぱい書いてあるわけですよね。これはアメリカ人から見たら「おっ!」という話なので、日本語は日本企業しか使えないなんていうのは、もう自分よがりのI want youになってしまうので、アジアの企業でも日本語のパッケージのものをどんどん、どんどん、つくっていると。

そう考えると、本当に中間層から逃げ回っていると、これは結局、最後おいしいところだけ獲るなんて、市場が豊かになってきたところの上物だけを獲るなんていうことはしなくなるわけですよね。なぜならば、豊かになったら豊かになったでもっと上があるわけですよね。ヨーロッパの高級菓子を求めるとか、その頃には中国の菓子メーカーも超一流になっていますと。家電のように、日本企業と変わらない状態になっていますみたいなことになり得るわけなので、やっぱり中間層から逃げ回るということは、なかなか中長期的に見ても戦略としてはよろしくないのかなと。もう中間層をやらないならアジアはやらないという、これぐらいの決断がすごく重要で、「いかに中間層を獲得するか」ということを消費財メーカーというのは本当に考えていく必要があるというふうに思います。

それでは今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。