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第466回 【本の解説】「1ヶ国に1ディストリビューター制」はやめる

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、この一昨年に私が出した『グローバル・マーケティングの基本』 日本実業出版社の解説をしていきたいと思います。

今日は167ページ、「4-2 1カ国に1ディストリビューター制はやめる」ということについて解説をしていきたいと思います。「1カ国1ディストリビューター制」、もっと分かりやすい表現で言うと、ちょっと代理店とディストリビューターは全然意味合いが違うのですけど、1カ国1代理店制とか1カ国1販売店制というふうに言ったほうがピンと来るのかなというふうに思いますけれども、多くの企業が、アジア新興国市場に限らず新興国市場に展開をした際に、1カ国1販売店制で展開をしていて、なかなかマーケットシェアや売上が伸びないというケースが非常に多いと。これはB2Bの場合は、場合によっては1カ国1ディストリビューターのほうがいいというケースもあるんですよね。ただ、基本的にはインダストリーによってやっぱりディストリビューターはB2Bでも分けていかないといけないし、もし国土が広ければ、やっぱり物理的に顧客に訪問をするとかっていうことが必要になってくるので、基本的にはエリアによってディストリビューターを分けていく。なので、結果として複数のディストリビューターを使うという傾向のほうがベターだったりするんですけど。

B2C、特に消費財に限っては、1カ国1ディストリビューター制とかではまったくもってマーケットシェアは取れない。なぜならば、新興国市場の特徴というのは伝統小売だとこの番組でも散々お話をして、例えばベトナムで60万店、フィリピンで80万店、インドネシアで447万店、こういう無数に広がる伝統小売を攻略していくということは、やっぱり1社のディストリビューターでは絶対にできないですよね。なぜならば、1社のディストリビューターに、じゃあ、その御社の商品を取り扱ってくれる営業マンが何人いて、その何人が1日8時間稼働して、移動距離を考えて、30万店のストアカバレッジを獲るのにどれぐらいの時間がかかるんだろうと計算していくと、もうめちゃめちゃかかってしまうんですよね。もう1,365年かかりますみたいな話になっていくので、基本的には1ディストリビューターでは駄目で、複数のディストリビューターを使っていかないといけない。

これは仮に1ディストリビューターで、その先に例えば2次店3次店が50社あります、60社ありますというケースはもちろんあるんですけれども、そのときにもその2次店とか3次店の姿がしっかり見えてないと、そこがぼんやりしちゃうと、結局ストアカバレッジを上げるのはそこなので、そこをぼんやりさせてしまうんだとまったくそれは意味がなくて。仮に1社のディストリビューターを使うのでも、その背後にいる2次店3次店をしっかりと可視化ができる状態、この状態に持って行けるのであれば、これは1カ国1ディストリビューター制とは言わないですけども、基本的にはやっぱりそこをしっかりと可視化をして、複数のディストリビューターをエリア毎に、B2Cの日用品、食品、そういった分野においては、もうエリア毎に複数のディストリビューターを使う。でないと伝統小売含めてストアカバレッジを伸ばすことは難しくて。これはディストリビューターによってもそうなんですけど、近代小売、MTが強いディストリビューターと、TTが強いディストリビューターと、これは分かれるので、MTが強いというか、MTしかやりたくないようなディストリビューターにいくらTTをやれと言っても、ストアカバレッジは絶対に伸びてこないんですよね。結局そこからTTの強いところに単純に投げているだけで、投げていて、そこに対するいわゆる管理育成が行き届いていないと、結局そこの先のストアカバレッジというのは進まないという状況になるので。

ちょっと図を使って説明をすると、この図のような感じなんですけども、例えばベトナムなんていうのは南北、首都のハノイから南のホーチミン、最大市場のホーチミンまで1,600キロ以上の距離があって、ダナンのちょっと上に非常に高い山があるんですけど、昔からその山を越えるということが非常に困難で、南北の差というのがすごく大きく隔たられている山というのがあるんですけど。多くの日本の消費財メーカーなんていうのはこの右側の状態。もともとハノイだけとか、ホーチミンだけ、ホーチミンのディストリビューターにハノイをやらせたり、ハノイのディストリビューターにホーチミンをやらせたりしていたんですけど、当然ベトナムというのは南北で非常に戦勝国と敗戦国の影響がいまだにあるので、基本的に南のディストリビューターが北で活躍するというのは非常に難しくて。まだ言うなら北のディストリビューターが南でなんとか頑張るというほうがまだやりやすくて。南のディストリビューターでなかなか北が獲れないので、北は北で立ててみたみたいな、今、2社ぐらいになっているところはあるものの、これだとやっぱりストアカバレッジって獲れなくて。ベトナムの場合、近代小売の数がまだ数千ですよね。それに対して60万店以上、66万店の伝統小売があって、それを獲っていこうと思うとやっぱり左側の図のように、これは先進グローバルメーカーなんですけども、主要都市にそこそこ大手、中堅クラスのディストリビューターなり自社拠点をしっかり置きながら、小さいディストリビューターをエリア毎に分けて、マイクロディストリビューションしていくみたいなことをやっていかないと、やっぱり10万20万間口を獲るというのは非常に難しくて。ここの差がやっぱり大きな差として日系の消費財メーカーと先進グローバル消費財メーカーの差としてはあるのかなと。もっと遡っていくと、そもそも伝統小売の間口に合った商品になってないよねとかっていう、商品自体の問題もあるわけなんですけども、基本的にはチャネルだけで考えていくと、やっぱり1カ国1ディストリビューターだとなかなか難しいというお話でございます。

ちょっと次のスライドを参考までに。日本でも基本的に全都道府県にそれぞれのディストリビューターを置いているわけですよね。販売店を置いているわけですよね。当たり前ですよね。北海道の販売店に沖縄をやらせないですし、まあまあそこまで極端でなくても、北海道の販売店に大阪はやらせないわけですよね。福岡はやらせないわけですよね。なぜならば、いや、やれないでしょ、普通に考えてというのが分かっているので、基本的には各都道府県に販売店を置くと。これをベトナムに置き換えても、フィリピンに置き換えても、インドネシアに置き換えても、同じことで、われわれの地理感が日本の都道府県のほうが長けていて、フィリピンとか、ベトナム、インドネシアは長けていないから、なんとなく1社に任せておいたらうまくいくのではないかという想像・妄想をしてしまいがちですけど、基本的には日本と一緒で、というか、むしろ日本よりも大きな国土でそういうふうになっているわけですから、しかも日本みたいに交通インフラが整っていないので、非常に移動に時間がかかるわけですよね。であれば、なおさら複数のディストリビューターを使わないと難しいということになってくるわけでございます。

今日はちょっと長くなってしまいましたけども、これぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。