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第500回 【本の解説】Q&A ケース3 伝統小売への導入がなかなか進まない

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。今日も引き続き、この『グローバル・マーケティングの基本』 日本実業出版社から私が出している本ですが、この本の解説をしていきたいと思います。

今日はね、256ページ、「ケース3 伝統小売への導入がなかなか進まない」というケースについてお話をしていきたいなというふうに思います。まずね、このケース3をちょっと読みますね。「消費財メーカーです。近代小売への導入は比較的良いのですが、伝統小売へはなかなか導入が進みません。伝統小売における導入比率を上げるにはどうしたら良いでしょうか」ということで。まあまあ、諸費材メーカーのね、ASEANに限らず新興国市場、アフリカでも南米でもインドでも、最大の課題は間口数が取れないということなんですよね。近代小売は何とか置いてもらえるんだけども、まあね、近代小売もいろいろ課題があって、やっぱりメインの棚に置かれていないとか、輸入品棚に置かれてしまっていると、これは論外なので、輸入品棚って、これは通常の中間層はあまり買い物しませんから、どれだけメインの棚に近代小売で置かれるかということはすごく重要で。まあまあ、でも、近代小売はある程度出ていて、多くの企業の課題というのは伝統小売の攻略なんですよね。

ASEANのケースで言うと、一番多いインドネシアで447万店、伝統小売というのはあって、対して近代小売って3万6,500店舗ぐらいしかないんですよね、主要どころが。次に多いのがフィリピンで、フィリピンの近代小売も8,000店舗ぐらい、8,500店舗ぐらいですかね。対して伝統小売は80万店以上ある。フィルスターの最新のニュースによると、パンデミックでフィリピンなんかは小規模事業者支援というのが行政からさんざんされたんですよね。いわゆる伝統小売の支援というのをされて、フィリピンって伝統小売が経済のバックボーンになっていると認識されているので、業界も行政も消費者もみんなで伝統小売を守るという、そういうあれが強くて、そんな支援を受けて16万店増えたというね。だから、96万店あるかもしれないと。まだちょっと私、弊社自身でカウントを確認できていないので未確認の情報ですけど、フィルスターの情報ではそんなようなことを言っていて。ちょっと話が飛びましたけど、フィリピンがそういう状態で。ベトナムなんかも6,000~7,000店舗ぐらいの近代小売に対して66万店の伝統小売があって。タイとかマレーシアなんかは6割ぐらいが近代化、タイで5割ぐらいが小売の近代化が進んでいるんですけど、それでもタイで45万店とかね、マレーシアで20万店。マレーシアはそもそも人口が少ないので伝統小売も少ないんですけど、そんな数があるので、数十万店~数百万店ある伝統小売、これに配荷をするということはね、やっぱり伝統小売に配荷ができるディストリビューション・チャネルを持たなきゃいけなくて、配荷ができていないということは、このケースの消費財メーカーは、伝統小売に配荷ができる販売チャネルがつくれていないということなんですよね。近代小売はつくれている。現地法人があれば直販するし。

そもそも輸出で伝統小売というのはほぼあり得ないので、一部ね、贈答品目的で400~500円のお菓子が売れたりするんですよ。例えばね、こんな缶に入ったクッキーとかね、例えばロッテのチョコレートパイとか、何だろう、僕、大好きなんだけど、パイの実じゃないや、チョコパイね、チョコパイ。チョコパイが1個から売っているというのが基本的に伝統小売なんですよね。今使いたい分だけ、今食べたい分だけ買えるというのが本来伝統小売の最大の魅力なんだけども、それが5個入り6個入りの大箱のチョコパイがいわゆる来客時の茶菓子として使われたりするんですよね。日本だとね、ロッテのチョコパイを来客時の茶菓子に出すって、子どもだったらいいけども、大人だとやっぱりなかなかちょっと違うのかなと。ヨックモックを買ってきたり、三越のデパ地下のおみやげ屋さんにあるようなものを買ったり、虎屋の羊羹買ってとか、そういう話だと思うんですけど、ASEANではそういったものでも十分来客、お客さん、来客時の茶菓子としておもてなしになっているので、そういったものが結構売れていてね、日本のマイナーメーカーのクッキーとかの大箱入りの、よく地方の安売りスーパーとかで売っているような、コピー品と言ったらあれだけども、抹茶クッキーが売れたら大手のメーカーがつくっているようなのをちょっと真似してつくったような抹茶クッキーとかね。台湾なんかがそうなんですけど、日本語のパッケージにしたような、日本っぽいクッキーを売ったりとか、そういうものが結構売れていて。そういう用途以外は基本輸出で伝統小売を狙うということはないので、現地に法人をつくってという、販売拠点をつくってほぼ現産をしてやっていくと、そういう市場ですよね。
結局これ伸びないというのは、もう絶対的に伝統小売に配荷をするディストリビューション・チャネルになっていないということなので、そこをつくらないといけない。じゃあ、伝統小売に配荷ができる販売チャネルってどういう販売チャネルなの?と言うとね、これはもうね、ディストリビューターによっても全然違って、近代小売に強いディストリビューターと伝統小売に強いディストリビューターもあるし、伝統小売のチャネル、伝統小売を攻略するためのチャネルストラクチャーって、うちで言っているのはP&G型とネスレリーバ型とあって、商品の特性によってもチャネルの型というのは違うんですよね。伝統小売で売れている企業というのは必ずこの販売チャネルの型がしっかりしていて、それをどんどん、どんどん、自分たち独自の型にしていくという、そういうのが非常にうまくて。だから、伝統小売の攻略がなかなか進まないというのは、まずもって伝統小売を攻略できる販売チャネルがないですよということが1つと。じゃあ、その販売チャネルがどうあるべきなの?というのはね、伝統小売のシェアが高い企業の販売チャネルを徹底的に調査で可視化するということはすごく重要で、どういうディストリビューターを何社使って、どんなセールスチームが日々どういうことをやっているの? これは組織の体制と、その組織が何を日々やっているのかということを可視化をしていくということはすごく重要で。そんなことをやっていけば、だいたいこの商品で2割のシェアを獲るにはここまでの投資が必要だということは見えてくるので、基本的にはそういう調査をやるということが非常に重要ですよと。

あともう1つは、チャネル側の話が、それが1つですよね。もう1つは商品側の話で。伝統小売は今使いたい分だけなので、基本的にはグラム数を減らしたりとか、入数を減らすということはすごく重要で、その分単価を下げられますよね。単価が下げられる。ただ、実はグラムあたりは高かったりするので全然いいんですよ。伝統小売というのはグラムあたりとか1個あたりで計算すると高いんですよ。だって10個で買ったら100円なのを1個13円とか14円で売るわけですから、それでも伝統小売の顧客というのはOKで、それは十分認識していて。100円は出せないんだと。いつ使うか分からないし、今欲しい、この1個だけ欲しいから、13円14円出してもこっちのほうが彼らにとっては価値があると、これが伝統小売の最大の魅力なわけですよね。こういう商品形態になっていますかというのが1つで。こういう商品形態になっているよというプロダクトプライス側の問題と、あとプレイス側の問題、ここがしっかり組み合わさって初めて伝統小売にモノが流れる。そして、近代小売というのは4Pで言うとプロモーションなので、しっかり近代小売で存在感があるという、これが4Pにしっかりおさまっていたら伝統小売では必ず売れるので、伝統小売で売れる4Pが出来上がっていないということを言ったほうがまとまりがいいかもしれませんね。

今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。