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第507回 【本の解説】Q&A ディストリビューターとの上手な付き合い方とは? その1

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、この『グローバル・マーケティングの基本』 日本実業出版社から私が出している本ですが、この本の解説をしていきたいと思います。

今日は、264ページ、「ケース8 ディストリビューターをとの上手な付き合い方とは?」ということで。消費財メーカーですね。売上を拡大するためにディストリビューターといろいろと施策の提案をしていますが、なかなかそれらをやろうという流れにはなりません。基本任せて口を出すなというスタンスのようです。しかし、それでは現状から大きく売上を拡大させることはできないと考えています。どうすればディストリビューターは動いてくれるでしょうか」ということですね。この手の話というのは結構あって、日本の製造業、メーカーと、ASEAN、グローバルサウスを中心とした新興国のディストリビューターの間が結構あってね、いわゆるパワーバランスの問題で、パワーバランスがしっかり築けていないということなんですけど。これね、まず、なぜこうなってしまったかという、いくつかの要因があって、ここを見ていくと、じゃあ、そうならないように何を気を付けたらいいのかということに気付けるので、なぜそうなってしまったかということをまず見ていきたいなというふうに思います。そのあとに、じゃあ、もうすでに陥ってしまっているね…。なぜそうなったかということと、なぜそうなったかを見ていくと、じゃあ、どうしたらそうならないのかということが分かってくると、ここが1つ。もう1つは、すでに陥ってしまっている状況の中から、じゃあ、どうやって脱出すればいいの?と、脱出する方法は何なの?というところのお話と2つあるんですけど、これをちょっと分けて、まずこの前者のお話をしていきたいなと。

なぜそうなったかということなんですけどね、これ1つは、前回でもお話した、ディストリビューターとの契約交渉の中でね、いわゆる契約締結をするまでのプロセスをやっぱり怠ってきたということがあって。基本的には発掘選定をして、スキルセットで絶対評価でロングリストからショートリストまでバーンと絞り込んでいく発掘選定をしっかりやって。そして、契約交渉をしていくと。契約交渉というのは、ショートリストのディストリビューターに対して、今度はマインドセットで相対評価をしていくと。さっきは絶対評価だったけど、今度は相対評価をしていくと。その中で自分たちがディストリビューターのオーナー社長としっかりと話をして、どのディストリビューターが最も適切なのかということを見ていくプロセスですよね。このプロセスで、言ったらパワーバランスってほぼほぼ出来上がっていくわけなんですね。なぜならば、自分たちで戦略提言、戦略提示をしっかりして、「こういう戦略に基づいてこういうことをやっていきたい。ディストリビューターにはこういう役割を担ってもらいたい」ということをしっかりとその時点で話をするわけで、そこに対して合意をするわけなので。ディストリビューション契約をしましょうで形式的な合意ではなくて、戦略を合意するというふうに思ったほうがよくて、役割を合意するというところにどうも日本企業のディストリビューション契約というのは集約をしてしまっていて、自分たちはつくる人、売るのはあなたたち、その役割に対して販売店、ディストリビューション契約を合意しますと。

そうではなくて、基本的には戦略で合意するということはすごく重要で、戦略で合意までできるのと、単に役割で合意するのでは、そのあとのパフォーマンスが全然変わってくるんですよね。だから、結局、契約をして、蓋を開けたら思ったとおりにならなかったとなるぐらいなんだったら、契約をしないほうがよっぽどよくて。なぜならば一度契約をしてしまったら、それを解約、また次のディストリビューターに変えるのに3年5年時間を無駄にするので。だったら契約しないほうがいいという話なので。なので、私はこの番組でも再三言っているのが、契約締結までのプロセスがすごく重要で、役割合意ではなくて、戦略合意をしましょうということをずっと言っているわけなんですけど。

この戦略合意に至れなかったから、パワーバランスが築けていないと。先進的なグローバル企業というのは、絶対に戦略合意しているんですよね。戦略があるからパワーバランスが「メーカー>ディストリビューター」というパワーバランスが築けているので、メーカーが何かを言えば言うことをきくというような状態になっているわけですよね。それが、これだけのことを言うわけですから、言っているのか言っていないのか分からないですけど、「任せて口を出すな」というスタンスなわけですから、それなりの態度に出ているわけですよね。それはもうパワーバランスが当然崩れてしまっていると。ディストリビューターはね、中堅規模のオーナー社長の一代目、二代目ぐらいのね、まだ二代目移行前の一代目の、もう一代でやってきたんだみたいなおじいちゃんのディストリビューターはね、「わしは分かっているから、口出すな」みたいな昭和っぽい華僑系の、いますよ、そういう社長もね。なんですけど、まあまあ、そうは言っても、やっぱり契約締結までの戦略合意が至れなかったというのが1点ですと。

もう1つの問題は、実際に日本企業の場合は駐在が3年~4年、4年~5年ぐらいのスパンで交代していくわけですよね。やっぱり僕も経験ありますけど、現地で一緒にやってきた駐在のメンバーと一緒にね、その人が帰ってしまったら、やっぱりね、当然なんですけどね、全然悪くないんですけど、もう他人ごとになってしまうわけですよね。ベトナムの話はもう僕の前のキャリアの話ということなので、「その当時は大変だったよ。こうだよ、ああだよ」ということはあっても、やっぱりそれは過去の話で。当然なんですよ、別に悪い問題じゃない。サラリーマンですから、部署が変われば過去の話は関係ないし、そこに敢えて口を出したりしたらややこしい話になるので、それでいいわけなんですよ。なんですけど、じゃあ、ディストリビューターにとってみたらどうかと言うと、こんな施策をずっとやってきたのに、尻切れトンボになるみたいなね、それは1回や2回だったらいいんですけど、過去、実は日本のメーカー側は知らないんだけど、遡ってみると、10代にわたって尻切れトンボの施策を散々やらされてきたみたいなね、こういうケースも結構あって。結局グーッと来たときに帰任で新しいのが来て、また新しいのが来てと、これは現地法人の社内でも言えることですよね。前のいわゆるCEOが、現地の社長が、「こういうことをやっていこう」と言って進んでいったのに、また帰任になって、新しい人が5年ぐらいで来て、「こういうことをやっていこう」とまた言うわけですよね。もちろん引き継ぎはされているものの、一貫性のないことになる。かと言って、逆らうのも面倒くさいし、「はいはい」という感じになっているというケースは非常にあって。そういうことが、言うことをきかない状況になってしまっているというのが1つですよね。

今日は時間なので一旦ここら辺で切らせてもらって、また次回引き続き、この話をしていきたいと思います。それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。