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第509回 【本の解説】Q&A ディストリビューターとの上手な付き合い方とは? その3

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、この『グローバル・マーケティングの基本』 日本実業出版社から私が出している本ですが、この本の解説をしていきたいと思います。

今日もね、264ページ、「ケース8 ディストリビューターとの上手な付き合い方とは?」ということで、消費財メーカーです。「売上を拡大するためにディストリビューターにいろいろと施策の提案をしていますが、なかなかそれをやろうという流れになりません。基本、任せて口を出すなというスタンスです。しかし、それでは現状から大きく売上を拡大することはできないと考えています。どうすればディストリビューターは動いてくれるでしょうか」ということで、前回ね、前々回とこの話をしてきていて、前回、前々回にお話したのは、なぜこういう状況に陥ってしまうのかというポイント、このポイントを5つ説明したんですけど、この5つのポイントを気を付ければ、そういう状況に陥らないですよという話をしました、前回ね。どういうポイントがあるのか。その5つのポイントに関しては前回の番組を見てもらって。今日は、多くの場合、実際にもう陥ってしまっていますと。陥っている企業がどうやってそこから抜け出すのかということなんですが、そのことについて、私の経験をもとにちょっとお話をしていきたいなと思います。

われわれも、私が代表を務めているSPYDERという会社でも、そういうお問い合わせで現地に乗り込んでいって、現地法人のメンバーと一緒にディストリビューターの改革を行うなんていうことは結構あるんですよね。その中でやっぱり1つあるのが、過去どうだったのかということをまずわれわれ自身が認識するということはすごく重要で。日本側のメーカーは常に新規みたいな状態で行くんですけど、向こうはもう散々尻切れトンボの施策をやってきていると。過去の駐在員の人たちと散々やってきて、過去の担当とやってきていて、それで今なので、何なんだというケースというのがあるので、やっぱり過去どういう経緯で、どういうことが行われてきたのかということをまず理解をしてあげる、聞いてあげるということがすごく重要で。そこね、彼らのガス抜きをするだけでも全然変わってくるので、過去どうだったのかということをやっぱり聞くと。もうね、これ、どれだけ時代が進んでも、もうはっきり言って感情の話なので、向こうのオーナー社長が、もしくはそれに付随するような人がやると思うか思わないかなんですよね。そこが号令かかれば、ある程度下はそっちを向きますから、まず実権を握っている人のガスを抜くということはすごく重要で、まず話を聞くということは僕が毎回やることですよね。

もう1つが、彼らのスイートスポット、前回お話しましたけど、スイートスポットに本当に入ってしまっているのか、入ってしまっていないのかということをちょっと見ていく。経営資源を整理しながら、どれだけの経営資源の負担がかかるのか、自分たちがさらにお願いをしようとしていることで、どれだけの経営資源の負担がかかるのかということを見てあげて、それなりにメーカーとして支援策を出して上げるということをやっぱりやらないといけない。ただ「頑張ってよ」、ただ「売ってよ」では、これはなかなかたぶん難しくて。具体的に戦略ね、「売上を上げるために、こことここの間口をこういうふうに押さえていきたい。そうするとこうやって売上が上がるから」という、このいわゆる深い知識をベースに、知識と経験をベースにした戦略戦術がまず明確にあるということと、それに対して支援策がパッケージでついてこないと。やっぱり、ただ「こんな素晴らしい戦略戦術を考えたので、これをやってください」だけだと、なかなかそれは動かないので、それに対して「ここまで支援します」「ここまで割引します」「ここまで利益削ります」なのか、「ここまで商品で付けます」なのか、「プロモーション費用を出します」、一番いいのはモノで出すのが一番メーカーにとってもいいので、そういうことをパッケージで話をしないと、want、wantだけだとね、take、takeだけだとやっぱり駄目で、しっかりgiveもしっかりしていかないと、特に華僑系のディストリビューターは動かないので、パッケージで。これは日本人だけですよね、「忍耐で頑張れ」みたいな、感情で押し切って、物質的なゲインを与えなくても頑張ってしまうのは昭和の時代の日本人だけで、今の世代の日本人でもそんなことしないのに、海外、新興国に行ったらね、やっぱりゲインなくして何もないので、そこはパッケージで話をするということがやっぱりすごく重要で。

3つ目が、今度こそは本当に尻切れトンボにならないのかということを、やっぱり自分で覚悟するということはすごく重要で。だいたい駄目な施策の要因って尻切れトンボになるんですよね。施策なんてやったら、絶対に壁にぶち当たってうまくいかないので、うまくいかなかったときに、なんとなく言っていたことがシューッと消えてなくなっていくということが一番の要因で。向こうもやりたくないので、それに対して何も言わなくて、なんとなく自然消滅をしていくと。自然消滅をしていったので、なんとなく気持ち的にはそのときは楽なんだけども、それが5年10年のスパンで繰り返し戻って返ってくるという、そんなイメージなので。いかに自分たちが今度の施策を尻切れトンボにさせないかということ、ここの覚悟がやっぱりすごく重要で。施策をやって、必ず壁にぶつかるので、そのときにどういう仮説検証のプロセスを繰り返せるかということが事前にやっぱりないと、中途半端な施策ほどやらせて無駄なことはないので、本当にやらせて大丈夫ということをメーカー自身が覚悟するということがやっぱりすごく重要になってくる。今度尻切れトンボになったら、たぶんもう永遠にそういう施策はできないし、パワーバランスが大きく崩れると。メーカーが言い出しっぺでやらせたことができなかったら、これはメーカーに対する尊厳ってもちろん落ちていってしまうので。やっぱりそこの責任みたいなものはしっかりと認識をするということが重要です。

ということで、時間はかかると思います。1回すねている相手をもう1回こっちに振り向かすのは。なので、まず過去を聞いてガス抜きをするということと、ゲインの部分も支援の部分もパッケージで戦略とともに付けてあげるということと、それからこの施策が絶対に尻切れトンボにならない覚悟を決めるということをしっかりやる。この3つをコミュニケーションをもうフルに使って、しんどいけど、彼らを1年がかりで説得するぐらいの話で進めていくということをやって動かしていく。あんまり大きな施策をやるんじゃなくて、小さい施策でやるということを僕はいつも努めていて、その小さい成功体験で彼らと成功の喜びを共有できたらね、それってものすごい力で、その小さな成功体験を中ぐらいの成功体験に増やして、今度は大きい成功体験に増やしていって、徐々にやっぱり大きくしていくと。あまりにね、壮大な施策を繰り広げてこけたら、もう立ち上がらないし、向こうが立ち上がらない、立ち上がれないというか、立ち上がらないので、やっぱり絶対に成功する小さな施策、これをやって、まず勝利の喜びを分かち合うというところが一番重要になるのかなというふうに思います。

では、今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。