【本の解説】フィリピン市場 近代小売と伝統小売の密接な関係
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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、この『ASEAN6における販売チャネル戦略』 同文舘出版から私が去年出した本ですが、この本の解説をしていきたいと思います。今日は139ページ、フィリピンですね。市場の特徴ということで、市場環境のお話を少ししていきたいなというふうに思います。「80万店の伝統小売なくしてシェアなし」というふうに記載がありますけども、フィリピンの小売市場って一体どれぐらいの規模があるの?ということなんですが、この本ではね、執筆当時、1USドルが136円だったので、だいたい20.9兆円、21兆円ぐらいですよね。ただ、今の為替でいくと、22~23兆円ぐらいになっているのかなというふうに思います。日本の小売市場って150兆円ぐらいですから、ASEAN全体で130兆円を超えていますのでね、なかなか大きな市場になってきていますよということで、そのうちの20数兆円を握るのがこのフィリピンの市場で。
一番の特徴は80万店の伝統小売、これが非常に数も多いということも然りなんですけども、非常にね、フィリピン市場では、国にも、業界にも、近代小売にも、消費者にも、地域にも、守られた存在であるということはすごく重要で、これはほかのASEAN以上に守られていて。例えば伝統小売って、ベトナムなんかはコロナのパンデミックの期間、非常に苦しんだんですよね。営業停止命令が行政から出されて、営業できなかった地域なんかもあって、コロナが明けてから、もう鞍替えしてね、もう日用品を売るのやめました、水を売りますと、一番売れるものを売りますみたいな業種転換したりとか、あと、そもそも伝統小売やめますみたいなのも結構あったし、2023年に、まだまだやっぱり回復率が50%と苦しんだ伝統小売もたくさんあったんですけど。フィリピンの伝統小売は非常に優遇政策を受けて、日本でも中小企業に向けた小口の融資制度を政府がやりましたけども、ああいったものがフィリピンのサリサリストアのオーナー向けに結構やられて、パンデミックの前から結構あったんですけどね。特になぜ行政がそういう小口ローンをやったかって言うと、高利貸しがいっぱいいるんですよ、フィリピンってね。高利貸しとかにお金を借りちゃって首が回らなくなって返せなくなる、倒産する、地域の不安につながる、国民の不安につながるって、こういうことを阻止するために政府が結構小口のローンをやって、かなり守られていて。
フィリピンってもともと近代小売の数も9,400店舗ってこの本には記載していますけども、1万店ぐらいあるんですよね。どこまでを主要どころと言うかはあれですけども、そのうちのやっぱり強いのは、また小売のページで詳しくは話しますけども、シューマートと言われるSM、そしてピュアゴールド、そしてルスタンズを買収したロビンソンズということで、これが3大小売ということなんですが。この近代小売と伝統小売がね、いわゆる戦ってないんですよね。市場を奪い合ってなくて、むしろ補完し合っているというのが非常に面白い特徴で。いわゆる伝統小売の商品、オーナーさんの商品の仕入れ先が、例えばピュアゴールドだったりするわけですよね。ピュアゴールドに行くと、伝統小売のオーナー向けのレーンというのがあって、買い物レーンですね。そこには20個入りとか、10個20個入りのスナック菓子、小さなポテトチップスも、1個からじゃなくて、1袋からじゃなくて、20袋が1袋に入っている、そういうものが売られていたりとかね。あと、伝統小売の売れ筋商品、これを買っていけば伝統小売で一番売れている売れ筋商品トップ10ですよみたいなのがちゃんと設けられていたりして。また、そのレジ、キャッシャーですよね、キャッシャーも伝統小売のオーナーはたくさん買うので、レジにたくさん並ぶから、伝統小売向けのキャッシャーがあったりとかね、一般のお客さん向けのキャッシャーがあったり、分かれていて、伝統小売自体は非常に優遇されていて。これって日本で言うと、駄菓子屋のおばちゃんがイオンで商品を仕入れるみたいなね、そんな構造はないわけじゃないですか。問屋から買うという話なんですけど。基本的にこういう構造がしっかり成り立っていて。消費者もそうですけども、業界自体が、業界・行政がまず伝統小売を守っているし。
あと、消費者もね、伝統小売って必ずしも田舎の貧困地区にあるというわけじゃなくてね、都市部だって交通量の多いストリート上には伝統小売っていうのはいっぱいあって。大きく分けて2タイプあって、ストリート、交通量の多い表面にある伝統小売、あと、住宅街の中、なかなか皆さん入る機会はないかもしれませんけども、住宅街の中に行くと伝統小売ってものすごいたくさんあって、その入り組んだ住宅街の中の伝統小売もあるわけですよね。これはサリサリストア、SSSなんていうふうにも言われるんですけど、サリサリって小さいストアのことを言うんですけど、そんなふうになっていますよというのがこの伝統小売の構造ですかね。
今後もね、この伝統小売はね、フィリピンの関してはなくならない。むしろデジタル化が進んで、伝統小売自身がデジタル武装をしていきますから、基本的には伝統小売が減るスピードよりもデジタル化のスピードのほうが速いので、僕は、伝統小売はより便利な存在として生き残るんだろうなというふうに思っています。コンビニよりも便利な存在になっていくんだろうなというふうに思います。
こんなところで、次回以降ね、地域一番店の伝統小売の押さえ方みたいな話も織り交ぜながらお話をしていきたいなというふうに思います。今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。