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【本の解説】フィリピン市場 近代小売と財閥 その2

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、『ASEAN6における販売チャネル戦略』ということで同文舘出版から私が去年出した本ですが、この本の解説をしていきたいと思います。

前回ね、SMのシー財閥のお話をしましたが、150ページですね、今日はVIP、フィリピンの話。今日はロビンソンズを保有しているゴコンウェイ財閥なんですけど、このゴコンウェイ財閥もね、小売、食品、航空、不動産、石油、繊維、通信などを手掛けていて、シー財閥に次いで非常に大きな財閥ですよと。だから、フィリピンの3大小売、ピュアゴールド、SM、ロビンソンズのうちの2財閥、SMとロビンソンズはそれぞれシー財閥とゴコンウェイ財閥によって運営されていて、この財閥がフィリピンでは7~8割の経済を握っているというふうに言われているので、非常に大きな力があると、単に小売だけやっているんじゃないということがお分かりいただけるかなというふうに思います。

これちょっと厳密にはね、ピュアゴールドだけは財閥じゃなくて、フィリピンの有名な実業家のルシオ・コーっていう人が、いわゆるタイクーンですよね、これが率いている小売チェーンで。おそらく推計売上では直近おそらくSMよりもスーパーの売上、単体としては大きくなっているので、非常に大きいですよと。

フィリピンの財閥の人たちって、前回もお話しましたけど、スペイン系の財閥と中華系の財閥があって、今もうスペイン系の財閥っていうのは勢力を失っていて、アヤラ財閥っていうスペイン系の、主に不動産の開発なんかをやっている財閥ですけど、ここがやっぱり唯一残っていて。あとはもうほとんど衰退してしまっていて。僕もフィリピンでスペイン系の財閥の家系の友達がいますけど、非常に大きな家であったり、マンションとかいっぱい持っていますけど、やっぱりもう財閥というほどの、桁が4桁5桁変わってくるような資産というのはやっぱりそんなになくて、なんとなく想像に値するお金持ちという感じで。やっぱりもう最後だと言ってましたから。彼が何代目か忘れましたけど、彼の子どもの代でおそらく資産がもう、そんなに増えないと言っていましたからね。もうあとは残った資産を子どもの代に受け継いで守っていくだけっていうことを言ってましたから。特に大きな事業もやってないので、中華系財閥が非常に大きくなっていますよと。

結構こういう財閥の人たちが、フィリピンの国民、一般の中間層の人たちにね、すごく特徴的だなと思ったのがね、愛されているというかね、尊敬されているんですよね。いわゆるお金持ちみたいな感じでうがった目で見られていなくてね、「金持ちだからって」みたいなね、ひがんで見られているというよりかは、どちらかと言うと、成功者、憧れの存在であって。フィリピンの中間層の地域とか貧困の地域に行くと、こういった財閥の支援がすごい行き届いていて。例えばこの地域のバスケットゴールはなんとか財閥がつくってくれたとか、学校なんとかとか、結構、慈善活動をかなりやっていて、尊敬されているし、一代でそこまで財を成したということで、当時の本田宗一郎とか松下幸之助みたいなね、たぶん日本人にとってそういう対象。それもまだ、ヘンリー・シーさんなんて、2019年に創業者のヘンリー・シーさんはお亡くなりになられたばかりなので、まだ一代目が二代目に引き継いで、今、3代目みたいな、そういう状況なので、非常に身近に感じる。われわれにとって松下幸之助って言うと、ちょっと、会ったこともないし、生きているのを見たこともないしみたいな話なんでしょうけども、かなり身近に感じているような印象はあるのかなということで、これら財閥の影響力が非常に強いですよというお話でございます。SM、前回話しましたよね、バンコデオロ、フィリピン最大の商業銀行ですけど、そういったものを持っているし、ユニクロが合弁をやっているのもこのシー財閥ですしね。通信から、不動産、いろんなことをやっている、石油、航空、食品、いろんなことをやっているので、フィリピンの市場に行ったときにはこの3大小売に入れるということがすごく重要になってくる。

よくありがちなのが、財閥系だから、財閥の上から行ってうまく話を進めようみたいな、ひと昔前の海外展開みたいなね、そういうお話をする人もまだ少なくないんですけど、結局ね、小売でモノを売るのに、財閥のトップはあまり興味ないので、あまりそういうのって関係ないですねと。どちらかと言うと、やっぱり小売は小売でビジネス完結しているし、よっぽど本当に先進グローバル企業化しているので、コンプライアンスとかルールっていうのはしっかり守られているから。なので、小売は小売でしっかりと話をつけるということをしないと、コネでどうこうなるっていう、そういう世界ではもう今のASEANは、フィリピンもそうですけど、そうじゃないので、なかなかそれは難しいですねと。なんかね、本当に大きな、ユニクロみたいにファストファッションをフィリピン市場で大きな展開をするとかっていうと財閥と組んでとかっていうのはあるんでしょうけども、スーパーで商品を売りますみたいな話でね、なかなか財閥の上と会っても、余計話がややこしくなるので、それはそれでしっかりと小売と対峙するということが重要になってくるかなというふうに思います。

それでは今日はこれぐらいにして、次回ね、伝統小売に関する考察のところのお話をしていきたいと思います。それでは今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。