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【本の解説】フィリピン市場 伝統小売に関する考察

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、この『ASEAN6における販売チャネル戦略』 同文舘出版から私が去年出した本ですが、この本の解説をしていきたいと思います。

今日は151ページ、第6章 フィリピンですね。伝統小売市場に関する考察ということで、このページはね、フィリピンの伝統小売について書いています。フィリピンの伝統小売なんですけど、特徴としては、まず、1万店弱の近代小売に対しておおよそ80万店の伝統小売が存在するというのが構造として非常に大きくて。フィリピンは財閥で経済の8割、7割~8割を占めていますから、その財閥系やタイクーンが牛耳るSM、それからピュアゴールド、ロビンソンズ、この3大小売、近代小売ですね、MTに商品を配荷して、初めて伝統小売80万店のうちの数十万店を獲れるという、そういう構造になっていて。

この伝統小売が他のASEANに比べて非常に守られた形態、小売形態になっていると。どういうことかと言うと、行政、それから業界、地域、消費者、すべてのレイヤーの人たちに必要とされている。これはフィリピンでは伝統小売をサリサリストア、SSSとかっていうふうに言うんですけど、小さな商店というふうな意味ですけども、基本的にフィリピンの伝統小売の流通構造を開いていくと、非常に特徴的なのが、彼らの商品の仕入れルートの1つに近代小売があるんですよね。例えばピュアゴールドで、伝統小売のオーナーはピュアゴールド、いわゆる近代小売、一般の3大近代小売のうちの1つに商品を仕入れに行くと。そのピュアゴールドも、一般の消費者向けのレーンと、あと、いわゆるサリサリショップの伝統小売のオーナー向けのレーンがあって、いかに伝統小売で売りやすいかと、売れ筋がどれかっていうことが、まとまって買える、そういったものがあって、キャッシャーなんか見てもね、20台キャッシャーがあったら、うち10台は伝統小売のオーナー向けのキャッシャーになっていたりとかっていうことになっているので、非常にユニークな流通構造をしている。日本で言うところの駄菓子屋のおばちゃんがイオンで商品を仕入れると。イオンが駄菓子屋のおばちゃん向けに商品を揃えているみたいなね、ちょっとなかなか考えにくい構造ですけども、そういう構造になっていて。

インドネシアのアルファマート、2大小売のコンビニの1つですけども、アルファマートなんかももう1,000店舗以上フィリピンに進出をしてきていて。これはコンビニですけどもね、アルファマートはフィリピンで何をやっているかと言うと、伝統小売の仕入れのための支援をやっているということなので、フィリピンの伝統小売は間違いなく消えない。むしろパンデミックで増えたということも聞いていますので、非常に業界や行政や消費者から必要とされている存在であると。これだけ守られているので、かつての議論だと、伝統小売がコンビニ化していくと、近代化していくみたいな、こういう議論がずっとされてきたわけですけども、基本的には伝統小売はこのDX、デジタル化によって消滅するスピードよりも、デジタル化していくスピードのほうが速いので、おそらく私の予想は、伝統小売はよりDXが進んで、今、存在している最も便利な、その名もコンビニエンスストアというものですけども、それよりも便利な存在として、新しいニューリテールのような存在になっていくんじゃないかなというふうに考えています。なので、フィリピンの伝統小売はますます発展繁栄していくでしょうというようなことでございます。

じゃあ、一旦フィリピンの伝統小売に関する考察はこれぐらいにしたいと思います。次回は、主要ディストリビューターについて、フィリピンのですね、お話をしていきたいと思います。それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。