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【本の解説】タイ市場 攻略のポイント その1

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、『ASEAN6における販売チャネル戦略』 同文舘出版から私が去年出した本ですが、この本の解説をしていきたいと思います。

前回からタイに入っていますね。タイが最終ということで、今日は206ページ、首都バンコクに富が集中というところからちょっとお話をしていきたいなというふうに思うんですが。タイの経済、1人あたりのGDPなんかを見たときに、基本的には首都バンコクだけ見ると2万ドルを超えているんですよね。これは他の地域の平均の約倍なんですよ。確かに富が首都に集中ということなので、消費財メーカーにとってはまずバンコクを獲るということで、これはどの国でも基本的には首都攻めをするという、国を狙うのではなくて都市を狙う、首都を狙うということは消費財メーカーの戦略としては王道戦略であるということはありますと。集中と言うと、あまりにも首都が集中なのかという、首都に集中し過ぎているのかという印象を持ちやすいのですが、VIP、ベトナム、インドネシア、フィリピンなんかと比べると4倍5倍差がついていますからね、首都とさまざまな地域と。なので、意外にタイは、首都をまず落とすということは変わらないんだけども、首都を落としてからいかに地方部、他の都市含めてやっていきやすいかと、1万ドルを超えていると、半分にしたって1万ドルを超えていますから、ほかのASEAN、新興国は数千ドル、ならしたら数千ドルという国なんて全然ありますからね、そういう意味では非常にやりやすい国ですよというのが書いてあると。

あと、観光客も4,000万人ぐらい来ているのと、ASEANって、「タイだけやります」という話にもう最近ますますならないので、基本的にASEAN6の中で人・モノ・カネ・情報が常に動いているという状況なので、タイで何か良いものがあればそれはすぐ他のASEANに波及するし、逆に悪いこともそうだし。そうすると、ASEAN全体戦略の中でのタイということは常に頭の中に入れておかないといけない。ここで言いたいのは、観光客が4,000万人いますよということと、タイの観光産業ってやっぱりGDPの2割ぐらいを占めていて非常に大きいですよね。製造業で3割ぐらいGDPを占めているので、やっぱり観光は非常に大きいですよということを書いてあるというのがこの207ページのところです。

主要な小売プレイヤーのお話をちょっとしていきますが、前回お話した通り、タイは「誰と売るか」よりも「誰に売るか」ですと。いわゆる財閥優勢の市場なので、基本的に「ディストリビューターどこにしようか」みたいな議論をする前に、「どの小売で売りたいの?」と。その「どの小売」というのも2強財閥グループしかいなくて、「CPオールとやるのか、セントラルとやるのか」という、この選択をしていかないといけない。CPに関してはセブンイレブンがCPですし、テスコもCPですし、あと、業務用卸売りスーパーのマクロもCPの傘下なんですよね。これだけ持っていると、CPがほんとに、僕は非常に重要だと思います。セントラルも当然あるんですけども、セントラルは例えばロビンソンズとかワトソンズとかトップスマーケットなんかはセントラルグループですけども、そういったところで商品を売る系はそうですけども、やっぱり消費財メーカーの大半は「CPとどうやるの?」というところになってくると思うので、そこが非常に重要ですよと。
この208ページのね、主要スーパーの紹介をすると、スーパーで言うとロータス、これはCPですね。NO.2のビッグC、これがセントラルで、マクロ、さっき言った業務用スーパー、3番ですね、これもCP。トップスマーケット、これがセントラル。そして、5番手がわれらがイオンという、この状況で。コンビニエンスストアも圧倒的にセブンイレブン、もうこれはファミリーマートとかローソンとかCJとかありますけども、これはもう無視でいいですよというのを示していますよね、2桁違いますから。いかにセブンイレブンとやるかということが本当に重要になってくる市場であると。日本でセブンイレブンって2万数千店舗あって、今、タイは世界で2番目にセブンイレブンの数が多い、1万4,000店舗ぐらいありますと。その他のASEANね、シンガポールを見ても、フィリピンを見ても、どの国を見てもね、結局、30年40年やっているけども、数百店舗、数千店舗、そういうレベルなので、いかにタイのセブンイレブンの影響力が強いかということは1つしっかりと認識をしておく必要があると。日本でコンビニで売っているようなメーカー、消費財メーカーは、もう完全にCPオールとどう話をつけていくかということが大変重要になりますねと。

なので、近代小売に関する考察としては、まず決めるということはすごく重要で、「CPとやるのか、セントラルとやるのか」ということをまず決める。われわれなんかのクライアントは、ほとんどが「セブンをやっぱり獲る」というところが非常に戦略上重要になってくるようなクライアントが多いので、まずCPオールとしっかりと話をしていく。このCPオールも、「日本メーカーです。良いものです。お願いします。ちょっと高いです」みたいな話だともう取り扱ってくれないんですよね。なので、なぜセブンがこれを取り扱わないといけないのか、取り扱うことによってどういうメリットがあって、この商品がひいてはタイの国民や市場に対してどんなインパクトであったりメリットがあるのかというところを含めてやっぱりお話をしないと、ただ「日本の良い商品です」というだけではなかなか入らないというような市場ですよね。話も聞いてくれないですし。購買の担当者にプレゼンをするんですけど、なぜディストリビューターと話をしても意味がないと言っているかと言うと、結局、私も散々、今までの20年のキャリアの中でね、ディストリビューターと小売と私と同じテーブルで議論をするというケースというのが散々あるわけですよね。でも、その中でもやっぱりディストリビューターは所詮小売の御用聞きなんですよね。あれだけ「Aという方向で行こうね」と言っていたものを、小売の担当者が「Bだよねと」言ったら「はい、Bです」って、「えーっ」というぐらいに何も言えない状態。それだけ、これは別にディストリビューターが悪いというわけではなくて、それだけ小売の力が強いんですということがタイの市場なので、いかに小売、CPならCP、セブンイレブンならセブンイレブンで、この商品を取り扱うということがいかにメリットなのか、小売にとってメリットなのか、タイ国民、タイの消費者にとってメリットなのか、それをやっぱり短・中・長期ぐらいで描いてしっかりプレゼンしないとなかなか入っていかないというのは1つあるので、生半可にできないですというのがあるのかなと思います。セントラルが自分たちの商品にとって向いているという企業はセントラルになりますし、そこがすごく重要なのかなと。

ディストリビューターなんて、あとから小売の紐づきのと言ったらちょっと言葉が悪いですけど、小売の指定するディストリビューターを使ったらいいんですよね。小売から話が来ているわけだし、こっちから「お願いです、売ってください」と言ってないので、中間流通マージンが非常に低く抑えられる。やっぱり具体的な話は直接小売とできないと、何か売ってもらうということを委ねるということをやっていても、それは万に1つ当たるとか、瞬間的に当たるというのはあっても、やっぱりサステナブルではないですよね。継続していかないので、再現性が低いんですよね。アンコントローラブルだし、自分たちの商売を自分たちでコントロールできない、これほど不幸なことはないので。僕は弊社のクライアントは一緒になって小売に提案をしていくということをやって、ディストリビューターというのはそのあとの話、小売との話が決まってからの話で十分なので。いかに中間流通マージンを抑えていくか。だって付加価値ですから、基本的にセールス提案とかマーケティング提案みたいな能力はないというふうに仮定をして、一番、じゃあ、ディストリビューターにやってもらいたい仕事って何? 言ったら運んでください、マーチャンダイジングしてくださいみたいなところなんだとすると、そこの業務に対して適正なマージンを払うということのほうが重要でね。やっぱり市場の戦略やマーケティングを小売と一緒に組み立てていく。小売もね、こんなことを言ってはあれですけど、売れなかったら「buy one get one freeやってくれ」とか、「プロモーションをもっとやってくれ」ぐらいしか言わないので、やっぱり戦略はメーカーがしっかりと消費者、市場を見て考えて小売にそれをうんと言わせるということが僕は鉄則だなというふうに思いますので、そんなことをやっておりますが…。ちょっと話が逸れましたけど、近代小売に対する考察に関してはその2強、財閥系をどうやって獲るかと。

210ページの伝統小売に関する考察に関しては、210ぺージ、それでもタイは45万店の伝統小売がまだあるんですよね。これもね、主に食品・日用品を取り扱う主要な近代小売チェーンの店舗数、近代小売は1万7,300店舗と書いてあるんですけど、これは弊社が主に食品・日用品を主に取り扱う近代的な小売チェーンの店舗なので、弊社が主要というふうに捉えている、まあまあ、ほぼほぼ他社の主要と一緒だと思いますけど、だいたい1万7,300店舗ぐらいあるんですよ。一方で、近代小売と伝統小売の比率が右の図に書いてありますけどもね、これはユーロモニターのデータをベースに弊社で推計してますけども、食品及び日用品カテゴリーにおける近代小売と伝統小売の比率なので、皆さんの取り扱っている商品によってはこの比率って全然大きく変わってくるので、これをこのまま鵜呑みにするのはちょっと危険ですが、だいたい5割6割ぐらいは近代小売、4割5割弱ぐらいが伝統小売なので、伝統小売は意外にまだ残っているんですよね。その伝統小売が、じゃあ、どれぐらいの数あるの?と言うと、40万店~45万店ぐらいはあるというふうにわれわれは推計しているので、基本的にはバンコクを中心とした近代小売を取ったあとに、いかにこの伝統小売のディストリビューション・チャネルをつくっていくかと。この伝統小売の領域に入った段階で小売関係なくなって、基本的にはディストリビューション・ネットワークなので、ディストリビューターの力が重要になってくると。ただ、必ずしも大手のディストリビューターが必要かと言うとそうではないですよと。伝統小売を得意としているディストリビューターを複数社マネージして、ディストリビューション・ネットワークをつくっていくということになりますねというお話でございます。

次回以降ね、211ぺージ、主要ディストリビューター、流通環境についてちょっとお話をしていきたいなというふうに思います。それでは今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。