HOME » 動画番組 スパイダー・チャンネル » 【本の解説】タイ市場 ラップアップ

動画番組 スパイダー・チャンネル

【本の解説】タイ市場 ラップアップ

新刊はこちら » https://www.amazon.co.jp/dp/449565019X
定期セミナーはこちら » https://spydergrp.com/seminars/

テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、この『ASEAN6における販売チャネル戦略』ということで、同文舘出版から私が去年出した本ですが、この本の解説をしていきたいと思います。

今日はね、最終章、第9章のタイのラップアップということで201ページから、ここ何回かに分けてタイの話をずっとしてきましたけども、今日はタイのラップアップをしたいなというふうに思います。このタイの市場なんですけど、食品・飲料・菓子・日用品等のFMCG、消費財メーカーにとってやっぱり非常に重要な市場であるということがまず1つ言えて、今現状、弊社でご依頼いただいているプロジェクトの大半は、タイ+VIPです。ベトナム、インドネシア、フィリピン。やっぱりタイはものすごく重要な市場なんだなということがそこから見てもよく分かる。20数年のこのキャリアの中で、やっぱり一番最初大きかったのは中国で、これはすごく長かったんですよね。2000年代の前半から2010年代前半ぐらいまで、やっぱりもう圧倒的に仕事の半分以上が中国だった。もちろんその間ASEANのね、ベトナムで第何次ブームがあったとか、インドネシアが盛り上がってきたとか、ハラルがどうだとか、いろいろありましたよ。BRICSも出てきたし、インドも出てきたし。ただ、圧倒的に中国みたいな時代が長く続いたと。10年以上続きましたと。その中で、ここ2010年代後半から中国に対する日本の消費財メーカーの腰がやっぱりだいぶ引けてきて、今はそこがどこに向いているかと言うと、タイ+VIP。そして、僕はこれからインドの市場がいよいよ本格的に来るなというふうに感じますので、このASEANで勝って、そのあとインドなのかなというふうに思いますけども。ごめんなさい、話が逸れましたけど。タイが非常に重要な市場であると。

このタイの市場を見たときに、消費財メーカーにとって何を考えないといけないかと言うとね、ディストリビューターよりも圧倒的に小売との関係構築をどうするかということを考えないと駄目ですよということを前回前々回でも散々お話しました。なぜならば、タイという市場は小売の力があまりにも強い。9:1どころの話ではないぐらい強いですよね。じゃあ、財閥もね、小売を持っている財閥ってもう2強で、セントラル…、ごめんなさい、CP、チャロン・ポカパン、CPかセントラルのこの2つなんですよね。CPというのはセブンイレブンをまず持っていますと。このセブンイレブンが日本で2万数千店、タイで1万4,000店ぐらいあるんですけど、世界で2番目にセブンイレブンが多いんですよね。もうこの時点で、日本でセブンイレブン、コンビニで売っているものをつくっているメーカーさんは確実にCPとどうやるかということの1点集中をしないともう難しい。CPはセブンイレブンを持っているし、ロータスもCPだし、それから業務用スーパーのマクロもCPなんですよね。一方で、セントラルはビッグCとかね、トップスマーケットとか、ワトソンズとか、そういうところがセントラルです。この2強でどっちとやるんですかというのを選んでいかないといけない。自分たちの商品というのはどっち向きなんですかということを選んでいく。そうすると、今、弊社のクライアントさんの大半はやっぱりこのCP系ですということで、CPですと。

基本的にはディストリビューターを決めて、ディストリビューターに小売に売ってもらってみたいな、そういうあれでいくんですけど、結局、タイの場合はディストリビューターではないんですよね。いかにやっぱり小売と話をつけるか、CPと話をつけるかということがすごく重要で。例えば大手のディストリビューターを使ってもね、まず中堅以下だと話が難しいと。本当に御用聞き以下の存在になっているシーンを僕は何回も目にしたので、一緒に行って、「Aという路線で行こうね」という説明を散々しているんだけども、小売側の偉い人が出てきて、だいたい女性のケースが多いんですけど、トップはね、一番トップは男性なんですけど、その下にいるような偉いポジションの人たちは女性、スタッフも女性が結構多くて。その女性が「Bの路線だよね」と言うと、「はい、Bですね。私もそう思っていました」と、「えーっ。そんなに手のひら返すの?」というぐらいにBになってしまう。それは別にディストリビューターが悪いのではなくてね、そこまでやっぱり強いんですよ、彼らの影響力が。だから、なかなか言えない。大手と、大手のディストリビューターを使っても、結局、大手になればなるほどディストリビューターのメーカー側の窓口、いわゆるプリンシパル担当者と、あと小売側の窓口というのは全然違うわけですよね。小売側の窓口というのはいろんなメーカーの商品を一手に扱って小売と交渉していきます。優先順位があるわけですよね、取扱量によって。そうすると、取扱量が低い、例えば日本のメーカーの商品のリクエストなんていうことはね、もうほとんどミーティングの中で話せていないという実態があるんですよ。だって、小一時間ぐらいのミーティングでね、いろんなことを決めていかないといけない。2割2割2割でほかのブランドを扱っていて、まだ数%に満たない日本のブランドの話をね、そんなに時間取れるかと言うと、取らないわけですよね。大手のディストリビューターのクライアント窓口が本当にどこまで小売の窓口に話ができているのかということも見えなかったりね、メーカーにはね。じゃあ、その小売の窓口の人が「小売と本当に話して」と言ったことが話せているのか、それも見えないみたいな、そんなことを思っている方も結構多いのではないかなというふうに思うんですけどもね。結局、「小売担当者と話をさせて」と言っても、「いやいや、会わせられない」とかね、「それは私はメーカーの担当だから私が、それは私の仕事だから」というところで止まってしまうというケースがほとんどで。やっぱりそれだとね、なかなかブレークスルーしにくい。真意が分からない、見えない。結局、小売もね、じゃあ、どうしたら売れる、ああしたら売れるなんていうことは分からないし、それは彼らの専門でもないので、基本的に言えることは、「売れなかったらbuy one get one freeやって。1個買ったら1個ただやって」ということしか、僕は聞いたことがないので、「こうすればいい、ああすればいい」なんていう提案を聞いたことがないので、それでも売れないものは返品ねという話になるのでね。戦略自体は自分たちでやっぱりしっかり市場を見て組み立てる必要があって、ターゲットに対していかに4Pを組み立てるかということは、しっかり自分たちでメーカーがやるということはまず重要ですよということが1つ。

その上で、じゃあ、その戦略をしっかりと小売と握るということはね、直接握らないとやっぱりなかなか難しいですよね。誰かを使って会いに行くとかね、そういって使うのはいいですけども、そこに委ねて任せて何かうまくって、あんまりそれでうまくいっている企業を僕は見たことないので。もしうまくいっている、「うちはうまくいっているよ」というメーカーがあったらぜひ教えてほしいんですけど、あまり見たことないです、大手のメーカーもみんなそこで課題を抱えているというのが、僕が今現状、見ている世界なので。

結局、小売と話をつけられたら、ディストリビューターなんていうのは小売が紹介してくれるし、指定してくる、「ここどうですか」と。そうすると、中間流通マージンが非常に低く抑えられる。そんなに高いマージンをね、中間流通に払っても、やっていることって小売とこっちの希望通りの交渉1つできないところにそんなに本当に中間マージンたくさん払いますかという話なので。やっぱりそこはしっかり小売と見極めるということがタイの市場では本当に重要ですよということなので、小売との交渉力です。CPです、セントラルです、どっちか決めて交渉してくださいということと、あと、バンコクは1人あたりのGDPが2万ドルを超えていますから、非常においしい市場です。その他の地方も平均で割ったら1万ドルを超えているので、これもやっぱりさすがSMTの一角、非常に大きい市場ですよと。その中で伝統小売が45万店もあるって、これタイって本当に魅力的な市場だなと。6,700万人ぐらいまだ人口がいてね、非常に面白い市場だというふうに思うので、これからもね、タイ+VIPというのは弊社の中でもある一定のポートフォリオを築いていく市場なのかなというふうに思います。

今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。