アジア新興国市場 インプットの少ない企業は属人的になる
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続きお話をしていきたいと思います。対象は製造業です。市場はアジア新興国市場になります。今日のお話は、インプットの重要性、インプットが良い会社というのは仮説のレベルが高いですよみたいなお話をしていきたいと思うんですが…。日本の製造業がこのアジア新興国市場のマーケットシェアを獲りに行く過程で、戦略的かというよりかは俗人的だというふうに言われているわけですよね。人を派遣してなんとかする。本社で戦略をしっかりとつくって、その戦略をアジア新興国市場各地に落として、現地で戦術が展開されるというよりかは、どちらかと言うと駐在員を送り込んで俗人的につくり上げていく。駐在員が駐在歴15年20年とかなってくると1つ成果が出てくるんだけども、じゃあ、駐在員がいる国はいいけど、いない国はなかなか成果が上がらないので、成果が横断的に新興国市場に展開していかない。ASEAN1つ取ってもね、タイではいいんだけどほかの国は駄目、インドネシアはいいんだけどほかの国は駄目、ベトナムでいいんだけどほかの国は駄目、タイでうまくいっているのにSMTはうまくいっていない、インドネシアでうまくいっているのにベトナム、フィリピンはうまくいかないと、これ、VIPは似通った市場ですから、これはなかなか、特にB2Cの場合はね、消費財の場合はおかしな話で、やっぱりそういうケースが非常に多いと。
ちょっとスライドをお願いします。ここに書いてある通り、戦略的ではなく俗人的であるというふうな理由。これらアジア新興国市場で失敗する企業の共通点は、私は前回もお話しましたけど、決して高いレベルのところでつまづいているというよりかは、非常に低いレベルのところでつまづいているというケースが8割ぐらいで、本当に高度な課題にぶつかっているって、やっぱりある程度やっていかないとそういう高度な壁にはぶち当たらないので、基本的には非常にエントリーレベルの課題にぶつかっているという企業が非常に多くて。それってやっぱり大前提としてインプットがあまりにも少な過ぎる。インプットというのは情報なんですけども、情報量がすごく少ないんですよね。日本の製造業と、じゃあ、先進的な成功しているシェアの高い企業とシェアの低い企業の違いって何ですかって言われたら、持っている情報の量と質の違いというのは非常に顕著に表れていて。
例えばなんですけど、市場の情報もそうですけど、例えば競合の情報をなんとなく知っているんだけども、本当に明確に知らないとかね、市場もなんとなく分かっているんだけども、数値でしっかり把握できていないみたいな企業が非常に多くて。どちらかと言うと、やりながらなんとかつくり上げていこうみたいなね、とにかくやるみたいな。この「とにかくやる」という言葉が、新興国市場だと非常に危険で、とにかくやるってね、何かシリコンバレーとかでね、0→1で無のところから1を生み出すというときに本来は使われてきた言葉なんですよね。「とにかくやってみろ」と、「失敗を恐れずとにかくやってみる」って非常に良い言葉ですよね。なんですけど、アジア新興国市場で日本の製造業の展開において0→1なんてなくて、もうすでに成功事例もあるし、たくさんの失敗事例もあって、そのケーススタディを学ばずして「とにかくやってみろ」なんていうのは、これはあり得ない話でね、何かイノベーションを生み出すとか、0→1をつくるというときに初めてこの「とにかくやってみろ」とか「やりながら、走りながら考える」というのはあるんだけども、もうすでにどうしたら成功するのか、どうしたら失敗するのか、どうしたら成功するのかというのは再現性がなかなか難しいかもしれない、各社によって違うので。ただ、どういう企業が失敗をする傾向にあるかというのは、もうパターンがいくつか出ているわけなので、そういったことをしっかり知るということはね、すごく重要で。そうすると、今、日本の製造業が、特に消費財メーカーがつまづいているような初歩的な失敗には陥らない。
だから、情報というのはものすごく重要で、日本の企業とか日本人、われわれ日本人は、何か無形なものに対価を払うということはなかなかやっぱりしにくいですよね。だから、情報機関とかって言ってもね、欧米のほうが非常に情報に対する価値を重んじているので、情報機関が非常に進んでいるわけですよね。われわれはどうしても目に見えるものでないとなかなかお金が払えない、そういう性質を持っているのかもしれないですけども。とにかくこの情報、インプットの少なさというのは、これはシェアの高い企業と低い企業を比べると、もう非常に著しくありますよと。だから、とにかく調査をしてくださいと、調査が非常に重要で、調査を費用だと思わず、投資だと思うということはすごく重要だなというふうに感じます。
次回以降ね、このインプットの少ない企業と多い企業がどういうプロセスを経て失敗したり成功したりするのかということについてお話をしていきたいなというふうに思います。それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。