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新興国市場とイノベーション その2

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、新興国市場におけるイノベーションについてお話をしていきたいなというふうに思うんですが…。

前回ね、イノベーションの定義をもう1回整理をしました。まとめると、イノベーションというのは別に技術革新だけではなくて、新結合というのが本来の意味ですよと、シュンペーターが唱えている本来の意味というのは、イノベーション=新結合であると。今まであった古いものと新しいものを組み合わせて新たな価値を生む、まったく違う価値を生んでいくということがまさにイノベーションなので、その定義の整理をしました。今回は、新興国市場で高いシェアを持つ企業、先進グローバル企業の背後には、必ずこのイノベーションが潜んでいますということで、少し事例の紹介をしていきたいなというふうに思います。B2CもB2Bも両方事例を紹介していきたいと思うので。

まずB2Cの事例から、すみません、早速スライドをお願いしたいんですが…。やっぱり僕ね、新興国市場のイノベーションのはしりというかね、非常に有名なイノベーション、画期的なイノベーションというのはこのエムペサの事例だと思うんですけども。アフリカ、ケニアで始まったサービスなんですけど、これは2007年にね、サファリコムとボーダフォンによってケニアで始まったモバイル決済サービスなんですよね。簡単に言うと、ケニア、アフリカはね、皆さん行ったことある方は少ないのかなと思うんですけど、銀行口座を持ってない人って普通にいるんですよね。ほとんど銀行口座を持ってない。銀行口座を持ってないんだけど、お金って必要だし、じゃあ、どうやってそれを管理するんですかと。家だってね、そんなセキュリティのすごい家じゃないし、じゃあ、いつもポケットに入れておくんですかと。山賊だっていっぱい出るわけですよね。そんな中でどうやってこの銀行口座を持ってない人にお金を送ったりするんだっていう。それを画期的に変えたサービスで、銀行口座を持たない人が携帯電話を使ったね、簡単な送金とか支払いを可能にしている。今、モバイルで決済なんかピッピッピッて全部もう、携帯番号に全部入っているわけじゃないですか。このエムペサは、例えば商店みたいなところに行ってね、エムペサって書いてある、この携帯を見せて現金下ろせるわけですよ、そこでATMみたいにね、現金使いたいっていうときに送ってもらった現金を下ろせるし。あと、そこで携帯を通じて決済もできるというね、ほんとに画期的なサービスで。このイノベーションのポイントって、やっぱりモバイル技術と金融サービスを融合させた、まさに新結合ですよね。今までの発想だと、お金に関しては銀行がやるものでしょうと、なんで携帯会社がやるの?と。まったく携帯会社と銀行のサービスがくっつくなんていう話っていうのはそもそも発想としてないわけでね。それをモバイル技術と金融サービスを結合した。銀行口座がなかったらお金は送金できないっていうのが今までの常識だったのが、いやいや、携帯番号あったら別にできるでしょうという、そういうものですよね。ですから、既存の金融インフラに依存しないので、非常に発展の進化のスピードが速かったと。固定電話はないのにモバイル携帯電話を使っているわけですから、ガラケー使って、今ではスマホ使っているわけですよね。ですから、このモバイルのこの進化のスピードに金融を乗せていったというね。経済、エコシステムへの進化ですよね。なので、これはほんとに、エムペサの事例はほんとに画期的で、まず新興国市場のイノベーションと言うと、このエムペサになるのかなというふうに思います。

次のスライドをお願いします。次はね、B2C、消費財、FMCGですね、食品・飲料・菓子・日用品等のFMCGですけど、ユニリーバとネスレ。このユニリーバとネスレと言えば、新興国市場の先進グローバル市場、高いシェアを誇る先進グローバル企業。ローカライゼーションやサステナビリティの取り組みを通じてものすごく強固な地位を新興国市場で築いていると。ほんとに大きなシェアがある企業であると。このイノベーションのポイントはね、彼らのイノベーションのポイントは、やっぱり伝統小売の攻略がすごくて、基本的に新興国と言えば伝統小売なんですよね。もちろんオンライン流通っていうのは、今、徐々に出てきていますけども、基本的にわれわれが日本で買い物をするようなスーパー、コンビニなんていうような近代小売の数よりも圧倒的に伝統小売の数が多くて。いかにこの伝統小売と言われるパパママショップに商品を配荷するか。配荷するためには販売チャネルが必要で、このディストリビューション・チャネルを構築するということがまさにイノベーションなんですよね。だって、何十万、何百万ってある伝統小売にものを置いていくなんていうのは、ほんとにそのディストリビューション・チャネルをしっかりとつくらないと配荷できないので、この伝統小売の攻略に成功した、つまりはチャネルの構築に成功したという、これは1つのイノベーション。あと、このユニリーバとかネスレとか新興国市場でやっぱりよく見られるのがね、栄養とか健康、衛生。ネスレだったら栄養と健康かな。ユニリーバだったら健康と衛生みたいな取り組みを非常に強くやったんですよね。栄養価が足りてないわけですよね、例えば新興国市場。それに対して「これを食べたら栄養が補完できますよ」って、ネスレはそれを訴えて、その人の、その国の人々の生活を豊かにしていったっていうことをね、これは全方位的にやっている。消費者もそうだし、業界もそうだし、行政・政府にもそれをロビー活動してやってきているし。ユニリーバもそうですよね。手を洗わない、ばい菌いっぱい汚い、その人たちに「手を洗いましょう」と、「衛生的になりましょう」と、「手を洗うことがどれだけ重要か」と、「トイレをきれいにすることがどれだけ重要か」と、こういう教育をしてきているわけですよね。こんな取り組みもしてきている。あと、3つ目がインクルーシブとエンパワーメント。これは分かりやすく言うと、例えば女性の社会的地位の向上のために、例えば女性をセールスレディのようにして商品を販売するような形態。これは社会全体を巻き込んで自分たちのビジネスをするっていうね。ほんとにこのインクルーシブとエンパワーメントという言葉ってものすごく重要で、これからの社会、単なる金儲けだけでは絶対に無理でね。こんなことをやっぱり先進グローバル企業ってもう早くからやっているんですよね。日本企業、今は「やらなきゃ、頑張らなきゃ」って、ここ5年10年ぐらいで言っていますけど、もっと早いタイミングからこれをやっていて、特に女性の活用による売上貢献みたいなことをすごく力を入れてやっているというのが、このネスレ、ユニリーバのイノベーションでございます。

あとね、ちょっと時間がないので次回ね、シャオミーとかね、タタとかね、あと、B2Bの企業、シーメンスとかね、BASFとか、ABBとか、GEとか、キャットとかね、ちょっとやっていきたいなというふうに、ホーシンもあるかな、やっていきたいなというふうに思います。それでは皆さん、今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。