ASEAN 目的や目標が戦略に与える影響
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、参入戦略、ないしは再参入戦略のほうが多いですかね、弊社にご相談いただく企業さんも、やっぱり新規で参入するというよりかは、8割9割が再参入戦略で、かつて出た市場に再び参入する、かつて出たんだけど、駄目だって撤退を1回して再び参入する、もしくは、もう数十年も前に出ているんだけども、だいぶ今、市場環境も変わってきて、競争環境も変わってきて、その市場の重要度も変わってきて、さらにギアを上げて戦略を描き直して、より高いシェアだったり利益を獲得していきたいという意味での再参入ということで戦略を描くということが多いので、その戦略、参入戦略、再参入戦略を描くときの考え方の順序みたいなところのお話をちょっとしていきたいなというふうに思います。なぜそんな話をするかと言うと、日本企業の多くは、アジア、今回も対象はアジア新興国市場、特にASEAN、タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピン、特にベトナム、インドネシア、フィリピンがやっぱり最近非常に多いし、日本の、特に消費財メーカーの話になってくると思うんですけども、食品・飲料・菓子・日用品等の消費財メーカーにとってはね、やっぱりベトナム、インドネシア、フィリピンというマーケットは非常に大きい、人口もここだけで5億人程度の人口で、これからのポテンシャルを見ても他のASEANやその他の地域に比べても、地理的な面も含めて非常に重要な市場であると。ただ一方で、伝統小売の存在が、VIPの市場、ベトナム、インドネシア、フィリピンの市場は大きいので、ここの攻略に頭を悩めていて、再参入戦略が必要だという。もっと言うと、ディストリビューション・チャネルの再構築みたいなね、こういうことになるんだけども。あまりにも駄目な企業というか、シェアの上がらない企業というのは、確定事項ありきでいろんなことが…。確定事項というかね、どういう単語を使うのが一番いいのかな。前提条件ですかね、前提条件がある程度決まったかたちで出るというケースが非常に多くて。例えば、合弁じゃなきゃ駄目だとか、合弁は駄目だとかね、例えば、製販の機能を有しているパートナーとじゃなきゃ駄目だとか、前提条件ありきで戦略を描いていこうとするという。これ、前提条件でほぼ戦略の半分が決められてしまっているじゃんと、進む方向性ね、合弁じゃなきゃ駄目だと言ったら、もう戦略の半分以上決まっているわけですよね、合弁ってこれは。合弁でやるということは、だいぶ方向を確定させているということなので。それで、「なぜ駄目なんですか」と言うと、「いや、製販の機能が必要だから、それがないと駄目なんだ」ということなんだけども。結果として仮にそうだったとしても、一旦、前提条件をなくして、フラットな状態で見ていかないと、客観的に何が正しくて、何が間違っているのかというのは見れない。だいたい、上から振ってくるわけですよね、「合弁じゃないと駄目だ」みたいな。その言っている当人は、どれぐらいそこにロジックなり裏付け・確証があるのかと言うと、なんとなくというケースが非常に多くて。それは別に悪いことではなくて、もしそうだとしたら、それをしっかりロジカルに覆していかないといけなくて。上から振ってくる、もしくはどこかの方向から振ってきた選定条件ありきで戦略なんてつくると、あまりいい結果にはならないので。
考え方として、ちょっとスライドを見ながら説明すると、この図の通りね、まず目的があるわけですよね。例えばベトナム市場に参入する、フィリピン市場に参入する、インドネシア市場に参入する、目的ってそもそも何なんだっけという、ここがしっかりしないと、これは戦術とか戦略に大きく影響するので、何のためにここに出るんですかというね。目的も、僕ね、非営利の目的と営利の目的ってあっていいと思うんですよね。例えばフィリピンの人たちの栄養と健康のためになんとかとかね、そういう非営利の目的。人々の生活をより豊かにするみたいな。一方で、やっぱり営利の目的って言うと、食品メーカーなんかはね、胃袋の数を、どれだけ若い胃袋を獲れるかっていうことが勝負になってくるわけですよね。少子高齢化でどんどん、どんどん、胃袋の高齢化、それから胃袋の数の減少というのが我が国日本の今の人口動態ですから。一方で、ASEAN、VIPに行けばね、平均年齢20代で胃袋の数は伸びているということなので、それを獲りにいくという目的が1つあるわけですよね。この目的に対して、じゃあ、どういう目標を、2番目のね、設定するのか。これは数字ですよね。短・中・長期でどういう数字を設定しますかと、目的を達成するために。この目的を達成するためには3年後にどういう数字をやらなきゃいけない、5年後にどういう数字をやらなきゃいけない、10年後にどういう数字をやらなきゃいけないというのが設定されるべきなわけですよね。ここは非常にロジカルに計算をしないといけない。
じゃあ、その目標を最も効率良く最短でやるのはどういう方法ですか。最短というのは要らないですね、ごめんなさい。目標に時間軸を乗せているので、3年後、5年後、10年後、その目標をどれだけ効率的にやれるかということはすごく重要で。成功確率を1%でも上げられる戦略は何なのか、合弁なのか、独資なのか、何なのか。これも、結局、手段ですよね。手段は手段なので、どの手段でも成功はする可能性があるわけですよね。ただ、成功の度合いが変わってくるということと、難易度とか効率が変わってくるっていうのは当然あるわけなんだけども、その方法を選ぶという手段と、その中身、戦術みたいなところをつくっていくわけなんですけど。さっき冒頭で言った通り、最初から合弁ですと言ったら、もうこの戦略の半分ぐらい決まってしまっていて。いやいや、でも、そもそも目的って、フィリピンの人たちの健康となんとかに影響を与えましょうというのは目的で、目標はこれですよねと。この目標を達成するためには、必ずしも合弁って必要じゃないですよね、もしくは、合弁って何のために必要なんでしたっけ、生産機能と販売機能が必要だったから、でも、生産機能ってこういう方法でも確保できますよね、販売もむしろこういう方法のほうが中間流通が少なくなって利益率が上がるんじゃないですかとかっていうことは考えられるので。前提条件付きで戦略を組み立てていくというのはほんとにあまり良くない、良くない方法で。なぜその前提条件が付いてしまうかと言うと、なぜ前提条件が上から振ってくるかと言うと、多くの場合は、過去の失敗事例がやっぱり強くこびりついていて、経営ボードにね、そこを回避したいという思いからそうなっているんだけども、過去の失敗事例って10年前ぐらいの話だったりするケースって非常に多くて。そうすると、10年前とは事情が大きく変わっている、ASEANなんて、10年前と今とでは本当に大きく変わっているので、日本みたいにね、10年前も今もあまり変わっていませんみたいな話じゃないので。そうすると、やっぱり前提条件はそれ相応の確証がない限りね、付けないということがすごく重要で。この目的、目標、戦略、戦術の順で考えていくということが大変重要になりますよというお話でございます。
今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。