HOME » 動画番組 スパイダー・チャンネル » アジア新興国 「R」は仮説の精度を格段に上げる

動画番組 スパイダー・チャンネル

アジア新興国 「R」は仮説の精度を格段に上げる

番組への質問はこちら » お問い合わせフォーム
新刊はこちら » https://www.amazon.co.jp/dp/4495650238
定期セミナーはこちら » https://spydergrp.com/seminars/

テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も前回に引き続き、マーケティングの基本プロセスのお話をしていきたいと思います。対象は製造業です。B2C、B2B、問いません。対象地域は新興国市場になります。

前回ね、このマーケティングの基本プロセスって非常に重要なフレームワークですよと。このフレームワークだけ覚えたら、ほかのフレームワークは無視してもいいですよ、みたいな話を極論させてもらいました。新興国市場に展開する日本の製造業の失敗の多くは、高いレベルでの失敗かと言うと、かなり低いレベルでの失敗をしてしまっていて。特に参入をする際の戦略が、インプットがそもそも少ないんだよね。インプットというのは情報ですよね。しっかり調査してないので、当然、情報を分析して、アウトプットは戦略ですよね、仮説を立てたり、仮説とか戦略、アウトプットのレベルが低くなりますと。だから、結局、実践をする、アウトカムを出して実践して結果を出すというアウトカムのところの成果がなかなか出ない、シェアが上がらない、こういう企業は非常に多くて。結局、「新興国市場は難しいし、よく分からないから、とにかくやってみなさい。やってみてから考えましょう。走りながら考えましょう」と。一見、男らしくていい言葉に聞こえるんですけど、これはもう戦略放棄の無責任な言葉でしかないというふうに僕は感じるんですけど。戦略というのは、経営だったり、本社がしっかりと示すべき話で、現場で実行する戦術というのは現場がしっかりやるんだけども、示す戦略、方向が示されてないのに、走るという行為だけね、現場が戦術としてやってしまうと、もし間違った方向が示されていたら、これはどんなに早く走ったって永遠に間違った方向に走ることになるので、やっぱり方向はしっかり示さないといけない。戦略というのは方向ですから、もしくは選択肢ですから、それはしっかり示していかないといけない。それを示すために、この最初の「R」とかっていうのがあって、その「R」がしっかり示せていたらね、「R」がしっかりできていたら、低いレベルの失敗というのはなくて。例えば、「やってみないと分からないから、まずやってみましょう」って、これは0ね、誰も実現したことないことをやるので、0→1を生む、イノベーションを生む、だから、とにかくリスクを怖がらずやってみろって、そういうシーンで使われるんだったら、この言葉は非常にいいんだけども、新興国市場の製造業の進出なんていうのは、もう山ほど失敗事例、成功事例があるわけですよね。それをしっかり分析せず、「難しいけどとにかくやってみよう」という、こういう話ではなくてね、インダストリーごとに事例がね、どういう企業が成功しやすくて、どういう企業が失敗しやすいのかというのは事例があるので、それも見ずして行くというのは、なかなか賢いやり方じゃないですねという話を前回していて。

このマーケティングプロセス、スライドをお願いします。こういうものがマーケティングプロセスで、「R」-「STP」-「MM」とあって、この今日は「R」の部分ね。順番に上からやっていくんですけども、「R」の部分をまず最初にお話をすると、マクロ環境分析、ミクロ環境分析、SWOT分析と、いまいちよく分からない分析が3つありますということなんですが。これはすごく本当に重要で、これをしっかりやれば、こんなことで失敗する…、言ったら、出ちゃったらね、最低でも億単位の損失が出るわけですよね。じゃあ、これ、調査をするって、数百万か、どんなにかかったって数千万ですよね、調査費用ってね。数千万かけるって相当ですからね。なので、この3つをやることで事前に防げるし、なかなかやっぱりこんなはずじゃなかったっていう状況がだらだら続いてしまっている、新興国市場で、それはやっぱり「R」の不足が僕は一番大きな要因だなというふうに思っているので。

次のスライドをお願いします。このマクロ環境分析とか、ミクロ環境分析とか、SWOT分析って何なの?って言うとね、これ、マクロ環境分析って、ものすごくシンプルに言うとね、そこはどんな市場なの?と、どんな儲かる市場なの?ということを見る市場なんですよね。どれぐらい儲かるの?と、本当に儲かるの?ということの観点で市場を見ていく。ミクロ環境分析って、そこにはどんな競合がいるの?と、どれだけ強いの?その人たちはっていうことを見ていく。SWOT分析っていうのは、じゃあ、自分たち、これぐらい強い自分たち、これぐらいの経営資源を持った自分たちがそこに入ったら、参入したら、どんなことが起こるの? つまりは、勝てるの?負けるの?どれぐらい勝てるの?どれぐらい負けるの? これを見ていくというのがこの「R」なんですよね。これをかなり高い確度でやればね、まあまあ、そんな初歩的な失敗というのはなくて。

ちょっともう2つだけ、フレームワークを紹介するとね。次のスライド、PEST分析ってありますけど、いわゆるさっきの市場の分析なんていうのは、この政治とか経済とか社会とか技術みたいなことがすごく関わってくるので、このさっきの「R」のマクロ環境分析をさらに深くやるっていうのは、このPEST分析をしっかりやっていくと、この「R」というのはより具体的になっていきますよという、そういうお話ですよね。

競合に関しては、特定企業の競合調査なので、これは自分たちの現場がつかんでくるような情報では駄目なんですよね。そんな情報は別にあまり価値がなくて。このSWOT分析とか、マーケティングの基本プロセスの前の回で競合の調査の話をしているので、それを見てもらってね、そういう、そのエピソードを見てもらって、そのレベルの情報が必要で、それを今度はSWOT分析に入れていく。次のスライドをお願いします。これはSWOT分析のスライドですね。SWOT分析が何かは割愛しますけども。これ、ネットでパパンと、今、叩いてもらったらいっぱい出てくるので、それを見てもらったらいいと思いますけども、強み、弱み、それから機会と脅威を見ていくという、そういう分析ですけども。それがしっかりできてくると、この「R」というのはかなり高度なレベルで固まっていくということになりますので、この「R」を本当にしっかりやる。

ここでコケてしまうと、「STP」もね、ちょっと最初のスライドに戻ってもらって。「STP」も、「MM」もね、これ全部コケてしまう話になるので、この「R」をやっぱりしっかりやると。この「R」をしっかりやれば、「出るべきじゃなかったな」というのも、もしくは「この国じゃなかったな」と、「別の国のほうが優先順位が早いな」ということも見えてくるわけなので、この「R」はね、本当にしっかりやらないと。「R」がちゃんと分かってくると、「STP」もどれぐらいのレベルでちゃんとやろうとかね、特に重要な「MM」、これもどういうレベルで高度に構築していこう。「MM」なんて戦術そのものですから、ここを間違えてしまうと、全然戦えなくなってしまうので、この「R」をまずしっかりやるということが本当に重要なので、とにかく調査に費用をかける、お金をかける、予算をかける、時間をかける、労力をかけるということを心掛けてほしいなと。別に弊社じゃなくても全然構わない。別にポジショントークで言っているんじゃないので、ぜひね、この軽視をしないでというふうに思います。日本の製造業の失敗の多くは情報不足、インプットが小さい、少ない、浅い。結果、アウトプットとして出すべき戦略とか仮説が弱い。結果、成果、アウトカムが弱いという、もう非常に単純なところ。一方で、商品は品質、クオリティ的には良いものがある。でも、製品の一方的な優位性よりも、相対的な戦略の優位性とか、相対的な販売チャネル戦略の優位性のほうが新興国市場は圧倒的に重要なので、そもそもマーケティングの世界で、そうですよね、製品だけと言ったら、4Pで言うところのプロダクトだけがいい、これは1個のPで、1Pで戦って勝てるわけなくて。フィリップ・コトラーは、「4つのPが最適化されて、ターゲットに向かうと、商品は売れていく」と言っているわけですから、日本の製造業もそこを1つ改めて、これからのグローバル競争、新興国市場に立ち向かっていってほしいなというふうに思います。

今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。