競合の可視化は自社の戦略を底上げする
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、この『製造業のためのアジア新興国販売チャネル戦略』の解説をしていきたいと思います。まだ目次の解説をしている状況ですけども、5章のね、「競合の可視化は自社の戦略を底上げする」ということでね、この5章は何が書いてあるんですかというところをちょっとかいつまんでお話をしていきたいなというふうに思うんですが…。
競合の可視化ってすごく重要で、日本企業の、日本の製造業のね、アジア新興国における販売チャネル戦略って、基準値がやっぱり明確になってないという企業は非常に多くて。例えば、「自分たちはできているんですか、できてないんですか」と。じゃあ、「できているんだとしたらどれぐらいできているんですか」ということがね、分かってない。漠然として「なんかうまくいってない」というご相談が非常に多くて。重要なのって、結局、シェアの争いって、競合からシェアを1%奪ってくるから自分のシェアが1%上がるので、自分だけ頑張ればシェアが上がるということじゃないんですよね。いかに対競合との競争に打ち勝つかということが重要で。自分たちのレベルが上がったらシェアが上がるかというとそうではなくてね、競合との相対的な関係があるわけですよね、シェアというのは。そうすると、競合の競争力を100とした場合に、自分たちの競争力ってどれぐらいなんですか、80なんですか、70なんですか、50なんですか、30なんですかっていうところを見ていかないといけない。この差異をどういう時間軸でどういうふうに埋めていくかということがすごく重要で。
多くの製造業の場合はね、B2Bの製造業で唯一無二のものをつくっているのは、「世界市場でシェアNo.1です」みたいなのがありますけど、そういう企業はちょっと除外したときにね、多くの製造業はやっぱり自分たちよりも強い、主要な競合がいるんですよね。これは日系ではなくて、欧米の先進的なグローバル企業であったり、中国やASEANのローカルの企業であったりと。ここに対してね、何が、じゃあ、そんなに劣っているのかって言うと、製品はね、ほぼ劣ってないんですよね。むしろ良い、良過ぎると。良過ぎるということが劣っているのかもしれないですけどもね。プライスに関してはね、コスト競争力は本気になったら日本企業はまだまだコスト競争力に関してはやり方がありますと。一方で、じゃあ、この4Pで言うとね、プロダクト、プライスに関しては、基本的には製造業さんが内部で、自分たちの力で改善が十分できる範囲。一番困っているのって、このチャネルとプロモーション、プレイスとプロモーションなんだけども。これ、上は両輪なんですよ。モノと価格は両輪で動いて、前輪ですね。プレイスとプロモーション、チャネルとプロモーションは後輪で、これも両輪で動きますと。これはどこかのバランスが悪いとくるくる回ってしまう。1輪だけ回ったらくるくる回ってしまうし、4輪がしっかり回っていくことで滑らない、スリップしない状態が保たれるので、いかにこの4Pをバランス良く最適化するかということはすごく重要で。良過ぎては駄目なんですよね。プロダクトだけ良過ぎて、右だけガンガン回っても駄目で、4輪がバランスをするという、このバランスがすごく重要なんですよね。そのときに、日本の製造業というのは、この左下の、後輪の左側のプレイス、つまり販売チャネル、これが非常に、相対的に劣っていて。重要なのって、一方的な製品の優位性よりも、相対的な販売チャネルの優位性のほうが圧倒的にシェアに直結するので、いかにこのチャネルを改善していくかということは重要なんですけど。競合とこのチャネルを比べるとね、組織のつくり方、組織の動かし方、こういったものももちろんですし、ディストリビューターの数や質、こういったものでも大きく後れをとっていて。こういうものを比較していくと、「自分たちに足りているものが何で、足りてないものが何なんだ。じゃあ、自分たちに足りてないものをこういう時間軸でこう揃えよう」、これがまさに戦略になっていくわけですよね。経営資源を見渡せるわけですから、すぐ見える経営資源で何か手を打つなんてね、これは戦略の外側の話で、もっと内側の戦略の話をすると、実際に見えないわけですよ、自分たちの経営資源。人・モノ・カネ・情報がどれぐらいあるかっていうのをばっくり見るというのはいいんだけども、じゃあ、人を掘っていってもね、どういうふうな人になっているのかというのは深く掘っていかないと見えないわけなので。そこで深い、本当の意味での戦略が見えてくるんだけども、そういうことをやっぱり競合を調べることで掘っていくということをやらないと、なかなか自分たちの戦略はつくれないですよねということがこの章では書いていて。
強い競合はね、必ず自分たちの販売チャネルの型を持っているんですよね。その型をいろんな国で展開をしているという。この型がね、やっぱりシェアの低い企業というのはないというか、型がばらばら、各国でばらばらになっているので、非常にもったいない状態が続いていると、そんなことを書いているので。最終的にはチャネルストラクチャーとかね、組織体制、マネジメント体制の可視化とか、こんなところをどうつくっていけばいいのかということを書いているというのがこの第5章ですね。競合の調査。よくね、「競合のことは知っているよ」と言うんですけど、自分たちの営業現場が拾ってきて、そこから吸い上がってきた競合の情報なんて、競合の真の情報じゃないですからね。基本的には自分たちの最前線の営業マンが拾ってこれるレベルの情報なので、そんな情報を競合情報と錯覚していたらね、やっぱり勝てる戦略は書けないし。情報って、受け取り手のバイアスがめちゃめちゃ入るんですよね。だから、トップは自ら現場に行って見るって。僕も自分たちの部下から話は聞くけども、自分の目で見ないと、やっぱり最終的には責任が取れないので、自分の目で必ず見に行く。分からないことは現場に行くってよく言うじゃないですか、経営者が。それはまさにそうだと思うんだけども。やっぱり自分に都合の良い解釈をして上に報告するわけですよね。現場のセールスは、競合の情報を収集したと。それを自分の都合の良いように、これは潜在的でもあるしね、解釈をして、自分の上司に伝えます。上司も、それをまた自分の良いような会社を潜在的にしてしまうんです。それでまた次の上司に伝えます。その連鎖が最終的に3レイヤーぐらい入ってくるとね、もうまったく現実と違うような情報になってしまうんですよね。だから、それはね、例えばなんですけど、例で言うと、競合が非常に強いということが分かったとするじゃないですか、「競合は強いですよ」と。人数がいっぱいいるから、「10人います。うちは5人しかいません。だから駄目なんです」。5人欲しいから、「5人欲しいです」と言ってくるわけですね、現場はね。「向こうは10人いました。こっちは5人しかいません」という、見た事実を営業の現場は自分の上司に伝えました。自分の上司は、その上の上司から、「いや、人で負けてるんだから、数字出ないのはしょうがないよね」と。もちろん言い訳をしたいので、「分かってください。人が全然足りてないので、負けて当たり前なんです」ということを報告をするわけですよね。今度、その上司はその上の上司に、「人が足りないのか。じゃあ、雇わないといけないな」ということで、「人が足りてないですよ。全然駄目ですよ。雇わないといけないですよ」と、こう情報する。じゃあ、最終的な判断は、「なるほど。人が足りてないのか。雇わなきゃいかんな」と言って雇うんですけどね。実際に、じゃあ、調査してみたときに、「そもそもそんなに人の差、数の差はなかったよね」というケースもあれば、「確かに人の開きはあるんだけども、彼らの1セールスあたりの、例えば顧客カバレッジって全然低かったから、別に今の人材で足りたじゃない」とかね、「足りてないじゃない」とか、そういうことが全然あり得るわけなんですよね。だから、実際には深く調べていかないと、表面で見えるものだけで経営判断をしてしまうと、なかなかそうじゃないというケースが多々あるので、そんなことをしっかりと外部の調査機関、別に弊社でやれと言っているわけではないですけども、競合の可視化というのは大変重要ですよというようなことを話しているのがこの第5章になります。
それでは今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。