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アジア新興国 『Product依存型』の失敗事例

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、この『製造業のためのアジア新興国販売チャネル戦略』の解説をしていきたいと思います。

今日は、いよいよね、目次の解説が終わって、「第1章 アジア新興国市場で失敗する企業が陥る3つの依存」ということで、2ページですね、2ページからお話をします。3つの依存ということでこの章で解説しているのは、僕が過去に見てきた、成果がなかなか上がらない、シェアがなかなかアジア新興国市場で上がらない企業というのは必ず、必ずこれから説明する3つの依存に陥ってしまっている。これは結論から先に言うと、何かって言うと、まず、『Product依存型』と、それから『Partner依存型』、『Person依存型』という、この3つの依存のいずれか、もしくは多くはね、すべてに当てはまってしまっているというケースが多くて。当てはまっていることに気づいていない、このケースが一番たちが悪くて。特にリーダーが気づいていない。下は、現場は気づいているんだけども、リーダー、リーダーというのは社長を言っているのではなくて、例えばその事業とかその国の責任者が…。責任者は気づいていることが多いかな、その少し距離を取って、でも、そこの事業を統括している立場の人が気づいていないというケースが非常に多くて。気づいている場合は、これはでも両方あるな。上は気づいていて現場が気づいていないとか、現場は気づいているんだけど上が気づいていないという。だから、この気づいていないというのが非常に厄介で。なぜならば、気づいていないのでそのまま進んでいくわけなんですけど、結局そこの先には大きな厚い壁があるという状態に陥ってしまう。

その3つの依存のまず1つがね、『Product依存型』の失敗。これは2ページ、3ページのところですけども、基本的にはやっぱり国内とか先進国での成功体験が、どの製造業もね、B2BもB2Cもどのインダストリの製造業も非常に強くあって、これをベースにアジア新興国市場でもマーケティングミックスを考えるわけですよね。プロダクト、プライス、プレイス、プロモーション、何を誰にどう売るのかということを考えていくときに、やっぱりプロダクトが良ければいいよねと。でね、もうほんとに品質が良い、プレミアム、これが戦略の軸になっているというのが非常に強くて。品質が良いのなんてもう当たり前だからと。プレミアムというのは、品質が良いからプレミアムにはもうならないんですよという。B2Cでもね、消費者でも、品質が良いからプレミアムとは思わないわけですよね。イメージでプレミアムと思うわけなので。例えば外資のチョコレートメーカーで、ちょっと名前を言うといろいろ私も問題があるので社名、ブランド名は言いませんけども、あたかもシェフがね、パティシエが手づくりでつくっているようなブランディング、コマーシャル、そういうものをするんですけどもね、もう完全に無人の工場でつくっていると、人は入口・出口に1人ずつしかいませんみたいな所でつくっているようなものを、あたかも手作りの高級パティシエがつくったようなチョコレート菓子としてイメージを、イメージ戦略ね。これが、じゃあ、品質が良いのか悪いのかと言ったときに、決して日本のチョコレート菓子メーカーも品質では負けてないはず。むしろ日本のお菓子の品質なんてめちゃめちゃ、添加物どうこうというのはちょっと別にしておいて、めちゃめちゃいいわけですよね。ウエハースのつくり方とかもね。口の中の壁にくっつかない。海外のお菓子のウエハースでくっついたりとかね、いろいろあるのでね。そういうことがしっかりできている。それをやっぱり良いものと消費者は認識したりするので。これもね、言ったらハードの良さよりも中身のソフトの品質のほうが重要だったりとか、とにかく品質が良いことが本当にお客様にとって顧客にとって重要なポイントになっているんですかっていうことを追求せずに、とにかく品質が良い、プレミアムなんですということを漠然と戦略の中心に置きながら進んでいくというケースが非常に多くて。僕はこれを1P戦略と呼んでいるんですけど。プロダクトが良いから値段は少々高くてもいいよねと。売れるチャネルとかは、別に日本でやっぱりやってきたところをベースに、B2Cだったら伝統小売よりも近代小売中心でしょうみたいなね、B2Bだったらとにかく日系企業とか、本当はローカル企業のほうが圧倒的に数が多いのに、外資系企業みたいな。あと、プロモーションも、できれば成果が出るまで投資したくないみたいな、こういう発想で。「4つのPが完全に最適化されてターゲットにぶち当たったときに商品というのはセルアウトしていく」というふうに言っているわけですよね、マーケティングの権威、フィリップ・コトラーも、誰もそう言っているわけで。でも、それが1P、要はプロダクトというものが良いから、ほかの3つのPは多少疎かでもいいよねという状態で、ぼやっとしたターゲットにそれが当たっていく、もしくはちょっと上振れしたターゲットに当たっていくというのがこのいわゆる『Product依存型』で。これではなかなか商品はセルアウトしない。

ちょっとスライドを見てもらったらと思うんですけど、この日本で実績のある商品をできればさほど変えずに、少しは安くするけど日本と同じぐらいの価格で、日本で慣れ親しんだ販売方法で、できれば実績が出るまでプロモーション投資はしたくないと。結果としてね、B2C、ターゲットというのはB2C製造業だと市場の大きな中間層には売れない、数の少ない富裕層に偏ってしまう。B2Bだと市場の大きなローカル企業には売れず、数の少ない日系企業プラスαに偏りますよと。結構これね、そもそもなんですけど、順番が違って、4Pありきでターゲットが決まってくるんですよね。要は自分たちの商品はプレミアムで値段も上がってしまうし、プロモーションもあまりかけられないし、プレイスもこうだから、結果としてターゲットはこうだよねと。いやいや、そうじゃないよねと。ターゲットがありきで最初にあって、そのターゲットにどういう4Pをつくるのかっていうのがもう絶対の法則なんですよね。ターゲットがファーストなので。そのターゲットがセカンドになってしまっている時点で、これはもうロジカルじゃないわけですよね。合理的なマーケティングフレームワークになっていないので。ターゲットをやっぱり明確にする。ターゲットが何を求めているかということ以外に考えることなんてないので。そうすると、どういう考え方になるかと言うと、4Pというよりかは4Cで考えないといけなくて。4Cというのはカスタマーバリュー、プロダクトはカスタマーバリューに替わるんだけども、顧客にとっての価値って何? それって本当に品質の良いことでしたか、何なんですかということを考えていかないといけないので、そうすると、品質が良いことが価値だと思っていたことが本当なのかということを確認しないといけない。本当ではないケースがあると。もうここまででいいと、ここからここの品質の良さは要らないということもずっと言われているんだけども、そこにやっぱり固執する日本企業は非常に多い。プライスは、顧客側から見たらコストですよね、費用になりますよね。顧客が賄える、もしくは許容できるコストってどれぐらいなんだろうというところから組み上げていかないといけないので、自分たちの商品は品質が良いからというので高くなってしまってしょうがないですみたいな話だと、いや、だったらもう新興国は行かないほうがいいという話になってしまうので。そういう4Cのコストで考える。あと、プレイスも、顧客が買いやすい売り場ってどこなんですか、顧客にとってのコンビニエンスってどういうものなんですかって考えたときに、B2Cだったら決して近代小売だけじゃないよねと、伝統小売も含めて網羅的に売らないといけない。オンも、オフも、オンラインも、オフライも、全部売らないといけない。だし、B2Bでも同じことですよね。あと、プロモーションも、これも一方的にプロモーション、知らないものは選ばないですよね。顧客とどうコミュニケーションを取っていくかが重要なわけなので、そこもやっぱりやらないでっていうのはね。商品をつくって並べましたと。並べたらお客さんは手に取ってくれるでしょうって、いやいや、それはコミュニケーションを取らなかったら手に取ってくれませんよ。全部4Pを4Cの観点で考えるっていうことは非常に重要で。

次のスライドをお願いしたいんですが、このスライドの通りね、ターゲットが先ですと。ターゲットが先にあって、このターゲットに対して4Cを当てていく、顧客価値、顧客費用、顧客利便性、顧客コミュニケーション、これを当てていかないとなかなか難しい。なので、今、皆さんの事業でね、事業をやられている、これからやっていく企業、すでにやっている企業のほうが圧倒的に多いと思うので、うまくいかない理由をもう1回整理するときに、まずターゲットって誰なんですか、ここをね、解像度をすごく上げるということは絶対必要で。結構ぼんやりしている。中間層とかね、結構ぼんやりしていて。それも上位中間層。いやいや、ターゲットは本当に明確に誰なんですかと、B2C・B2B含めてね。じゃあ、そのターゲットに対して4Cで考えたときに、今やっていることってどうなの?って見ていくと、「あー、ひとりよがりだった」ということにだいたい陥って。でも、ここが解決できないとね、「いや、もう原価が高いからしょうがないんです」と言ってしまったら、もうそれはそこで終わってしまうので。そういう「もう、しょうがないんです」を取り除いて、もう1回組み直していくということがまず『Product依存型』で重要です。

次回ね、『Partner依存型』の失敗の事例をお話したいと思います。今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。