アジア新興国 『R』をやれば想定外は起こらない その1
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、『製造業のためのアジア新興国販売チャネル戦略』、私の新刊ですが、これの説明、解説をしていきたいと思います。すでに第4章、フレームワークに入っていて、今日は77ページですね。前回からこのフレームワークの話をしているのかな。前回か、前々回ぐらいからしてますよと。その中で、われわれは学問としてこのフレームワークを学んでいるのではなくて、いかにアジア新興国市場における実践でフレームワークを活用していくかということが大前提なので、やり過ぎないということが非常に重要ですよという話を前回していて、あと、このフレームワークというのは、そもそもそこに入れる情報の粒度とか、解像度とか、鮮度とか、こういったものがやっぱり悪ければ、その情報を分析して、フレームワークに当てはめて分析して仮説戦略のアウトプットを出していくわけですから、これの質が悪くなってしまいますよと。仮説、質の悪い仮説をいざ実践してみると、やっぱり実践の現場で誤差が大きくなるので、基本的には走りながら修正ができなくなるので、スピードが落ちてきますよ、場合によっては停滞しますよ、撤退しますということになるので、基本的にはすべてが繋がっていますよと。そんな中で私がおすすめするフレームワークについて、この章では書いていて。じゃあ、フレームワーク1つ挙げろと言われたら、もう絶対的にマーケティングの基本プロセス、R-STP-MMですよという話までを前回していて、ざっと概要を話していて、今日はその『R』の、一番最初の『R』の話ですね。
『R』って何なのかということなんですが、まず図を出していきたいと思うんですけど。この図の通り、R-STP-MMの、今日は『R』です。『R』って、マクロ環境分析、ミクロ環境分析、SWOT分析の略なわけですけども、もうこのカタカナとかアルファベットが出てくると、いまいち、よく、しっくり感覚として頭に入ってこないということはあると思うんですけど、感覚値として頭に入れるということはすごく重要で。僕はね、マクロ環境分析というのは、これから進出しようとしている、もしくは展開しようとしている市場がどんな市場なのかということを理解するための、そういう分析であると。一方で、ミクロ環境分析というのは、じゃあ、そんな魅力的な市場にどんな敵がいるんですかという、いわゆる競合を見ていく、そういう調査であるというふうに考えています。そうすると、非常に分かりやすいですよね。マクロとかミクロって言われてもしっくりこないので、僕はどんな市場で、どんな敵がいるの?という理解をして。じゃあ、SWOT分析って何?と言うと、今度は自分の経営資源を見たときに、自分自身を見たときに、じゃあ、そこに展開をしたら、自分は勝てるんですか? 勝てないんですか? 勝てるとするとどんな感じで勝てるんですか?ということを見ていくのがSWOT分析ですよというふうに解釈すると、この『R』をやればね、大きな失敗ってないんですよね。
よく日本企業であるのはね、市場環境は結構しっかり見るんですよね。いろんなデータも収集するし、自社でやりやすいですからね。2次情報でマクロデータというのはね、マクロ環境分析というのはできますから、やるんですけど。このミクロ環境分析のほうがやっぱり不得意で、これは自前で絶対できないですから。2次情報なんかじゃまったくもって役に立たない。ネットで転がっているような競合の情報を見たってまったく役には立たないので。まったくとは言わないですけど、大きな役には立たないので、結局…。例えば分かりやすい例で言うと、市場大きいねと、市場大きいねと。じゃあ、敵はどんなところが行くんだろうと、おお、メジャー、御三家出ているねと。ここはマスを狙っているし、もう自分たちとは圧倒的にブランド力も違うし、競合じゃないよねみたいなね、もうど真ん中で競合なのに、競合じゃないよねみたいな、自分たちはポジショニングをやっぱりハイクオリティでプレミアムでみたいなことを言って、この欧米のいわゆるメジャー、シェア2割とか3割とかを持っているようなメジャーは避けてしまうんですよね。一方でローカル系、中国系、確かに価格は安くてあれなんだけども、でも、品質ではわれわれのほうが勝っているので、われわれが上、というような解釈で出ていくんですよね。出ていったときに、あれあれあれ?と、なかなかシェアが上がらないぞ、なかなか利益が出ないぞと、資本金を食いつぶしていってるけどどうしようと、増資をしたと、もうあまりそんなに増資もできない、どうしよう…みたいな状況に陥っている企業って決して少なくなくて。当初想定していたよりも、欧米先進グローバル企業は十分に競合だったし、当時想定していたよりもローカル系、中国系の競合はとても競合だったと。さらに言うと、当時想定していたよりも自分たちが言っている高品質とプレミアム市場っていうのはなかなか小さかったみたいな状態になってしまうので、それで苦労しているわけですよね。それで戦略変更だと、B2Cで言ったら、いや、やっぱり伝統小売を徹底的にやらなきゃ駄目だったねと、まずは近代小売からと思っていたけど、伝統小売を徹底的にやらなかったら、最初からやらなきゃ駄目だったよねとか。そうすると、そもそも戦略が変わってくるわけですよね。大きく変わってくるし。近代小売に関しても、いやいや直接やらなかったら駄目だったじゃないですかとかね。合弁でやってる際でもそうですよね。いや、仮に資本入れてね、合弁で現地のジャイアントの企業とやったとしても、やっぱりマーケティングの主軸はこっちで握っておかなかったら駄目だったよねとかね、こんな話がいろいろ見えてくるので。
この『R』がやっぱり本当に不足していて、特にミクロ環境分析の情報が不足している。だから、不足している情報をいくらSWOT分析にかけても、不足している結果しか出てこない。これはまさにインプットの量が少ないので、アウトプットがチープになるよと言っている、前段の話と一緒ですよね。だからね、ここをもっともっとしっかりやっておくと見間違えないというね。もうね、仮説の精度なんですよ。成功するか、しないかというのは確率論なので、確率論をどれだけ高められるかっていうのは、もう仮説の精度でしかないと。じゃあ、仮説の精度をどうやって上げられるかと言うと、もう情報力しかないですよね。情報をどれだけ収集するかと。正しい情報を正しく分析する、客観的に分析するということはすごく重要なので、この『R』をやっておけばそんなにずれることはなくて。
あと、この『R』で重要なのは、PEST分析の図を出しましょうかね。一応、マクロ環境分析はPEST分析を使うとほぼほぼ網羅的に情報が収集できるので。2次情報をね、2次情報というのは、いわゆるデスクリサーチで収集できるような情報でも、十分ここは、たぶんデータを買ってきたりとか、そういうことで満たせられると思うので、ここは逆にそんなに大きな費用を外部に払ってかけるというよりかは自前でやるということが重要じゃないかなと。
一方でやっぱり僕はミクロ環境分析、競合調査のところが重要で、競合調査もね、やっぱり僕はいろんな領域があると思うんですよ、競合のどこを見るかというね。でも、われわれがやっぱり重要視している競合の情報のポイントっていくつかあって、重要なポイントだけを集中的にやらないと、いくら予算があってもね、これは無駄に予算を使うだけなので、しっかりとポイントを絞っていくという。基準値をね、僕は掴むっていう、競争力の基準値、何が最もシェアを上げることに直結してるのかっていう指標をまず掴むことがすごく重要で、私が見てきたアジア新興国市場のシェア獲得に最も直結する指標というのは、販売チャネルに潜んでいるというのが非常に大きくて、5%シェアを上げようと思うと、他社から5%シェアを奪ってこないと5%なんて上がらないんですよね。この競争力に関しても、やっぱりチャネル周りの競争力を見ていくと、もう全然日本のメーカーと…、ごめんなさい、日本のメーカーという言い方は良くない、シェアの低いメーカーとシェアの高いメーカーって違うんですよ。プロダクトが大きく違うってね、そもそも劣っているとか、相当に劣っているとかっていうとそもそも論になってくるので、そこってあまり日本企業はないですよね。プライスに関しては、本気になればどうにでもなると僕は思っているので、基本的には1円でも高く売ることは大前提なんですけど、基本的にコストをどうやって削減するかというのは、これは本気になれば日本企業は十分できる。
問題なのはこのプレイスで、プレイスがしっかりしてこないと、プロモーションも回っていかないので、やっぱりこのチャネル周りの情報を収集する。基準値を掴むっていうね、リファレンス・バリューと僕は言ってますけど、リファレンス・バリューを掴むということはどういうことかと言うと、競合の競争力を100とした場合に自分たちの競争力が80なのか、70なのか、50なのか、この差異をどう埋めていくのかっていうことが重要でね、これが分かると自分たちの足りているもの、足りてないもの、この足りてないものを補っていくということが、まさに自分たちの進むべき方向なので、この基準値を掴むための競合調査ということをしっかりやっていく必要があります。なので、競合調査もいろいろあるんだけども、われわれが提供しているのはそういう調査ですよというお話でございます。
SWOT分析のところが、ちょっと時間がもうないので、また次回にしましょうか。では今日はこれぐらいにしたいと思います。また皆さん、次回お会いいたしましょう。