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アジア新興国 ディストリビューターとの契約で重要な3つのポイント

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、私の新刊、『製造業のためのアジア新興国販売チャネル戦略』の解説をしていきたいと思います。もう新刊でもないですかね、今年1月ですからね…。

今日はね、140ページですね。140ページ、「非独占よりも独占、単年よりも複数年契約」ということで。前回からね、強固な販売チャネルをつくるためのポイントということで、ディストリビューターの発掘選定、それからディストリビューターとの契約交渉、さらにはディストリビューターの管理育成、この3つがないと強固な販売チャネルはつくられませんよと。強固な販売チャネルというのは、この3つで出来上がっているというお話をしてきていて。前回、前々回ぐらいからこのお話は始まっているのかな。今、まさに2個目のね、ディストリビューターとの契約交渉。前回がこの契約交渉に向けてね、契約締結をする、この契約書に何を入れていかなきゃいけないのか、契約締結までに何を決めないといけないのか、ディストリビューターとね。この決め事が契約締結後すぐにアクションとして表れるから数字が初年度、次年度と上がっていくわけなので、その話をしてきたと。今日は、この契約書自体、ペーパー自体にちょっと焦点を当ててお話をしていきたいんですが…。

スライドをお願いします。まず、このスライドにある通りね、契約書には攻めの要素と守りの要素、2つあって、今まで僕はいろんな企業のディストリビューション契約を見てきましたと。これは日本の企業のものだけじゃなくて、先進グローバル企業と現地のローカルのディストリビューターとの契約書もたくさん見てきましたと。その中で特に先進的なグローバル企業はね、契約書の攻めの部分が非常に充実していて、日本の企業の法務は非常に優秀ですから、守りはもう完璧ですと。守りは完璧と言ったらあれかもしれないですけど、ある程度しっかりしているんだけども、やっぱり攻めの部分でもったいないケースというのは結構あって。非常に単純な話で言うとね、独占か非独占か、コミットありかなしか、複数年契約か単年契約かというね、この3つのポイントをうまく使っていくことで、相手のやる気を湧き立てたり、それから相手の逆にね、やる気を抑えてしまったりということが往々にしてあって。結構あるのは、事実上、独占契約なのにね、この国ではもうここのディストリビューターと独占でやるのに、なぜか、何かあったら困るから、一応、非独占にしておくと。でも、大丈夫、お宅としかやらないから。でも、一応、何かあったら困るので非独占ね、というケースとか。あと、独占契約をしているのに何のコミットメントももらっていないというね。それは数字に対するコミットメントですよね。あと、結局はある程度複数年でやっていくのに、なぜか単年度になっているとかね、こういうケースというのが、何かあったら困るからというね、話なので。この「何かあったら困るから」という、この「何か」がどれぐらいの確率で起きるのかっていうことと、あと、「何かあったら」が本当に起きるのかということをね、もっとしっかり考える必要があって。「何かよく分からないけど、何かあったら」って、要は今現時点でね、契約を締結する現時点で想像もついてないことのために、いろんなリスクを考えて、ディストリビューターのやる気をそいでしまっているというケースが非常に多くて。結局、日本人同士だとね、「そうは言っても一生懸命やればちゃんと進むよね」みたいなのが、われわれの世界はあるわけじゃないですか。契約書は契約書、「これは社内の規定なので、これをちょっと書き換えるとなるといろいろややこしい問題が法務の絡みであるので、一旦これでやらせてもらうけども、実際はこういうことで分かっていますので、もう、あの…」みたいなね。そういうのは基本的に日本から一歩出たら通用しません。契約書に書いてあることがすべてだし、それ以上でも以下でもないと。そうすると、契約書に書いてないことは、相手がね、仮にそれはメーカーにマイナスだったとしても、契約書に書いてないんだから、やっても別にそれは責められないわけですよね。だから、守りの意味でもいろんな可能性を加味して契約書に書くということが重要で。でも、これはきりがないわけなので、絶対にこれはされてはいけないということがね、たぶん3つ4つあるんですよね。そういうことはしっかり押さえている、守りのところでね、1つと。あと、攻めに関しては、あんまりごちゃごちゃ書いてもね、これは導入期で、ディストリビューションで、いやいや、1台何百億円もする機械を売るんだったらそれはそうですけど、例えば消費財でね、1個100円200円のを売るのに、そんな契約書要らないでしょう、こういうバランスもしっかり取りながらね。でも、最低限やっぱり独占か非独占かということを明確にする。僕は、複数のディストリビューターを今時点で使う予定がないんだったら、もう独占契約をしっかり差し出したらいいと思う。その代わり、コミットメントをもらう。コミットメントというのは、年間購入量。これは目標とは違ってね、目標はこれぐらいやりましょう。例えば目標は初年度3億やりましょうと。ただ、年間最低コミットメントは2億円お願いしますとか、1億5,000万お願いしますみたいなね。自分から「独占契約をあげる」と言わなくていいと思うんですね。向こうが「欲しい」と言ってくるので。「欲しい」と絶対言うんですよ。ディストリビューターが欲しいのは独占契約。何のコミットメントもない独占契約を欲しがる。でもね、独占もね、分かるんですよ、そうじゃないと、自分たちがこれから投資をしようとしているのに、散々自分たちで頑張ったんだけど、結局、他社においしいところを持っていかれたみたいな恐怖が常に付きまとうわけです、ディストリビューターにはね。なので、どのタイミングで独占契約を許すかというのは、これはテクニックの話があるのでね、交渉なので。この交渉ごとの中でね、「じゃあ、分かりました。通常は非独占でどこもやっているけど、あなたたちには特別に独占契約を与えましょう。その代わり、この数字は最低やってくださいね」ということをうまくセットで使いましょうねということと。あと、複数年契約をしたらいいと思うんですよ、僕はね。「何かあったら困るから単年」って、何かあるって何?という、今想像がついてない何かって何ですかみたいな。さらに、じゃあ、それが起きる確率ってどれぐらいですかと。それに対してディストリビューターのやる気がそがれる割合ってどれぐらいですかって考えたときにね、1年で何か新しいものを売る取り組みでね、何か大きな成果が出るなんていうことはないわけですよね。そうすると、2年、3年、複数年契約をしたらいい。複数年契約ができる、3年の契約ができるということはね、ディストリビューターも3年の期限があるのでそれなりに投資するわけですよ、よし、人を増やそうと、配荷用のバイク、トラックを増やそうと。そういうことをしっかり彼らもやる気になる。単年だったら、もし今年成果が出なかったら切られるかもしれないという恐怖が常にまといつくとね、やっぱりダイナミックな投資はできないですよね、ディストリビューター側にしてみたら。でも、複数年でやってしまうと、またこれもメーカー側にとってリスクがあるというのも分かるので、基本的にはコミットメントができれば、独占だろうが複数年契約だろうがいいわけじゃないですか。だからね、僕は、独占契約というのは地域とか顧客で縛る。すべてに独占契約、この国すべてに独占契約というのはやっぱり現実的じゃないですよね。このA社というディストリビューターはこの国すべての顧客に今現在口座を持っていませんと。例えばB2Cでもね、この地域に強いけど、この地域は弱いというのはあるわけなので、彼らが強い地域とか、彼らが強い顧客に対する独占であるということは、もうこれは絶対だと思うんですよ。なぜならば、ほかの地域をやろうと思ったときにね、ほかの企業とやっぱりその地域でまた独占ってやっていくケースが全然あるので。むやみやたら、全部、制限なしに独占は、これはないですと。エリアか対象でしっかりと区切って独占を与えるということと、それから複数年契約、3年ぐらいの単位でまずやらせてみる。その代わり、初年度、次年度、3年度でコミットメントの金額をしっかり決めて、それがクリアできなかったら単年度に契約を戻す権利がこちら側にあるという条項をしっかり設けておけば、これは結局、単年度と変わらないですよね。目標を達成しなかったら単年になってしまうと、頑張らなきゃって、これはやる気になるので。実際、私はそれでディストリビューターのやる気をあおいで10年、もう12年かな、そのディストリビューターでコミットメントをクリアさせてきている事例もあるので、これを僕はしっかり使ったらいいと思うんですよね。なんかよく分からない、起こり得るか、今想像し得ないことをね、何かあったら困るからって、これほど無駄なことはなくて。物事には必ず陰と陽というか、アップサイドもあればダウンサイドもあって、想像できないダウンサイド、確率論的に0.01%とか0.001%起こるか起こらないか分からないようなことに対してアップサイドのマイナスをすごくしてしまっているというのは本当にもったいないなと。今想像がつくのであれば、むしろそこは契約条項でしっかりとパッチを貼っておけばいいわけなのでね。何かあったら困るからっていうのは、非常にもったいない契約だなというふうに思うので、この攻めと守りをね、しっかり使って、特に独占、コミットメント、複数年、この辺りは賢く使えばね、ディストリビューターのやる気は上がっていくことになると思いますので、ぜひ皆さんの契約も見直してみてはいかがでしょうか。

ということで、次回ね、最後のディストリビューターの管理育成のお話をしていきたいなというふうに思います。今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。